今回頂いた質問

111回の国試で、ルービンの母親役割獲得過程に関する出題がありました。具体的にはどのような過程をたどるのでしょうか。教えてください。

ご質問ありがとうございます。
母親役割獲得過程とは、女性が妊娠・出産をとおして母親としての自己を形成し、母親役割についての知識を得たり、技術を習得したりすることによって、母親としての準備を整えるまでの心理体験のことです。

ルービンの概念モデルでは、女性が母親としての役割を獲得するまでに、「模倣」「ロールプレイ」「空想」「取り込み-投影-拒絶」「悲嘆作業」という5段階のプロセスをたどるといわれています。

STEP1.模倣

先輩母親や専門家の行動を母親役割のモデルとし、真似をすることです。
一般的な妊娠中の摂生(過度な飲食をつつしみ、健康に注意すること)を行ったり、母親の真似をするために、先輩母親や専門家の行動を観察したりすることなどを含みます。
(例)友人の出産体験を聞く。看護師が行う児の抱き方を見る。

STEP2.ロールプレイ

自分のお腹にいる子どもや他者の子どもを通して、母親たちが一般的に体験していることを自分も同じように体験することです。
子どもと直接関わる体験だけではなく、子どもに関心を寄せることや、子どもをかわいいと思うこと、子どもとの接触を求めることなどを含みます。
(例)人形で沐浴の練習をする。友人の子どもに話しかける。

STEP3.空想

自分の子どもや自分自身の状況を思い描くことです。
空想には、「こうだといいな」という希望をともなう空想と、「こうだったらどうしよう」という不安をともなうも空想があります。
(例)購入する育児用品を考える。育児についての不安・心配なことを想像する。

STEP4.取り込み-投影-拒絶

空想した行動や態度などを母親役割のモデルとして自分に投影し、それを受け入れるか拒絶するかを吟味することです。
(例)専門家や本から得た情報のなかから、自分に合いそうな情報を取捨選択する。他者の育児の方法をみて、参考にすることとしないことを区別する。

STEP5.悲嘆作業

母親としての自分とは立場が異なる過去の自分について思い起こし、妊娠によってできなくなったことや今度変化すると思われることについて考え、嫌だと思ったりあきらめたりすることです。
(例)妊娠による変化を受け入れられない。出産後の母親役割を受け入れるための気分転換を図る。

 
 
以上が質問の回答です。
では、「ルービンの母親役割獲得過程」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第111回看護師国家試験 午前問題105

Aさん(30歳、初産婦)はX年2月5日に妊婦健康診査のために来院した。(中略)Aさんは「自分の子どもが生まれて、どんなふうにあやすかな、とか、おむつを替えるかなと自分が子育てをしている場面を思い浮かべます」と笑顔で話している。看護師はAさんの様子をルービン ,R. が示した母親役割獲得過程に当てはめてどの段階にあるのかをアセスメントした。
 Aさんのアセスメントで適切なのはどれか。

1. 空 想
2. 模 倣
3. 取り込み
4. ロールプレイ

1.○ Aさんの発言は、これから生まれてくる子どものことを思い描がいているので、空想に該当する。
2.× 模倣とは、先輩母親や専門家の行動を母親役割のモデルとし、真似をすることである。
3.× 取り込みとは、空想した行動や態度などを母親役割のモデルとして自分に投影し、受け入れることである。
4.× ロールプレイとは、自分のお腹にいる子どもや他者の子どもを通して、母親たちが一般的に体験していることを自分も同じように体験することである。
正解…1

●母性看護学について理解を深めるには、科目別強化トレーニング

編集部より

今回はルービンの母親役割獲得過程について解説しました。このほか、ルービンは母親の適応過程を「受容期(産褥1~2日目):子どもに関心を示す」「保持期(産褥3~10日目):積極的に育児のための技術を習得する」「解放期:子どもに合わせて自分の生活を整える」という3段階に分けています。こちらも過去の国試での出題実績がありますので、併せて理解しておきましょう。