今回頂いた質問
授業で「高齢者は誤嚥性肺炎を起こしやすい」と習いました。
誤嚥性肺炎はどのようにして起こるのですか? また、高齢者に多いのはなぜですか?
ご質問ありがとうございます。
食べ物は、【口腔】→【咽頭】→【食道】を通ります。ただし、食道と気管は隣り合わせの位置にありますが、食べ物を飲み込むときには気管のフタ(咽頭蓋)が閉まるため、気管に食べ物が入らない(ムセない)しくみになっています。万が一、気管に食べ物が入ってしまったとしても、激しい咳き込みによって、食べ物を気管の外に出そうとする反射が起こるようになっています。
ところが、老化によってフタが緩む(咽頭蓋の機能が弱まる)と、食べ物が気管へと入りやすくなってしまいます。
また、老化によって、気管に入った食べ物を外に出そうとする反射も弱まるため、気管の中に入った食べ物や、そこに含まれる唾液に細菌が繁殖することがあります。この細菌が、気管支を通して肺へ移行すると肺炎が起こりやすくなります。
ちなみに、誤嚥を起こしにくい食事形態としては、下記のようなものが挙げられます。
・軟らかい食べ物
・まとまりやすい食べ物
・咀嚼しやすい食べ物
・粘らない食べ物
・性状が均一の食べ物 など
病棟における実際の食事場面では、とろみ剤を利用したり、給食メニューの調整などにより、食べ物や水分に適度なとろみがついたものを用意することがあります。とろみがついた食べ物や水分は、咽頭をゆるやかに流れていくので、誤嚥を防ぐ食事として適しています。
ただし、とろみを強くつけすぎると粘性が増し、かえって誤嚥を起こしやすくなる場合があります。また、食べ物や水分の種類によっても、とろみのつき方が違います。患者さんに召し上がっていただく前に、形態を必ず確認するようにしましょう。
回答は以上になります。
では、第100回の国家試験で出題された問題を解いてみましょう。
問題
第100回 看護師国家試験 午前問題16
誤嚥を防ぐための食事介助で適切なのはどれか。
1. パサパサした食べ物を準備する。
2. 患者の体位は、頸部を後屈させ下顎を挙上させる。
3. 食物を口に運んだスプーンは、上方へ抜き取る。
4. 飲み込んだのを確認してから、次の食物を口に入れる。
適度に水分を加えて軟らかくしたり、とろみをつけたりするなど、食べやすい形態に工夫しましょう。
2. × 頸部を後屈して下顎を挙上する体位は、気道が広がりやすくなり、誤嚥の危険性が高まります。
座位または30度仰臥位で、頸部を前屈させる体位が適切です。
3. × スプーンを上方へ抜き取ると、スプーンの傾きによって食べ物が勢いよく口の中に流れ込む原因になります。
4.○ 正しい
答え…4
編集部より
高齢者は脱水になりやすいということも誤嚥性肺炎の原因と考えられます。唾液の分泌量が減り、口腔内自浄作用の低下によって口腔内細菌増殖が起こってしまうからですぅ。その肺炎により寝たきりとなり、廃用症候群を起こすことが考えられるため、口腔ケアが肺炎予防として重要となります。また、歯周病による歯牙の欠損を予防して摂食機能の維持につながるので、栄養の十分な摂取を助けることになります。