今回頂いた質問

在宅実習で、老老介護のご家庭を受け持つことになりました。訪問看護ステーションから得られた事前情報のなかで気になったのが、要介護者(ご主人)は大柄、片麻痺があって、室内でも車いすを使っているとのことです。介護をされる奥様の負担が大きいのでは、と想定したのですが、何か負担を軽減する方法がありますか?

ご質問ありがとうございます。
在宅療養者は年々増えており、地域包括ケアシステムが本格的に稼働する2025年には、29万人になるとも言われています。ここでは、在宅療養の現状、今回の事例などについて、説明してきます。

在宅療養者の現状

少子高齢化が進み、今回実習で関わる事例のように、老老介護の家庭も増えています。主な介護者が70歳以上の割合は38.4%ともいわれ、在宅医療を必要とする者も2025年には29万人にもなると言われています。(厚生労働省 平成28年国民生活基礎調査の概況)
在宅医療においても、療養者の自己決定がまず中心にあるのはもちろんですが、病院や施設との違いは、普段療養者を支える家族の支援状況もより考慮して、環境整備を行う必要があることです。その中では、介護者の健康状態も重要なカギとなります。

 

今回の事例

本事例の要介護者の現状と介護者の妻の現状を考えると、長期的に在宅で療養するためには、介護者の負担を軽減するサービス導入を検討する必要があります。特に移乗のタイミングは、転倒などの事故も起こりやすいため注意しなければなりません。移乗しやすくなるための道具や、室内がバリアフリーになっているか、車椅子の座席に褥瘡予防の体圧分散クッションを利用しているか、清潔ケアは誰がどのタイミングで行っているかなど、実際の日常生活を想像していくと、対象者とその家族にとって、より必要と思われるサービスが思い浮びやすくなりますよ!
 

介護用品が合ってない?

実際にあった事例ですが、電動ベッドを導入して一週間、リモコンで背もたれの上げ下げができることは理解し使用していましたが、ベッドの高さ自体が変わることを知らないまま使っていました。高い方から低い方へ移動する方が楽に移動できるため、ベッド→車椅子、車椅子→ベッドの移動の際にベッドの高さを変えるだけでも介護負担はグッと軽減されます。
介護用品は、本当にたくさんの種類があります。分厚い冊子を渡されても、療養者やご家族は「今、何が必要なのか」を簡単には自己決定できません。どんなに優れた介護用品であってもその人に合っていなければ、ときに事故を招きます。また正しい使用方法でなければ、同様に事故を招くことも。きちんと理解し、使うことができているかまで見守る必要があります

以上が質問の回答です。
では、「在宅療養時の介護者の負担軽減」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第108回看護師国家試験 午前問題72

Aさん(77歳、男性)は、脳梗塞による左片麻痺があり、右ひざの痛みにより立位が困難である。端坐位で臀部をわずかに持ち上げることはできる。妻(77歳)は小柄で、体格差のある夫の移乗の介助に負担を感じている。
Aさんのベッドから車椅子への移乗の際、妻の介護負担を軽減する福祉用具で適切なのはどれか。

1. 歩行器
2. ベッド柵
3. 電動介助リフト
4. トランスファーボード

1.× 腰や膝にかかる負担を軽減し、歩行姿勢を整えます。片麻痺のある方も使用することはありますが、立位がとれることが前提となります。
2.× Aさんの場合、立位困難であるため柵があるだけでは、移乗の際の支えにはなりません。
3.× 設備や金銭的な面からも、一般的な家庭では設置が難しいケースがあります。
4.○ ある程度座位を保つことが出来る、立位が困難な方でも持ち上げることなく移乗出来るので介助量が軽減できます。
正解…4

●上記福祉用具のイメージ

1.歩行器

2.ベッド柵

3. 電動介助リフト

4.トランスファーボード

●在宅看護論ついて理解を深めるには、科目別強化トレーニング「在宅看護論」

編集部より

国の政策でも在宅医療は推進されており、今後訪問看護師の役割は大きくなってきます。国家試験においても、訪問看護ステーションの制度、在宅医療を受ける人の人権擁護、他職種との連携、在宅医療の高度化に伴う問題など、さまざまな視点で問われることが増えてくるでしょう。在宅実習で見聞きしたことを、ぜひ国試対策につなげていってください。