今回頂いた質問
110回の国試で、血圧を上昇させるホルモンに関する出題がありました。
ホルモン苦手です。「ここは必須!!」というポイントを教えてください。
ご質問ありがとうございます。
1.そもそも「ホルモン」とは?
「ホルモン」とは、内分泌臓器から体液中に分泌される化学物質で、標的臓器まで流れて行ってそこで効果を発揮します。ホルモンの主な役割は「常性の維持(体内の環境を一定に保つこと)」です。
内部環境が一定かどうかは、体中の監視装置(受容体)によって中枢に伝えられます。血圧に関しては、受容体が頸動脈や大動脈弓、腎臓、心臓などにあり、常に血圧情報を監視し、中枢に情報を届けています。
2.血圧の調整
血圧は下がりすぎると、全身に血液が送れず、一部の臓器にしか血液が送れなくなってしまいます。かといって高すぎると、血管が破れてしまいます。いつもちょうどよい範囲に調整していかなければなりません。では、どうやって血圧を調節しているのでしょうか。
上記は、血圧が(1)心拍出量と(2)末梢血管抵抗血圧で規定されるという式です。このうち(1)の心拍出量は、A.心臓のはたらき(心拍数や心収縮力)とB.循環血液量の2つで規定されます。(2)の末梢血管抵抗は、C.末梢血管収縮と理解するとわかりやすいでしょう。
以上をまとめると、「血圧は、A.心臓、B.循環血液量、C.末梢血管収縮によって調節されている」のです。
3.血圧を上昇させるホルモン
血圧を上昇させるホルモンは、血圧が低下している時に分泌されます。
1)抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)
血圧の低下に反応して、下垂体後葉から分泌されます。尿細管で水を再吸収し(血管内に戻し)、循環血液量(B)を増やして血圧を上げます。
2)レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系
血圧の低下を腎臓が感知し、レニンを分泌し、肝臓のアンギオテンシンⅡが活性化されます。アンギオテンシンⅡは末梢血管を収縮し(C)、副腎皮質ホルモンのアルドステロンの分泌を促します。アルドステロンは、腎臓の尿細管で、ナトリウムと水の再吸収を促進し、循環血液量を増加させます(B)。
4.血圧を低下させるホルモン
血圧を低下させるホルモンは、血圧が上昇している時に分泌されます。
1)心房性ナトリウムペプチド
血液が多くて、心房内の圧力が上昇すると、心房から分泌され、利尿を促進し、循環血液量を減少させます(B)。
以上が質問の回答です。
では、「血圧を上昇させるホルモン」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。
問題
第110回看護師国家試験 午後問題83
血圧を上昇させるのはどれか。2つ選べ。
1. セロトニン
2. ヒスタミン
3. バソプレシン
4. ブラジキニン
5. 心房性ナトリウムペプチド
2.× ヒスタミンは肥満細胞に蓄えられている化学物質で、刺激に応じて放出され、アレルギー反応を起こす。
3.○ バソプレシンは、血圧低下に反応して下垂体後葉から分泌されるホルモンで、腎臓で水を再吸収し、血液量を増加させて血圧を高める。
4.× ブラジキニンは、障害を受けたり炎症を生じている組織で分泌される化学物質で、血管を広げて白血球の遊走を促したり、知覚神経終末を刺激して痛みを生じさせる。
5. × 心房性ナトリウムペプチドは、心房内の圧力の上昇した際に、心房から分泌され、腎臓での利尿を促し血圧を低下させる。
正解…1・3
●人体の構造と機能について理解を深めるには、科目別強化トレーニング
編集部より
血圧調節に関わるのは、ホルモンだけでなく、自律神経の影響もあります。自律神経はホルモンよりも迅速に心臓と末梢血管に作用し、血圧を調整します。少し複雑かもしれませんが、血圧調節は生命に関わる重要なしくみなので、例題を繰り返し解いて、しくみの全容を把握するようにしましょう。