今回頂いた質問

レム睡眠とノンレム睡眠って具体的にはどう違うんですか?

ご質問ありがとうございます。
確かに『レム睡眠』『ノンレム睡眠』という言葉はよく耳にしますが、具体的な違いは分かりにくいですよね。では、まずは睡眠が人体に及ぼす影響からお話していきます。
人間が生きていく中で、食事、排泄、社会活動への参加、趣味や娯楽活動、そして睡眠。それらの要素が影響し合い、毎日の生活リズムをつくっていきます。基本的には人間は日中に活動し、夜間に休息(睡眠)をとります。

睡眠の影響

人間は睡眠中に身体の成長が促されており、細胞の傷を修復する成長ホルモンが分泌され、ストレスと代謝機能に影響を及ぼす副腎皮質ホルモンの分泌量が夜間を通じて少しずつ増加し、早朝に最高値に達します。では、長時間寝られたら健康的か、というと必ずしもそういうことではありません。睡眠不足はもちろん体に悪影響を及ぼしますが、いわゆる「睡眠障害」とよばれる状態は、単に「睡眠時間が短い」という意味でだけではなく、「起きて生活しているときの生活にどれほど支障があるのか、どれほどの苦痛があるのか」という視点でみることが大切です。たとえ十分に寝ていると思っていても、日中に強い眠気におそわれ、目を覚ましていられない場合は睡眠障害です。こういった場合、睡眠の質に問題があることが考えられます。

レム睡眠とノンレム睡眠について

質問でいただいたように睡眠中には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。まず、「レム睡眠」は眠りの深度が比較的浅い睡眠で、眼球運動を伴うのを特徴としています。この際、他には心拍数・血圧・呼吸数の著しい変動、陰部の充血、筋肉の弛緩が目立ち、身体の眠りを中心としているため「身体は寝ていて、脳は起きている」状態といえます。一方、「ノンレム睡眠」とは脳波上徐派が多く、脳が休んでいる睡眠です。心拍数・呼吸数はやや減少しており深いノンレム睡眠の状態の時は「脳も身体も眠っている」状態といえます。
通常、睡眠はノンレム睡眠から始まり、次第に眠りの深度を増していき、1時間前後を経過するとレム睡眠に移行していきます。レム睡眠が約20分続いたのち、再びノンレム睡眠となり、その後はノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返し(成人では全睡眠のうちレム睡眠が約20~30%、ノンレム睡眠が約70~80%を占める)、これを睡眠周期といいます。では、「脳も身体も眠っている」状態のノンレム睡眠のみが続けば身体に良いのかといえばそういうことでもなく、どちらも健康保持に必要です。ノンレム睡眠の中でも出現する脳波の種類によって、ノンレム睡眠の浅い眠りから順に第1期~第4期に分類されます。例えば、ノンレム睡眠の第3段階が除去されると、身体的不快感・感覚異常・自殺志向が現れます。また、眠りの浅さ(レム睡眠状態の長さ)から睡眠障害と診断され、睡眠薬を投与された際、レム睡眠は短縮しますが、連用を中止すると、抑制されたレム睡眠が反動的に増加し、悪夢の出現率が高くなったりします。また、レム睡眠状態が除去されると情緒不安定に陥りやすくなります。

 
●レム睡眠・ノンレム睡眠と睡眠の特徴

 

健康的な生活リズムと正しい睡眠周期を保持するためには

<日中>
・朝、太陽の光を浴びる。
・3度の食事時間を規則的に保つ。
・午後3時以降の昼寝をしない。
<睡眠前>
・カフェインの入ったコーヒー、お茶、コーラや喫煙などは控える。
・部屋の明かりを暗くしたり、温度を調整したり、環境を整える。
・就床前にぬるめの湯にゆっくりつかる、歯を磨く、リラックスできる音楽を聴く、本を読む、日記をつける、あたたかいミルクや白湯を飲む、などの一定習慣(入眠前儀式)を作る。
・入眠前には激しい運動や頭を使う仕事、テレビやスマートフォン・PCを観ること、ゲームなどは避ける。

これらを心がけることで、正しい睡眠周期で質の良い睡眠をとることができます。

以上が質問の回答です。
では、では、「レム睡眠・ノンレム睡眠」に関する国試の過去問を実際に解いてみましょう。

問題

第101回看護師国家試験 午後問題26

レム睡眠について正しいのはどれか。

1. 脳波上徐波を示す。
2. 骨格筋は弛緩する。
3. 心拍数は安定する。
4. 夢はみない。

1. × 脳波上は覚醒しているような、不規則な速波が出現する。
2. ○ 骨格筋は弛緩する。通常はノンレム睡眠で入眠するが、疲労の激しい場合など、まだ意識が残っているうちにレム睡眠に入ってしまうことがあり、全身の筋肉が弛緩しているため、身動きがとれなくなり、いわゆる金縛り状態となる。
3. × 心拍数と呼吸数はともに著しく変動する。
4. × 夢をみることが多い。

正解…2

●「人体の構造と機能」の理解を深めるには
科目別強化トレーニング「人体の構造と機能」

編集部より

NHK放送文化研究所が1960年から5年ごとに行っている国民生活時間調査(2015年版)によると、国民全体の1日の平均睡眠時間は、平日7時間15分、土曜7時間42分、日曜8時間3分で、1970年以降、平日の睡眠時間は一貫して減少傾向にありましたが、今回の調査では下げ止りました。しかし、これは調査開始の1960年より1時間ほど短くなっており、また、OECD(経済協力開発機構)が2014年に行った国際比較調査のうち、各国の睡眠時間を比較してみると、最も長い南アフリカの9時間22分と比べて、日本人は睡眠時間が8時間未満と、1時間30分以上も短いのです。これは世界主要国29か国中、韓国に次いで2番目に短い睡眠時間です。
必要な睡眠時間は人それぞれですが、日々の疲れがとれるよう、質の良い睡眠時間を過ごせるようにしましょう!