今回頂いた質問

111回の国試で、乳児の誤飲に関する出題がありました。誤飲する物質によっても対応が異なると思います。代表的なものとその対処法を教えていただけないでしょうか。

ご質問ありがとうございます。
ピアジェによると、乳児期は感覚運動期にあり、吸う・触る・なめる・見る・叩くなどの動作を通し、あらゆる感覚を用いて物事を把握しようとします。触ったものをなんでも口に入れてしまうため、注意が必要です。頻度が高いものにたばこや医薬品が挙げられます。

1.誤飲物1~水を飲ませてから、吐かせる

誤嚥したもののうち、たばこや医薬品、防虫剤等の毒性の高いものは、基本的には水を飲ませて吐きやすくしてから、のどの奥を刺激して吐かせます。

2.誤飲物2~吐かせてはいけないもの

吐かせてはいけないのは、ガソリンやベンジン等の揮発性物質や強酸や強アルカリ、ボタン電池などです。
まず揮発性物質ですが、吐物が気管に入りやすく、少量でも入ると化学性肺炎をおこしやすいといわれています。
次に強酸や強アルカリは、吐物が食道や口腔の粘膜に熱傷様の障害を起こさせるためです。
ボタン電池は、消化管に接触すると、その部分に電気分解でアルカリ性の液体が作られ、短時間で消化管の壁を損傷させることがあります。水を飲ませたり嘔吐を誘発させたりするより、一刻も早く医療機関を受診し、内視鏡を用いて確実に取り出すことが重要です。

 
 
以上が質問の回答です。
では、「乳児の誤飲」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第111回看護師国家試験 午後問題60

生後11か月の男児。ある日の朝、自宅でボタン型電池を飲み込んだ疑いがあり、その日の午前中に外来を受診した。胸部エックス線撮影によって、ボタン型電池が食道下部にあることが確認された。
行われる処置で適切なのはどれか。

1. 背部の叩打
2. 緩下薬の使用
3. 催吐薬の使用
4. 緊急摘出術の実施

1.× 背部叩打は、異物によって気道が閉塞したときの応急処置である。
2.× 緩下剤は、毒性のない異物や、消化管損傷・穿孔の危険性のない異物を排出させる目的で使用する。
3.× 催吐薬は、たばこの誤飲時に用いることが多い。
4.○ ボタン電池の誤飲では短時間で消化管の損傷や穿孔が生じるので、できるだけ早く摘出術を行う。
正解…4

●小児看護学について理解を深めるには、科目別強化トレーニング

編集部より

乳児の誤飲のなかで最も多いのはたばこですが、乳児がたばこを1本すべて飲み込むことはまれです。死亡の原因となるのは医薬品や家庭用化学製品の誤飲です。小児の不慮の事故については、死因の上位を占めることから国試頻出のテーマのひとつです。不慮の事故の内容や、どんな発達上の未熟さが原因になっているのかが問われるので、しっかり確認しておきましょう。