今回頂いた質問
111回の国試で、ギャンブル等依存症対策基本法に関する出題がありました。学校では習っていないのですが、国試対策として、どのようなことを理解しておけばよいでしょうか。
ご質問ありがとうございます。
ギャンブル等依存症対策基本法は、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進し、国民の健全な生活の確保を図るとともに、国民が安心して暮らすことができる社会の実現に寄与することを目的に制定されました。
1.制定された背景
その背景にはIR推進法があります。IR推進法とは、カジノを中心とした宿泊施設、テーマパーク、商業施設などを含む統合型リゾート(IR)の設立を推進する法律で、近く日本にもカジノができることになります。
一方で、ギャンブル依存症はアルコールや薬物のように一般にはあまり知られておらず、必要な治療・支援が受けられない現状にあり、国が総合的にギャンブル等依存症対策を推進する必要があるとの判断から、ギャンブル等依存症対策基本法が制定されたのです。
2.定義
ギャンブル等依存症対策基本法では、ギャンブル等依存症を、「ギャンブル等※にのめり込むことにより日常生活または社会生活に支障が生じている状態」と定義しています。
※法律の定めるところにより行われる公営競技、ぱちんこ屋に係る遊技その他の射幸行為
3.基本理念
基本理念は、
(1)ギャンブル等依存症の発症・進行・再発の各段階に応じた防止・回復のための対策を適切に講ずるとともに、本人・家族が日常生活を円滑に営むことができるように支援すること
(2)多重責務・貧困・虐待・自殺・犯罪等の問題に関する施策との有機的な連携が図られるよう必要な配慮する
ことです。
多くの人はギャンブルを余暇活動のひとつとして楽しんいます。しかし、一部の人はそうではく、依存症になってしまいます。
ギャンブルはお金を賭けて、苦労せずにそれが増えることを期待する気持ち(射幸心という)を楽しむものです。もちろん、お金が大幅に減ることもあります。
依存症の人は正常な判断ができなくなってしまっているので、仕事を休み、お給料や貯金などの使える金額範囲を大幅に超えてお金をつぎ込み、さらに借金をしてまで、ギャンブルを続けようとします。家族にお金を借りることで、その関係性が悪くなることもあります。また、適切ではない機関からお金を借り、返済できなくなることで、犯罪に巻き込まれたりすることもあります。なので、当事者だけでなく、家族を支援する体制も必要になるのです。
4.基本計画と対策推進計画
また、政府はギャンブル等依存症対策の総合的かつ計画的な推進を図るために、ギャンブル等依存症対策の推進に関する基本的な計画として、「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」の策定を義務化しました。そして、自治体にカジノができることをふまえ、政府の基本計画を基に、都道府県に対しては対策推進計画を策定するよう努力義務としました。
以上が質問の回答です。
では、「ギャンブル等依存症対策基本法」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。
問題
第111回看護師国家試験 午後問題31
次の法律のうち最も新しく制定されたのはどれか。
1. 未成年喫煙禁止法
2. 麻薬及び向精神薬取締法
3. アルコール健康障害対策基本法
4. ギャンブル等依存症対策基本法
2.× 昭和28(1958)年に麻薬取締法として制定され、向精神薬に関する条約の批准に合わせて平成2(1990)年に本法律が制定された。麻薬および向精神薬の輸入・輸出・譲り渡しなど必要な取り締まりを行い、麻薬中毒者の必要な医療を行うなどによって、麻薬および向精神薬の乱用を防止することを目的にした法律である。
3.× 平成25(2013)年に制定され、アルコール健康障害の発生・進行および再発防止を図り、アルコール健康障害を有する者等に対する支援の充実を総合的かつ計画的に推進することを目的にした法律である。
4.○ 平成30(2018)年に制定され、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進することを目的にした法律である。
正解…4
●健康支援と社会保障制度・精神看護学について理解を深めるには、科目別強化トレーニング
編集部より
依存症の治療に大きな役割を果たしているが自助グループであり、アルコール依存症は断酒会やAA〈アルコホーリクス・アノニマス〉、薬物依存はDARC〈ダルク〉やナルコティクス・アノニマスなどがあります。ギャンブル依存症にもGA〈ギャンブラーズ・アノニマス〉などの自助グループがあります。
それぞれの依存症には、当事者だけでなく家族のための自助グループがありますので、ギャンブル等依存症対策基本法の基本理念であるギャンブル等依存症の発症・進行・再発の防止・回復のための対策として、自助グループがあることも覚えておきましょう。