今回頂いた質問

110回の国試で、褐色細胞腫に関する出題がありました。授業でも詳しく習っていませんし、過去問でもあまり見かけません。詳しく教えて頂けませんか。

ご質問ありがとうございます。

1.褐色細胞腫とは?

褐色細胞腫とは、カテコールアミン(アドレナリンとノルアドレナリン)が作られ過ぎて、高血圧をメインとする症状が出現する疾患です。カテコールアミンを分泌するのは、交感神経の神経終末や副腎髄質で、これらから腫瘍が発生します。褐色細胞腫では、カテコールアミンによって高血圧が起こります。


 

2.褐色細胞腫の主症状

高血圧が持続すると、脳や心臓に大きな負担をかけるので、人体は常に血圧を監視しています。監視をしているのは、頸動脈洞と大動脈弓の圧受容器です。
褐色細胞腫で高血圧になると、その情報がすぐに延髄の心臓中枢に伝わり、迷走神経(副交感神経)で血圧を下げようとします。そのため褐色細胞腫では、発作性の高血圧と、それを抑え込む低血圧が繰り返し起こり、血圧が動揺します(高血圧が持続するタイプもあります)。
高血圧のほかには、動悸、頻脈、発汗、高血糖などがあります。頭痛も高頻度で発生しますが、これは高血圧で脳に血液が入りすぎ、脳が膨張しているために起こります

 

3.副腎皮質の腫瘍~クッシング症候群~

看護師国家試験では、副腎髄質の腫瘍である褐色細胞腫よりも、副腎皮質の腫瘍による副腎皮質ホルモン過剰症状の「クッシング症候群」のほうが出題されやすいです。副腎皮質ホルモンは、カテコールアミンに似たホルモンで、臓器を戦闘態勢にする働きがあります。過剰になると、高血圧や高血糖などのほかにムーンフェイスや男性化など特徴的な症状が出現するので、こちらもしっかりと学習する必要があるでしょう。

 
 
以上が質問の回答です。
では、「褐色細胞腫」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第110回看護師国家試験 午前問題77

褐色細胞腫でみられるのはどれか。

1. 高血圧
2. 中心性肥満
3. 満月様顔貌
4. 血清カリウム濃度の低下
5.副腎皮質ホルモンの産生の亢進

1.○ 副腎髄質の腫瘍により、カテコールアミン(アドレナリンやノルアドレナリン)が過剰に分泌されるため、心拍数が増加し、末梢血管が収縮することで血圧が上昇します。
2.× 副腎皮質の腫瘍であるクッシング症候群の症状のひとつです。
3.× 副腎皮質の腫瘍であるクッシング症候群の症状のひとつです。
4.× 副腎皮質ホルモンの一部であるアルドステロンが過剰に分泌されると、腎臓の尿細管で、ナトリウムと水分を再吸収(血管に戻す)して、血液量を増やし、血圧を上昇させます。ナトリウムはプラスイオンで、血中のプラスイオンが過剰になるため、調整するために同じプラスイオンであるカリウムイオンを尿中に捨てます。そのため、血清カリウム濃度が低下します。
5.× 副腎皮質の腫瘍であるクッシング症候群の症状のひとつです。
正解…1

●疾病の成り立ちと回復の促進について理解を深めるには、科目別強化トレーニング

編集部より

副腎髄質は、交感神経の一部と考えた方がわかりやすいです。また副腎髄質を包む副腎皮質から出るホルモンは、カテコールアミンに似た作用があります(血圧上昇と血糖上昇)。一方で、違いもありますので、それらを整理しておくとよいでしょう。