今回頂いた質問

ニュースで虚血性心不全が話題になっていました。どのようなことが危険因子になるのか教えてください。

冠状動脈がなんらかの原因によって狭窄または閉塞し、心筋への冠血流が減少あるいは途絶することで胸痛などの症状が発生する疾患群を虚血性心疾患といいます。近年、病態の本質が冠状動脈壁に出現した動脈硬化巣(アテローム性プラーク)であることが明らかになったため、冠状動脈疾患(CAD)とも呼ばれるようになりました。

心筋が虚血することにより、心筋の収縮力が弱まると心不全の状態になります。これが質問された虚血性心不全です。また心筋虚血は、心室細動などの不整脈につながることもあります。

虚血性心疾患は、心筋障害の可逆性、病態の安定性によって、以下のように分類されます。

心筋障害の可逆性による分類

狭心症心筋障害が一過性で、心筋壊死を残さない
心筋梗塞心筋障害が進行性に出現する。一部は非可逆的な心筋壊死を生じ、ときに致死的となる病態

病態の安定性による分類

安定冠状動脈疾患発作の起こり方や血行動態が安定した状態
安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
慢性冠症候群発作の発生頻度や閾値が急激に変化する不安定狭心症
→血行動態が急速に悪化して急性心筋梗塞、心臓突然死に移行することも

虚血性心疾患の根本的な原因は冠状動脈の動脈硬化です。これまでの疫学研究から、動脈硬化性疾患の発症を促進させる冠危険因子が判明しています。これらをコントロールすることで、発症予防や再発防止につなげられる可能性があります。

冠状動脈硬化の危険因子

1)脂質異常症:虚血性心疾患の発症リスクは総コレステロール値の上昇とともに増加する。
2)糖尿病:糖尿病を合併した虚血性心疾患患者は、合併していない患者に比べて長期予後がきわめて不良。
3)高血圧:動脈硬化の予防には血圧のコントロールが必須。
4)喫煙:ニコチンは血圧を上昇させ冠れん縮および冠血流量の減少の原因に。
5)年齢と性別:50歳以上の男性に多い。女性は閉経以降に心筋梗塞を発症することが多い。
6)肥満
7)家族歴
8)複合する因子を有する病態
(1)メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)
(2)慢性腎臓病:循環器疾患と慢性腎臓病(CKD)に密接な関係がある(=心腎連関)。
回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第103回看護師国家試験(追加試験)午後問題83

虚血性心疾患の危険因子はどれか。2つ選べ。

1. 喫煙
2. ストレス
3. 少量の飲酒
4. 低アルブミン血症
5. 血中HDLコレステロール高値

1. ○ 喫煙は危険因子であり、禁煙を強く指導する。
2. ○ ストレスは重要な危険因子である。
3. × ポリフェノールを含む赤ワインなどの少量の飲酒は、必ずしも危険因子にはならない。
4. × 低アルブミン血症は、とくに危険因子ではない。
4. × HDLコレステロールは、虚血性心疾患に保護的にはたらくため、値が低いほど発症率が高い。LDLコレステロールの高値は危険因子である。

正解…1・2

編集部より

冠状動脈硬化の危険因子を挙げましたが、「ホワイトカラーA型行動者」と呼ばれる人も、虚血性心疾患の発症率が高いことがわかっています。時間強迫観念が強く、なんでも自分がやらないと気がすまない人、オーバーワークで攻撃的性格の人を指すそうです。思い当たる点がある人は、日頃の生活や行動を見直してみては!?