今回頂いた質問

111回の国試で、リワーク支援に関する出題がありました。復職に関する社会資源はいろいろあって、混乱してしまいます。リワーク支援は具体的にどのような人が利用し、どのようなサポートを受けるのでしょうか。教えてください。

ご質問ありがとうございます。リワーク支援は、行政、民間企業、NPO、医療機関など様々なところが行っているため、混乱するのは無理もないことと思います。ここでは、リワーク支援の基礎知識を理解するとともに、復職プログラム全体のどの位置づけなのかを確認しながら、試験に出るポイントをおさえておきましょう。

1.リワーク支援の基礎知識

(1)リワーク支援とは?

リワークは、return to workの略語です。リワーク支援とは、うつ病をはじめとしたメンタルヘルスの不調などで休職している労働者が、復職復帰する際の支援・リハビリテーションプログラムのことです。

(2)リワーク支援の対象者

うつ病などのメンタルヘルス不調などで休職している会社員で、復職の意欲が明らかな人が対象になります。原則、退職者は対象とはなりません。リハビリテーションプログラムに参加できるくらいに病状が回復していることも必要です。

(3)リワーク支援の担い手

・都道府県障害者職業センター
公的サービスであり、厚生労働省所轄の独立行政法人である高齢・障害者雇用支援機構に属しています。障害者となっていますが、障害者手帳や障害者認定は不要とされています。ただ、利用料が無料な場合がほとんどなので、利用者が多く、すぐには利用できないこともあるようです。
・医療機関、民間企業、NPO
民間による実施に該当します。必ずしもかかりつけ医が実施するとは限らないため、メンタルヘルス不調者の同意が必要であり、事業主・主治医などと連携しながら支援を行なう形になります。クリニックや医療系であれば医療スタッフが常駐しています。民間企業やNPOの場合は、施設によっては失業中や退職した人でも、利用することもできます。

2.リワーク支援の位置づけ

厚生労働省・中央労働災害防止協会「改訂 心の健康問題により休職した労働者の職場復帰支援の手引き」によると、休職した会社員の復帰支援のあらましは以下のとおりです。

同手引きには、この流れの第2~第3ステップの間を利用したリワーク支援の具体例が載っています。復職支援なので、主治医による職場復帰可能の判断~職場復帰までが原則です。復職後もリワーク支援としての「出勤支援」がありますが、所属企業がお試し出勤・時短出勤などに対応してくれている場合、リワーク支援からの「出勤支援」を受けることはできません。

3.リワーク支援の目的と内容

内容やプログラムは多岐にわたります。また、目的に合わせたかつ利用者の特性や病状に合わせたものになるので、内容も柔軟性に富んでいます。
目的としては、出勤を想定した生活リズムの調整、必要な体力・能力の回復、メンタルヘルス不調再発防止、対人コミュニケーション能力の回復などです。出勤時間を想定して、通常は9:00~17:00で実施する機関がほとんどです。ですが、利用者の特性や体調に合わせ,無理をすることなく進めていきます。
内容としては、ストレス対処法やうつなどに対するセルフケアを学ぶ演習(e-ラーニングもある)やロールプレイ、瞑想、ゲームやグループワーク、課題図書読書など、実施機関によってさまざまなプログラムがあります

以上が質問の回答です。
では、「リワーク支援」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第111回看護師国家試験 午後問題111

Aさん(35歳、男性、会社員)は、(中略)5年前にうつ病と診断された。(中略)

Aさんのうつ症状は改善し、多職種で退院に向けた話し合いを始めた。会社の休職制度を利用して休んでいるAさんは、「薬が効いたので、今後も薬を飲み続けることが大切だと思っている。異動したばかりなので仕事に早く戻らなければと思うが、休職してからずっと入院しているので、すぐに働ける自信がない」と看護師に話した。

退院に向けてAさんが利用する社会資源で適切なのはどれか。

1. 就労継続支援
2. リワーク支援
3. 障害者社会適応訓練事業
4. ジョブコーチによる支援

1.× 就労継続支援とは、一般企業などでの就労が困難な人に働く場を提供したり、知識および能力の向上のために必要な訓練を行うものである。Aさんは休職中であるが、会社に就労中であり、対象には該当しない。
2.○ 正しい。
3.× 障害者社会適応訓練事業とは、精神障害等によって一般就労の困難な人が企業・事業所に一定期間通い、勤労への意欲・通勤の持続・作業への集中力・持続力などの増進職場での対人コミュニケーションなどを訓練する事業のことである。Aさんは就労中であり、対象ではない。
4.× ジョブコーチによる支援とは、障害者職業カウンセラーが策定した支援計画に基づいてジョブコーチといわれる者が職場に出向き、直接支援を行うものである。就労支援だけでなく、障害者の職場適応に必要な助言を行い、必要に応じて職務の再設計や職場環境の改善を提案する。この場合のAさんは企業のサポートがあると思われ、対象には該当しない。
正解…2

●「健康支援と社会保障制度」について理解を深めるには、科目別強化トレーニング

編集部より

メンタルヘルス不調で休職した人には、休職開始から復職支援が必要です。リワーク支援は病状回復~復職までのピンポイントな支援と言えますが、企業・主治医と連携して行う復職支援は今後ますます重要になると思われます。看護師国家試験では、メンタルヘルス不調者にとってよりよい支援は何かを考えていく論点として学習しておきましょう。