今回頂いた質問
来週、手術を受ける予定の患者さんを受け持っています。
患者さんから「手術前の浣腸はトイレでしてもらえるの?便が出そうになった時、間に合わなくなったら困るから」と言われました。
挿入する長さに注意しながら、立位で浣腸を行っても良いのでしょうか?
立位でのグリセリン浣腸は腸管穿孔を起こす危険性が非常に高いため、避けなければなりません。
その理由としては、
1.立位は、臥位よりも肛門の緊張が高い状態のため、チューブを挿入しにくい。そのため、チューブを押し込むことにより、肛門粘膜を傷つける危険性がある。
2.立位での浣腸は、浣腸のチューブが直腸前壁(会陰曲)に対して直角にぶつかりやすい。
浣腸に関連した医療事故(直腸穿孔)は、立位での実施によって発生している例が多く、日本看護協会による「緊急安全情報」(2006年)においても、立位での浣腸を実施しないよう、注意が呼びかけられています。
浣腸施行時の体位は、「左側臥位」が原則です(浣腸が直腸~下行結腸に流れやすい体位であるため)。
また、肛門から直腸前壁(会陰曲)までは約5~6cmであり、チューブを7cm以上挿入することで、粘膜損傷や腸管穿孔のリスクが高まるので、挿入する長さにも十分注意しましょう。
患者さんにも、立位で浣腸を行う危険性をわかりやすく説明し、理解を得ることも大切ですね。
それから、個室にベッドとポータブルトイレを設置するなど、患者さんの羞恥心や不安に配慮した環境整備を行うことも重要です。
もし、患者さんが浣腸にどうしても抵抗を感じるようであれば、浣腸以外の使用(緩下剤や坐薬など)について、臨床指導者に相談してもよいでしょう。
ここまでを整理した上で、国家試験問題を実際に解いてみましょう。
問題
第102回 看護師国家試験 午後問題16
グリセリン浣腸を実施する際、腸管穿孔の危険性が最も高い体位はどれか。
1.立 位
2.側臥位
3.仰臥位
4.シムス位
2.×
3.×
4.×
上記の通り。
正解は… 1
編集部より
看護技術の手順は、そのひとつひとつが解剖生理学と深く関わっています。「なぜそのような手順を踏むのか」という根拠を、解剖整理学とうまく照らし合わせながら、正しく理解するようにしましょう。また、必要に応じて、患者さんにも理解を得ることも必要です。ただし、あくまでも押しつけにならないようにし、看護手順の原則を守った上で、患者さんの不安が少しでも和らぐよう、環境整備や言葉かけを行うことも、看護師の大切な役割のひとつです。