今回頂いた質問
在宅中心静脈栄養法の皮下埋め込み式ポート(リザーバー)だと、カテーテル管理が楽だと言われていますが、体外式の中心静脈栄養法に比べてどのような点が利用しやすいのでしょうか?
在宅中心静脈栄養法(HPN)とは、入院時に栄養・水分補給のために用いられる中心静脈栄養法(IVH)を自宅でも使用できるようにし、療養生活の継続を可能にしたものです。これにより療養者のQOLの向上も期待できます。
在宅中心静脈栄養法には、体外式カテーテルと皮下埋め込み式カテーテルの2種類がありますが、皮下埋め込み式の方が、ポート(リザーバー)を皮下に埋め込んでしまいますので、穿刺針をはずした状態であれば見た目も目立たないので、入浴や水泳なども気軽に楽しむことができます。
ただし、双方ともメリットとデメリットを持っていますので、療養者の状況にあった方式を選択することが必要になってきます。 カテーテルの挿入や抜去は医療機関で行われるため、その際の身体侵襲性にも違いが出てきます。子どもへの適応では、年少児や体格の小さな児には「体外式」、ある程度の体格、自己管理の可能な年長児には「皮下埋め込み式」が使用されることが多いようです。
体外式カテーテル
メリット
1. 輸液の交換、接続時に痛みを伴わない。
2. カテーテルの感染や閉塞が起こらなければ、長期間、留置状態を保たせることが可能。
3. 最初の留置手術も、感染や閉塞を起こした際にカテーテルを抜去する手術も、皮下埋め込み式に比べると大がかりではない。
デメリット
1. カテーテルが外見上目立つ。
2. 入浴時のカテーテルの保護や定期的なガーゼ交換が必要。
3. 保護テープやガーゼ固定のテープなどでかぶれを起こす。
皮下埋め込み式カテーテル
メリット
1. ポート(リザーバー)を皮下に埋め込んでしまうので、穿刺針を抜いた状態では体外露出部がなく、一般の皮膚と変わらず外見上目立ちにくい。
2. 入浴時のカテーテルの保護や定期的なガーゼ交換が不要。
3. テープかぶれや輸液漏れが少なく、皮膚のトラブルは起こりにくい。
デメリット
1. 輸液の針刺しの際、痛みを伴う。
2. ポート(リザーバー)のシリコンゴムに寿命(22G〈ゲージ〉のヒューバー針で万遍なく穿刺した場合に約2,000回程度)があり、感染や閉塞してなくても入れ替え手術が必要になる。
3. 留置手術も、カテーテル閉塞や感染の抜去手術でも、手術が大がかりとなる。
4. 脂肪が薄いとポートの分皮膚が薄くなり、皮膚壊疽を起こす。
これらのメリット&デメリットについて、きちんと覚えておくことが重要です。
では、国家試験で出題された在宅中心静脈栄養法に関する問題を解いてみましょう。
問題
第102回 看護師国家試験 午前問題60
Aさんは在宅療養をしており、皮下埋め込み式ポートから高カロリー輸液を間欠的に注入している。
訪問看護師がAさんに行う日常生活の指導内容として適切なのはどれか。
1.穿刺針の固定は不要である。
2.抜針した当日の入浴はできない。
3.穿刺針は一般廃棄物として処理する。
4.刺入部の発赤を認めた場合は訪問看護師に連絡する。
2.× 抜針後1~2時間、保護テープをはがした後であれば入浴は可能である。
3.× 原則として、穿刺針は医療廃棄物として医療機関に戻す。ビンや缶などに入れると針刺し事故を防ぐことができる。
4.○ カテーテル刺入部が赤い・痛い・腫れているなどの症状がある場合、カテーテル刺入部の感染が考えられるので、訪問看護師に連絡し、医師の指示をあおぐ必要がある。
答え…4
編集部より
最近では、在宅中心静脈栄養法(HPN)は、水分・栄養補給以外に、抗がん剤・薬剤などの投与や在宅ターミナルケアでの疼痛除去にも使われ、需要が広がっています。使いやすさと安全性を重視した輸液セット・輸液ポンプなどの開発も進められる中で、女性の皮下脂肪の厚さを利用して、上腕外側にポートを埋め込み隆起をさらに目立たなくすることも可能になってきたとか。いかにQOLを保ち、闘病へのモチベーションを高めていくかが、在宅療養が主体となってきた現代医療の目指すところでもあるのでしょう。