今回頂いた質問

111回の国試で、社会福祉協議会についての出題がありました。誰が誰のために、何をしている機関なのでしょうか。具体的に教えてください。

ご質問ありがとうございます。
社会福祉協議会は、社会福祉の向上に向けてさまざまな活動を行っています。「社協」の略称で呼ばれることもあります。ここでは、社福祉協議会の基礎知識を理解するとともに、根拠法、主な活動を中心にポイントをおさえておきましょう。

1.社会福祉協議会の基礎知識

1)社会福祉協議会とは?

民間の社会福祉活動を推進することを目的とした営利を目的としない民間組織です。一見、行政機関のように聞こえますが、実は民間組織である、というところがポイントです。 

2)社会福祉協議会の役割

社会福祉の増進を目的とし、社会福祉の推進役を担います。求められている役割が公共性の高い事業内容のため、一般企業と違い、利益を追求しない非営利組織となっています

3)社会福祉協議会の財源

都道府県、市町村からの交付金や自治体からの委託金が多いです。自治体や行政機関からの依頼や連携することが多く、非営利組織として運営できるのはこのためです。民間組織といってもピンとこないのはこのためなのかもしれません。

2.社会福祉協議会の根拠法

根拠法は「社会福祉法」です。これはわかりやすいですね。同法の第109条および第111条に次のように定められています。

1)社会福祉法における社会福祉協議会の事業

(1)社会福祉を目的とする事業の企画および実施
(2)社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助
(3)社会福祉を目的とする事業に関する調査、普及、宣伝、連絡、調整および助成
(4)社会福祉を目的とする事業の健全な発達をはかるために必要な事業

2)社会福祉協議会の種類と構成メンバー・事業内容

社会福祉協議会には全国社会福祉協議会、都道府県・指定都市社会福祉協議会、市町村・地区社会福祉協議会があります

(1)全国社会福祉協議会の役割と事業内容

・役割:社会福祉活動に関する研究・提言・普及・連絡調整
・事業内容
(ア)利用者の権利擁護事業
 マニュアル・事例集の作成、従事者研修の実施、第三者評価事業の普及
(イ)全国ボランティア活動の支援
 ボランティアコーディネーター、インストラクター向け手引書の作成
(ウ)福祉人材の養成
(エ)アジア諸国の社会福祉の支援
(オ)連絡調整、その他

(2)都道府県・指定都市社会福祉協議会

・役割:広域的見地から必要な社会福祉活動の推進
・事業内容
(ア)利用者の権利擁護事業
(イ)住民の生活支援事業
 生活福祉資金貸付事業の実施(審査・決定)
(ウ)ボランティア活動の支援
 都道府県ボランティアセンターの運営、ボランティア養成のための講座、研修事業の実施
(エ)福祉人材の養成
(オ)連絡調整、その他

(3)市町村・地区社会福祉協議会

・役割:地域の社会福祉活動実践の拠点
・事業内容
(ア)住民の生活支援事業
 障害者へのホームヘルプ事業など
 食事、移送サービスなど
 介護、認知症、虐待の予防事業(ふれあいいきいきサロンなど)
(イ)介護保険事業
(ウ)ボランティア活動の支援
(エ)連絡調整、その他

3つの各社協の役割・事業の違いは、規模感や住民とその問題との距離感にあるわけですね。

以上が質問の回答です。
では、「社会福祉協議会」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第111回看護師国家試験 午前問題31

社会福祉法に基づき社会福祉協議会が推進するのはどれか。

1. がん対策
2. 男女共同参画
3. 就労の支援活動
4. ボランティア活動

1.× がん対策の根拠法は「がん対策基本法」である。「国・地方公共団体・医療保険者・国民・医師などおよび事業主など」が、責務として推進する。
2.× 男女共同参画の根拠法は「男女共同参画基本法」である。「国・地方公共団体・および国民」が、責務として推進する。拠点施設に男女共同参画センターなどを設置する自治体が多い。
3.× 失業者に対して主に就労支援を行うのは「職業安定法」を根拠法とする「公共職業安定所(通称職安)」である。公共職業安定所は、民間の職業紹介事業等では就職へ結びつけることが難しい就職困難者を支援する最後のセーフティネットとしての役割を担っている。
4.○ 正しい。
正解…4

●「健康支援と社会保障制度」について理解を深めるには、科目別強化トレーニング

編集部より

社会福祉協議会はまさに住民参加の社会福祉向上に重要な役割を担っている組織です。その活動は支援を必要としている地域住民の実情に合わせて、配食サービスから住居の提供まで多種多様です。行政機関としてではなく民間組織と位置付けたのは、福祉活動が迅速・融通・機動性よく展開できるからです。行政機関になってしまうと、議会の議決や許認可などの手続きが必要になってしまうからです。看護師国家試験においては、111回の過去問のように、まずは根拠法と主な役割を理解しておくことが重要といえます。