今回頂いた質問

『胸骨圧迫』と『心臓マッサージ』って何が違うのでしょうか?

ご質問ありがとうございます。
結論から言いますと、「胸骨圧迫」と「心臓マッサージ」はほとんど同義語と捉えて頂いて大丈夫です。ただ、「心臓マッサージ」の方は外科的処置による開胸手術内で行われる、止まった心臓を、直接手で圧縮する方法もそう呼ばれています(この場合の心臓マッサージは通常、外傷性心停止や出血性ショックの手術内で行われることが多いです)。一次救命で行われる処置においては「胸骨圧迫」と「心臓マッサージ」の呼び方によって行為や定義の違いはありません
しかし、近年は「胸骨圧迫」の方が多く通用されており、厚生労働省(日本救急医療財団)より公開されている最新の「救急蘇生法の指針2015・市民用(PDF形式)」の中でも「胸骨圧迫」の表記で統一されています。また近年、看護師国家試験でも「胸骨圧迫」の方が多く使用され始めています。

胸骨圧迫の手順

1)圧迫部位の位置を定めます。
胸の左右の真ん中に「胸骨」と呼ばれる縦長の平らな骨があります。圧迫するのはこの骨の下半分です。この場所を探すには、胸の真まん中(左右の真ん中で、かつ、上下の真ん中)を目安にします。

2)胸骨の下半分に一方の手のひらの基部(手掌基部)を当て、その手の上にもう一方の手を重ねて置きます。
 重ねた手の指を組むとよいでしょう。圧迫は手のひら全体で行うのではなく、手のひらの基部(手掌基部)だけに力が加わるようにしてください。指や手のひら全体に力が加わって肋骨が圧迫されるのは好ましくありません。垂直に体重が加わるよう両肘をまっすぐに伸ばし、圧迫部位(自分の手のひら)の真上に肩がくるような姿勢をとります。

3)傷病者の胸が約5cm沈み込むように強く、速く圧迫を繰り返します。
強さが足りないと十分な効果が得られないので、しっかり圧迫して下さい。小児では胸の厚さの約1/3沈み込む程度に圧迫します。成人でも小児でも、こわごわと圧迫したのでは深さが足りずに十分な効果が得られません。強く、速く圧迫しつづけるように心がけましょう。ただし、相手の体が小さく、両手では強すぎる場合は片手で行います。
 圧迫のテンポは1 分間に100~120 回です。胸骨圧迫は可能な限り中断せずに、絶え間なく行います。

 

以上が質問の回答です。
では、関連する国試の過去問を実際に解いてみましょう。

問題

第106回 看護師国家試験 午後問題24

一次救命処置時の成人への胸骨圧迫の深さで適切なのはどれか。

1. 2~3cm
2. 5~6cm
3. 8~9cm
4. 11~12cm

救助者は平均的な成人に対して5㎝以上の深さまで胸骨圧迫を行うべきであるが、過度に深く(6㎝超)なってしまうと合併用の恐れがあるため、超えないようにする。(「心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2015(PDF形式)」より)

正解…2

●「基礎看護学」の理解を深めるには
科目別強化トレーニング「基礎看護学」

編集部より

「胸骨圧迫」と「心臓マッサージ」どちらも同じぐらいよく耳にしますね。お医者さんたちや学校の先生の中でも特に統一がされておらず、それぞれの好みやそれまでの馴染みの言い方で呼んでいるそうです。実際、国家試験でもまだ混在しています。ただ、一次救命で行う処置は同じなので、みなさんしっかり覚えておきましょう!