今回頂いた質問

カンガルーケアとは何ですか?母性看護学実習で分娩見学する予定ですが、指導者から質問されました。見たことがないのでイメージがつきません。

カンガルーケアは、子どもをお母さんが胸に抱いて育てるカンガルーの姿から名づけられました。もともとは1979年に、コロンビアで始められました。当時、保育器が不足していた地域で、小さく生まれた赤ちゃんを育てるために取り入れられました。

具体的な方法としては、分娩直後の赤ちゃんを、羊水などを拭き取り、へその緒を切断した後(施設によっては切断せずにそのまま)にうつぶせの姿勢で、衣類の胸元を開いたお母さんの胸の上に抱き、直接肌と肌を密着させます。そのままの状態で分娩直後から、約2時間ほどお母さんは赤ちゃんの、赤ちゃんはお母さんのぬくもりや鼓動を感じながら過ごします。

このカンガルーケアはお母さんだけでなく、お父さんにも有効です。分娩直後だけでなく、お産後いつでも行えます。NICUに入院中の児に面会する際や、帝王切開直後にも行われます。

カンガルーケアの代表的な利点を押さえておきましょう。

・お母さんの正常細菌叢が児に移行し、雑菌に対する皮膚バリアの形成が促される。
・皮膚が密着することで、児の保温ができる。
・早期に母乳栄養が開始でき、母乳栄養確立が促される。
・母児の愛着形成が促される。
・児が安心し、児の啼泣が少なくなり、呼吸が安定する。

カンガルーケアを実施する際、体温管理、呼吸状態には十分に注意する必要があります。
ほとんどの施設では、分娩台の上で行われるため、お産後の疲労からウトウトしてしまう
お母さんもいるので、転落防止対策も必要です。

回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第98回 看護師国家試験 午前問題115

在胎40週5日で出生した新生児。出生時体重2,900g。アプガースコア1分後9点、5分後10点であった。分娩所要時間12時間30分、分娩時出血量は280g。母親は母乳育児を希望している。母親の希望で、出生直後に新生児を母親の胸に直接抱かせた。
このときの新生児への効果でないのはどれか。

1.啼泣を増強させる。
2.体温低下を防止する。
3.母子の絆形成を促進する。
4.母親由来の正常細菌叢の定着を促進する。

1.×
2.
3.
4.

正解は… 1

編集部より

カンガルーケアは、早産児にNICU(新生児集中治療室)で行われ、早期母子接触は正期産新生児に行われるケア。急激な体温低下などの事故が報告されており、呼吸状態が安定するまで、サチュレーションモニターを常時装着している施設も多いよ。