今回頂いた質問
111回の国試で、ABO式血液型の検査結果に関する出題がありました。ABO式血液型については習いましたが、オモテ検査とウラ検査とは、どのような検査なのでしょうか。
ご質問ありがとうございます。ここでは、ABO型血液型についての復習しながら、説明していきます。
1.A抗原とB抗原
図1をご覧ください。
まず、ABO型の血液型は、赤血球に付着している抗原(タンパク質)の種類を確認します。A型の赤血球にはA抗原が、B型の赤血球にはB抗原が、AB型の赤血球にはA抗原とB抗原が付着しています。一方、O型にはA抗原もB抗原も付着していません。
2.オモテ試験
次に、患者血球に付着する抗原を調べます。これをオモテ検査といいます(図2)。
試薬には抗A血清(青)と抗B血清(黄)がありますが、それぞれ抗A抗体(A抗原に結び付き、血液を凝集させるもの)と抗B抗体(B抗原に結び付き、血液を凝集させるもの)が含まれています。
オモテ検査をした結果の図3をご覧ください。抗A血清でも、抗B血清でも血球が凝集しているため、この患者血液はAB型と判断されます。
3.抗A抗体と抗B抗体
血清とは、血液のうちの液体成分をさし、この中に抗A抗体や抗B抗体が含まれています。図1を再度ご覧ください。
ABO型血液型において、A型の血清中には抗B抗体が、B型の血清中には抗A抗体があります。AB型には、抗A抗体・抗B抗体どちらもありません。O型は反対に抗A抗体・抗B抗体の両方をもっています。
4.ウラ検査
オモテ検査では患者の血球を調べましたが、ウラ検査では患者の血清を調べます(図4)。患者の血清を2つの皿に取り、それぞれにA型の標準血球(A抗原が付着)と、B型の標準血球(B抗原が付着)を垂らします。仮に患者がAB型である場合、血清中には抗A抗体も抗B抗体も含まれていないため、A型血球B型血球も凝集は起こりません。
ABO型血液型の判定は、オモテ試験とウラ試験の検査結果が一致することで血液型が確定されます。しかし、血液型は200種類以上あるといわれ、オモテ試験とウラ試験が一致しない場合もあるようです。その場合、血液型の判定は保留にして精査する必要があります。
以上が質問の回答です。
では、「ABO式血液型の検査結果」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。
問題
第111回看護師国家試験 午後問題28
ABO式血液型におけるオモテ検査とウラ検査の結果を表に示す。
血液型判定の結果がO型となるのはどれか。
1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
2.× ②は、1と反対の反応を示しており、B型と判断できる。
3.○ ③は、O型は血球にA抗原・B抗原をもたないから、オモテ検査では凝集反応は起こらない。O型の血清中には抗A抗体と抗B抗体の両方をもっているため、ウラ検査ではA型血球・B型血球の双方とも凝集させてしまう。
4.× ④は、3と正反対の反応で、AB型と判断できる。
正解…3
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編集部より
一般的に、体内に侵入してきた異物のことを抗原といい、抗原を攻撃するために作られるタンパク質を抗体と呼びます。新型コロナウイルスが体内に侵入してきたかどうかを調べるのに「抗原検査」を行ったり、感染経験やワクチンの効果をみるために「抗体検査」を行ったりすることからもわかるでしょう。しかし、ABO型血液型における赤血球抗原や、抗体は生まれつきもっているものであって、一般的な抗原・抗体の使い方とは区別して考えた方がいいでしょう。