今回頂いた質問

老年実習が控えています。これまでの実習でも高齢者の患者さんを受け持つことはあったのですが、基本的なヒアリングが終わると、患者さんと何を話せばいいのか全くわかりません(汗)。沈黙が続くことが多く、とても気まずい思いをしました。沈黙が怖いです!
どうしたらいいでしょうか?

ご質問ありがとうございます。
入院患者さんの高齢化も進み、老年看護学実習以外でも高齢者の患者さんを受け持つ機会は増えていると思います。
そんなとき思い出してほしいのが実習前にクリアしてきた学内での学びです。つい、学内での学習と実習は切り離して考えがちですが、相手を理解するためには必要です。例えば老年期の身体的・心理的・社会的特徴。

このように加齢とともに心身機能の衰退はある程度は避けられません。患者さんは入院により今までの生活が変化し、きっかけとなった病気が寛解したとしても、入院前よりADLが低下するなど、自尊心が障害されることや、悩むこともあります。そのような中で、私たち看護職は、コミュニケーションをとる際には、今まで生きてきた患者さんの「今」とともに、後ろにある「見えない今まで」を尊重する姿勢が大切です。
 

具体的には・・・・・・

具体的には、患者さんの出身地や飾っているものなどから、患者さんが大切にしているものや思いを聞くなどです。あくまで積極的傾聴の姿勢を忘れずに。「沈黙が怖い。」とカンファレンスで話す人もいますが、沈黙の時間もコミュニケーションの一つです。正面に向かい合うと沈黙もお互いの緊張を生み出しやすいので、そんなときはベッドサイド近くに椅子をおかせていただき、お互いに並び合うような位置になるのも一つの工夫です。

 

こんな事例も・・・・・・

実際にあった事例を紹介します。入院後夜間せん妄もあり、点滴を自己抜去したり治療に対しても協力が得られない患者さんがいました。少しでも気分転換してもらおうと渡した雑誌の後ろに、患者さんが書いた詩のようなものから、受け持ちの看護学生は、その患者さんは書道が得意で、手紙を書くのが大好きなことに気づきました。白紙の紙とマジックを渡すと、看護学生や病棟スタッフに対して手紙を書き、精神的にも落ち着いてきたのです。
そこから学生もコミュニケーションをとれるようになりました。カンファレンスで話し合った際に、受け持ちの看護学生からは、「結果的にはよいコミュンケーションがとれたけれど、視力低下もあったし、はじめに渡した雑誌は不適切であったかも。」という意見もありました。
このように加齢に伴う一般的な特徴は前提としてとらえて、その人個人を尊重する姿勢が大切だと思います。

以上が質問の回答です。
では、「高齢患者とのコミュニケーション」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第108回看護師国家試験 午前問題53

高齢者に対する生活史の聴き方で適切なのはどれか。

1. 認知機能の評価尺度を用いる。
2. 事実と異なる聴取内容を訂正する。
3. 話を聞く前に文書による同意を得る。
4. 高齢者が話しやすい時代の思い出から聞く。

1.× 一般的にMMSE(ミニメンタルストレス検査:30点満点で24点以下で認知症の疑いがある)、HDS-R(長谷川式認知スケール:30点満点で認知症である疑いがある)があります。専門の医師や臨床心理士が行うケースが多く、安易に行うべきではなく、生活史聴取とは関係ありません。認知機能評価の詳細については、コチラ をご覧ください。
2.× あくまで大切なのは積極的に相手の話を傾聴する姿勢です。
3.× 話を聞く前に文書で同意を得る必要はありませんが、知り得た情報は守秘義務にあたることは忘れずに。
4.○ 先程も記載しましたが、相手が話しやすい話題をきっかけにすると、自分も相手も緊張することも少なく聞き取ることができます。

正解…4

●患者さんとのコミュニケーションについて理解を深めるには
・実習時のコミュニケーションについて(コチラ
・老人性難聴を持つ患者さんとのコミュニケーションについて(コチラ

編集部より

患者さんにとっては、入院している時間は長い間続いてきた人生の一部。わかってはいても、どうしても目の前の患者さんの看護問題ばかりに目がいき、老年看護では「衰退した機能」「失っている社会的役割」にとらわれがちです。でも、患者さんの今までを尊重するには?と考えると、患者さんを理解し、よりよいコミュニケーションがとれると思います。