今回頂いた質問
実習で、手術を受ける患者を受け持つことになりました。手術中の全麻(全身麻酔)・腰麻(腰椎麻酔)で、患者さんの容態が急変したといった先輩方の話があり、ちょっと緊張しています。具体的にはどのようなことが起こるのでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
まず術後の看護では手術で奪われた患者の体力回復が大切です!
手術侵襲からの回復促進のため、術後合併症の予防に努めることが重要です。特に、術直後は呼吸状態・麻酔覚醒状態・循環動態などに注意して観察しましょう。
全身麻酔は身体的・精神的苦痛を取り除くのにむいています!
全身麻酔には、鎮静(意識消失)・鎮痛・筋弛緩・有害な副交感神経反射の消失により、手術による身体的・精神的苦痛を取り除くことができます。
ただし、こんな合併症も……
気道閉塞
・分泌物・吐物・舌根沈下、気道挿管による両側声帯麻痺などで起こります。
術後無気肺、肺水腫
・気道閉塞、全身麻酔や創痛による呼吸抑制などで起こります。
不整脈
・全身麻酔に伴う循環動態の変動などで起こります。
血圧変動
・全身麻酔に伴う循環動態の変動、出血などで起こります。
悪性高熱症
・全身麻酔薬の副作用など起こります。
腰椎麻酔の方が患者への負担が少ない!?
腰椎麻酔は部分的な麻酔なので、全身麻酔に比べて手術侵襲が少なく、呼吸状態や循環動態は比較的影響を受けにくいといわれています。
ただし、脊椎への穿刺によって行われるので、やはり合併症はこわいです……
頭痛
・穿刺孔からの髄液漏出に伴う脳圧低下などで起こります。
髄膜炎
・穿刺部からの感染などで起こります。
尿閉
・一過性の無菌性髄膜炎などで起こります。
馬尾症候群(膀胱直腸障害・会陰部から下肢にかけての知覚〔運動〕障害)
・腰仙椎関節付近における脊髄、神経根、馬尾の圧迫によって起こります。
このように麻酔の種類によって、合併症も異なってきますので、患者さんのバイタルサインに対する十分な観察が必要となってきますね!
質問への回答は以上です。
では、国家試験の過去問を実際に解いてみましょう。
問題
第95回 看護師国家試験 午前問題78
全身麻酔後の気管チューブ抜管直後に注意するのはどれか。
1. 筋反射低下
2. 吃逆
3. 呼吸抑制
4. 肺塞栓
2.× 吃逆(しゃっくり)はほとんどみられない(みられたとしても一過性であれば問題ない)。
3.○ 正しい。全身麻酔により呼吸筋が弛緩・抑制されるため、呼吸抑制をきたしやすい。気管チューブ抜管後も、全身麻酔による呼吸抑制が生じないか、十分に観察する必要がある。
4.× 肺塞栓は全身麻酔後に起こりうる合併症のひとつである。ただし、気管チューブ抜管直後の注意点としては優先度が低い。
答え…3
編集部より
昨年の夏、婦人科の手術を受けました。麻酔覚醒と同時に創部の激しい痛みがあり、医師の指示で鎮痛薬(ソセゴン)を投与してもらいました。ところが!ぼんやりと看護師の姿が見えたと思ったらパッと消え、ドアから本物の(?)看護師が入ってくる・・・そんな幻覚が何度も目の前をグルグルしていました。その後は、激しいめまいと吐き気に襲われ、翌朝まで一睡もできずに過ごしてしまいました。学生のみなさん、術後の看護では「鎮痛薬の副作用の有無」の観察もどうぞお忘れなく!(苦笑)