今回頂いた質問

113回の国試で、「サイコロジカルファーストエイド」に関する出題がありました。
災害看護は、看護の知識と災害の知識両方が必要となり、これまでの看護の学習内では習ったことのない視点がたくさんあり、戸惑うこともあります。
「サイコロジカル」というからには、心理的な観点が必要なのかと思いますが……。ポイントを教えていただけますか。

ご質問ありがとうございます。
質問者さんがおっしゃるように、「サイコロジカルファーストエイド」は心理的支援の技法のひとつです。
被災地での看護活動において大切なことですので、この機会にしっかり学んでおきましょう。

1.サイコロジカルファーストエイドとは

サイコロジカルファーストエイド(Psychological First Aid:PFA)は、深刻な危機的出来事に遭遇した人々に対し、人道的で支持的、かつ実践的な支援を行うもの1)です。日本では、さまざまな災害や事故などの痛ましい出来事が各地で発生しています。このような出来事に巻き込まれると、大切な人を失ったり、家族やコミュニティから引き離されたりするなどのつらい経験をすることがあります。

PFAの目的は、こうした痛ましい出来事によって引き起こされる初期の苦痛を軽減し、被災者の短期および長期的な適応機能と対処行動を促進すること2)です。
 

2.いつPSAを提供するのか

PFAの主な対象は、ごく最近に危機的な出来事に見舞われた人々1)です。そのため、災害や事故などが発生している最中や直後など、つらい状況にある人々に出会った時点から行うことができます

3.誰がPSAを提供できるのか

PSAは、専門家だけでなく、一般の方でも支援者として提供することができます。

4.どのようにPSAを提供するのか

PSAの基本的な活動原則は、「見る」「聞く」「つなぐ3)です。

見る

・周囲の安全を確認する
・誰が支援を必要としているかを確認する など

聞く

・感情を受け止める
・ニーズや心配事について尋ねる など

つなぐ

・情報を提供する
・大切な人や社会的支援と結びつける など

5.してはならないこと

PSAを提供する際には、支援者の言葉や行動によって被災者をさらに傷つけることのないよう、十分に配慮することが重要です。例えば、「誤った情報を伝えること」「無理に話をさせること」「相手のプライバシーに踏み込むこと」「相手を“こういう人だ”と決めつけること」などは、倫理的に避けるべき行為です。

 

以上が質問の回答です。
では、「サイコロジカルファーストエイド」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第113回看護師国家試験 午後問題72

サイコロジカルファーストエイド〈Psychological First Aid: PFA〉について正しいのはどれか。

1. 活動の原則は、見る、聞く、つなぐである。
2. 災害発生から1週間経過してから活動する。
3. 被災都道府県からの派遣要請に基づき活動する。
4. 苦痛の原因となった出来事を詳細に話すことを促す。

1.○ 正しい。
2.× 災害の最中または直後から活動する。
3.× 専門家だけではなく、一般の方でも活動できる。
4.× 被災者が話すことを望まない場合は、無理に話をさせてはならない。
正解…1

●「看護の統合と実践」について理解を深めるには、科目別強化トレーニング

編集部より

2009年(平成21年)のカリキュラム改正では、「災害直後から支援できる基礎的知識について理解することが必要である」として、災害基礎教育を強化する方針が示されました。
日本では、阪神・淡路大震災や東日本大震災、そして本年発生した能登半島地震などの被害から、被災者への「こころのケア」に対する関心が高まっています。
国家試験の準備としてだけでなく、万が一の時に、看護の専門家として正確かつ迅速にケアを提供できるよう、災害看護に関する適切な知識と技術を身につけておくことが重要です。

参考・引用文献:
1) 世界保健機関、戦争トラウマ財団、ワールド・ビジョン・インターナショナル、心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)フィールド・ガイド.(2011) 世界保健機関:ジュネーブ.(訳:(独)国立精神・神経医療研究センター、ケア・宮崎、公益財団法人プラン・ジャパン,2012).
2) アメリカ国立子どもトラウマティックストレス・ネットワーク,アメリカ国立PTSDセンター「サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き第2版」兵庫県こころのケアセンター訳,2009年3月. https:www.j-hits.org/
3)サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)ガイド~赤十字・赤新月社版~、国際赤十字・赤新月社連盟心理社会的支援リファレンスセンター、コペンハーゲン、2018