看護学生にとって「最大の学びの場」である臨地実習……
でも、そこは、「最大の悩みの場」でもあるかと思います。
実習指導のプロにお悩みを相談し、少しでも解決の糸口を見つけてほしいと思います。
今回はどんなお悩みでしょうか?
桜田亜己先生に相談してみましょう!
お悩み12:眠っている患者を起こしてまでケアを行うべき?
(Nさんのお悩み)
実習中、患者さんがぐっすり眠っていることがあります。こんな時、起こしてケアをするべきか、それともそのまま寝かせておくべきか、どのように判断したらよいか悩みます。
ケアの目的や優先性を踏まえて、必要なら優しく起こして実施を。急を要しないケアの場合は、患者さんの負担を考慮し、適切なタイミングを検討してみましょう。
実習中、ケアを行うために病室を訪れた際、患者さんがぐっすり眠っていて、どう対応すべきか迷った経験はありませんか?「患者さんに必要なケアを行わなければ」と焦る一方、「せっかく寝ているのに起こすのはかわいそう」と葛藤することもあるでしょう。
こうした場面では、患者さんを起こしてケアを行うべきかどうかの判断が難しく、迷うことも多いはずです。この記事では、その判断に役立つ視点について、具体例を交えながら解説します。また、患者さんの負担を軽減しながら適切なタイミングでケアを行うための工夫についてもご紹介します。実習の現場で迷ったときのヒントとして、ぜひお役立てください!
「その判断で大丈夫?」患者さんに関わる前に確認すべきこと
ケアの優先性を適切に判断するためには、患者さんの生命への影響や、そのケアの緊急性・重要度など、多角的な視点から慎重に検討することが不可欠です。しかし、経験の浅い初学者にとっては、こうした判断が難しい場合も多く、不十分な情報や偏った視点に基づいて誤った判断をしてしまうリスクも否めません。
そのため、このような状況に直面した際には、自分だけで判断せず、患者さんの状況や自分が考えた判断内容を指導者に共有し、確認を受けた上で行動することが重要です。これにより、患者さんにとって適切なケアを提供できるだけでなく、自身の判断力を磨き、看護者として成長するための貴重な学びにつながるでしょう。
眠っている患者を起こしてでもケアを行うべきかを判断する視点
患者さんが眠っているときにケアを行うべきかどうかを判断するには、「そのケアが患者さんにとってどれほど重要で、今すぐ実施する必要があるかどうか」という視点を持ち、慎重に検討することが大切です。ケアの優先性を見極めることで、患者さんの安全を確保しつつ、最適なタイミングで必要なケアを提供することができます。以下では、眠っている患者さんにケアを行うべきかを判断するための視点について、具体例を交えながら詳しく解説します。
1.患者の生命に直結するケアかどうか
患者さんが眠っている場合でも、そのケアが生命に直結するものであれば、睡眠を妨げてでも最優先で実施する必要があります。
たとえば、急性期や手術後の患者さんは、急変や合併症のリスクが高く、それらを早期に発見して迅速に対応することが求められます。そのため、バイタルサインや全身状態を継続的に観察・モニタリングすることは、患者さんの生命維持や安全性を確保する上で不可欠です。このような状況では、患者さんが眠っている場合であっても、バイタルサイン測定を優先して実施しましょう。
2.時間が決まっているケアかどうか
患者さんが眠っている場合でも、そのケアが医師の指示や治療スケジュールに基づき、特定の時間に実施する必要がある場合は、睡眠を妨げてでも対応することが求められます。
たとえば、医師の指示で血糖測定の時間が定められている場合、血糖値の変動を的確に把握し、食事管理やインスリン投与などの治療を効果的に進めるためには、指示された時間を守ることが欠かせません。
実習中には、指導者が測定を行い学生が見学する場合や、指導者の見守りのもとで学生が実施する場合がありますが、どちらの場合でも、患者さんを起こす際には優しく声をかけ、ケアの目的や必要性を丁寧に説明することで、患者さんが安心してケアを受けられる環境を整えましょう。
3.他の患者さんへの影響はどうか
病院では、多くの患者さんの検査や治療が円滑に進むよう、予約枠に基づいてスケジュールを管理していることがあります。一人の患者さんの対応が遅れると、その後に予定されている患者さんの検査や治療が次々に遅延し、院内全体の業務に影響を及ぼす可能性があります。
たとえば、CT検査や内視鏡検査では、指定された時間までに患者さんが準備を整えていないと、検査室全体のスケジュールが遅れ、後続の患者さんにも影響が及びます。このような場合は、患者さんが眠っている場合でも、時間になったら優しく声をかけて起こし、検査や治療が滞りなく進むよう準備を進めましょう。

「急を要しないケア」と判断した場合はどうするか
急を要しないケアの場合、「患者さんを起こすのはかわいそうだから、今日はやりません」と判断してしまうことがあるかもしれません。しかし、その判断は本当に正しいのでしょうか?
「やらなくていい」という判断が許されるのは、そのケアが患者さんにとってそもそも必要のない場合に限られます。実際には、多くのケアが患者さんの治療や回復において重要な役割を果たしており、単に「急を要しない」という理由だけで見送るのは適切ではありません。むしろ、患者さんの負担を軽減しつつ、どのタイミングでケアを実施するのが患者さんにとって最もよいかを検討することが重要です。以下では、患者さんにとって最適なタイミングでケアを行うための工夫を紹介します。
1.患者さんにとっての最適なタイミングに合わせる
患者さんの生活リズムや睡眠パターンを把握し、その情報をもとにケアの計画を立てることが重要です。特に、夜間に十分な睡眠を取れなかった患者さんにとって、日中の休息は心身の回復や疲労の軽減に不可欠です。したがって、睡眠を無理に妨げるのではなく、あらかじめ患者さんが活動しやすい時間帯に合わせてケアを実施するように心がけましょう。
2.短時間の猶予を持って再訪室する
15~30分程度の短い仮眠(パワーナップ)は、夜間の睡眠に悪影響を与えず、心身の疲労回復に効果的とされています。急を要しないケアの場合は、15~30分ほど休息の時間を取り、その後に患者さんの様子を見てから再訪室することを検討してみましょう。こうした配慮により、患者さんが快適に目覚めやすくなり、ケアをスムーズに進められる可能性が高まります。
3.患者さんと相談してみる
患者さんから「もう少し休みたい」との希望があった場合は、その意向を尊重しながら、ケアをどの程度先延ばしにできるかを慎重に見極めることが重要です。患者さんと相談しながら最適なタイミングを調整することで、安心感や満足度を高められ、ケアへの協力も得やすくなるでしょう。

いかがでしたか?この記事では、眠っている患者さんにケアを行うべきか迷ったときの判断ポイントや、患者さんにとって最適なタイミングでケアを行うための工夫について解説しました。看護学生として判断に迷う場面は多くあるかもしれませんが、この記事で得た視点や工夫を活用し、患者さんに寄り添ったケアを提供していきましょう。
読者の皆さんが楽しく充実した実習を過ごせることを願っています。看護学生としてのさらなる成長を目指して、一緒に頑張りましょうね!