今回頂いた質問
学校の友達が、「SSRIには錯乱とかの副作用がある」って言っていましたが、そのような副作用がありますか?SSRIは副作用が少ない薬だと思うのですが。実習でSSRI服用患者さんを担当する可能性があり、ちょっぴり不安です……。
抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬に比べて抗コリン作用(口渇・便秘・排尿障害・視力調節障害・短期記憶障害・せん妄など)や心毒性が少なく、安全性が高いといわれています。
しかし、SSRIやSNRIにも特有の有害反応があることを忘れてはいけません。特に、お友達のおっしゃるような「錯乱」などの精神症状は、「セロトニン症候群」と称される、SSRIの重篤な有害反応として現れることがあります。
「セロトニン症候群」では、精神症状(不安、混乱する、いらいらする、興奮する、動き回るなど)、錐体外路症状(手足が勝手に動く、震える、体が固くなるなど)、自律神経症状(汗をかく、発熱、下痢、脈が速くなるなど)が見られます。
速やかに症状を発見し、服薬を中止すれば、通常、24 時間以内に症状は消えますが、稀に、横紋筋融解症や腎不全などに陥ることがあるため、細心の注意が必要です。早期発見のために、急に精神的に落ち着かなくなる、体が震えてくる、汗が出てきて脈が早くなるなどの症状が見られた場合は、「セロトニン症候群」を疑いましょう。
このように、SSRIやSNRIを服用中の患者さんの看護でも、「有害反応の少ない抗うつ薬だから安全だ」と思い込んで油断することなく、有害反応をきちんと把握した上で注意深い観察を行うことが大切です。
SSRIの有害反応
■消化器症状……投与初期にみられる。吐き気・嘔吐・下痢などで、一過性のものである。
■性機能障害……勃起障害・射精障害などがみられる。
■アクティベーション(賦活)症候群……投与初期にみられる。不安・焦燥・不眠が出現し、時に衝動性が高まる。
■セロトニン症候群……SSRIの増量時やほかの薬物との併用時にみられる。錯乱や軽躁状態などの精神症状、ミオクローヌスや腱反射亢進などの神経・筋症状、発汗や下痢などの自律神経症状が出現する。
■中止後症候群……突然の服薬中止や、不規則な服用時にみられる。精神症状の悪化、めまい、ふらつき、吐き気、嘔吐、頭痛などの身体的な不調が現れる。
SNRIの有害反応
■排尿障害……尿が出にくい、出すぎる、我慢できないなどの症状が見られる。そのため、前立腺肥大症には禁忌である。
では、国家試験で出題されたSSRIに関する問題を解いてみましょう。
問題
第102 看護師国家試験 午後問題50
選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉について正しいのはどれか。
1.パニック障害に対する効果はない。
2.抗コリン作用は三環系抗うつ薬よりも弱い。
3.うつ状態が改善したら直ちに使用を中止する。
4.抗うつ効果の評価は投与開始後3日以内に行う。
2.○ SSRIでも軽度の抗コリン作用を認めることもあるが、三環系抗うつ薬に比べれば、その頻度は少ない。
3.× SSRIの使用を突然中止すると、中止後症候群となる可能性があるため、ゆっくりと減量する。
4.× SSRIは、三環系抗うつ薬に比べれば、効果発現までの期間は短いが、それでも1週間以上は要する。
答え…2
編集部より
精神障害に対する薬物療法の開始にあたっては、患者さんが薬物に対して不安や疑問を抱いていたり、服薬を拒むことが少なくありません。そのため、看護師は薬物の効果や副作用などについての正確な知識を持ったうえで、わかりやすい説明や服薬への根気強い説得を行う必要があります。また、服薬を開始してからは、服薬の確認に努め、常に患者さんの一般状態の観察し、患者さんの訴えに注意深く耳を傾けることも大切です。