看護学生にとって「最大の学びの場」である臨地実習……
でも、そこは、「最大の悩みの場」でもあるかと思います。
実習指導のプロにお悩みを相談し、少しでも解決の糸口を見つけてほしいと思います。
今回はどんなお悩みでしょうか?
桜田亜己先生に相談してみましょう!
お悩み9:アセスメントが浅いと言われる
(Rさんのお悩み)
いつも実習で教員から『アセスメントが浅い』と言われます。
自分なりに一生懸命考えているつもりですが、何をどう修正すればいいのかが分かりません。
情報収集や分析、解釈が表面的なものにとどまっていないか確認し、根拠と照らしあせながら、不足している部分を補ってみましょう!
毎日寝不足になりながらアセスメントに取り組んだのに、教員から「アセスメントが浅い!」と指摘されてしまった……こんな経験はありませんか?
自分なりに一生懸命考えたのに、そのようなフィードバックを受けたら、がっかりしてしまいますよね。また、何が足りないのか、どう改善すれば良いのかが分からず、戸惑うこともあるでしょう。
そこで今回の記事では、「アセスメントが浅い」と指摘された場合に、どのように改善できるとよいのかについて解説します。
前半では、なぜアセスメントが浅くなってしまうのか、その原因を一緒に考えてみましょう。後半では、アセスメントを深めるための具体的な改善ポイントを解説しますので、アセスメントを修正する際の参考にしていただけると嬉しいです。
「アセスメントが浅い」とはどういうこと?
皆さんは「アセスメントが浅い」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?実際に、私が担当している実習の看護学生たちに同じ質問をしてみると、「もっと考えなさい、ってことですか?」という意見がよく聞かれます。皆さんも、そう感じることがあるかもしれませんね。
実際に「もっと考えなさい」という意見は、あながち間違いではありません。「アセスメントが浅い」とは、必要な情報が十分に収集できていなかったり、収集した情報を深く分析・解釈できていなかったりするために、患者さんの本当の問題やニーズに気づけていない状態を指します。
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例えば・・・
・アセスメントに必要な情報が不足しているため、患者さんの状態を正確に評価できていない
・収集した情報の意味づけに根拠が不足しているため、誤った解釈や不十分な分析が行われている
・看護介入が必要な状態を引き起こしている要因の分析が不十分のため、患者さんの本当の問題やニーズを見逃している
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このような浅いアセスメントでは、患者さんの状態を正確に評価できず、適切な看護介入を行うことが難しくなってしまいます。
なぜアセスメントが浅くなってしまうのか?
アセスメントが浅くなる主な原因として、学生さんたちに多く見られるのが「根拠との照らし合わせが十分にできていないこと」です。
私の10年以上にわたる実習指導経験から感じることは、多くの学生さんたちがアセスメントを進める際に、テキストや参考書を十分に活用せず、自分の知識や感覚だけに頼る傾向がある、ということです。また、「たぶんこうだろう」「きっとこうに違いない」といった想像を巡らせながらアセスメントを進めてしまう学生さんも少なくありません。
もちろん、患者さんのことを真剣に考えようとする姿勢は素晴らしいですし、これからも大切にしてほしいと思います。しかし、限られた知識や経験、そして思い込みや先入観が影響すると、どうしても患者さんを捉える視点が狭くなってしまい、その結果、患者さんの本当の問題やニーズに気づけなくなることがあります。
また、この機会にぜひ覚えておいてほしいのですが、アセスメントというのは「調べながら書く」ものであり、「考えながら書く」ものではありません。アセスメントの基本は、根拠となる基礎知識と実際の患者さんの状態を照らし合わせながら、情報を整理し、意味づけや解釈を行い、要因を分析することです。
根拠と照らし合わせながらひとつひとつの作業を進めるには、多くの時間と労力を要します。時には遠回りのように感じることもあるかもしれませんし、手っ取り早く終わらせたいという思いもあるかもしれません。しかし、この基本に沿ってアセスメントを進めることで、患者さんの状態をより多角的に捉えた「深みのあるアセスメント」が可能になります。皆さんにはぜひ、深みのあるアセスメントを通して、患者さんにとって本当に必要な看護介入を考えられる看護師さんを目指してほしいと思います。
『浅いアセスメント』を劇的に深める!3つの改善ポイント
ここでは、アセスメントを深めるための3つの具体的な改善ポイントを、実際のアセスメントの記載例をもとに解説します。
1.アセスメントのために必要な情報を網羅的に収集する
患者さんの状態を評価するために必要な情報を網羅的に収集できているかどうかは、アセスメントの深さと正確さに直結する重要なポイントです。疾患や病態生理などの基礎知識と照らし合わせながら、情報の不足や偏りがないよう、具体的かつ多角的な情報収集を行いましょう。
2.根拠に基づいて情報を意味づけし、解釈する
根拠に基づいて情報の意味づけや解釈を行うことは、アセスメントの信頼性を高めるために不可欠です。情報を正しく解釈することで、症状の背景や病態をより正確に理解し、適切な看護介入を検討できます。基礎知識と照らし合わせながら、収集した情報の意味を深く掘り下げ、精度の高いアセスメントにつなげましょう。
3.看護介入が必要な要因を多角的に分析する
看護介入が必要な要因を、根拠に基づいて多角的に分析することは、アセスメントの精度を高め、患者さんにとって最も効果的な看護介入を行うために欠かせません。複数の要因を考慮し、具体的なデータや症状と照らし合わせながら分析を行い、患者さんの本当の問題やニーズを明らかにしていきましょう。
いかがでしたか?
アセスメントにおいて十分な情報収集と根拠に基づいた深い分析・解釈を行うことで、患者さんの問題やニーズをより正確に把握できます。その結果、より適切で効果的な看護介入が可能になります。
最初は難しく感じるかもしれませんが、アセスメントのスキルを高めることは看護師としての成長に不可欠なステップです。患者さんへの質の高いケアにつなげるためにも、前向きに取り組んでいきましょう。
読者の皆さんが楽しく充実した実習を過ごせることを願っています。看護学生としてのさらなる成長を目指して、一緒に頑張りましょうね!