今回頂いた質問

赤ちゃんの首がすわるのは、いつごろとするのが正しいのですか。姉の子は生後3か月で首がすわりましたが、教科書には生後4~5か月と書いてあります…。

乳幼児の成長や発達は個人差が大きく、教科書の記載と個人的な体験とでは、違いがあるように感じたことがあるかもしれません。
厚生労働省の「平成22年度(2010年度)乳幼児身体発育調査」によると「首のすわり」ができるようになるのは、生後2~3か月で11.7%、生後3~4か月で63.0%、生後4~5か月で93.8%となっています。こうした「どのくらいの子どもができるようになるか」という割合を「通過率」と呼びます。この通過率が90%を超える時期が「できる」の目安のひとつとなります。
教科書の記載や国家試験の出題は、厚生労働省の各種調査をはじめ、公的機関よる調査・統計情報、医学界の研究結果などをもとにしていますので、参考にしてみてください。

一般調査による乳幼児の運動機能通過率(%)

年月齢首のすわりねがえりひとりすわりはいはいつかまり立ちひとり歩き
2月~3か月未満11.71.1
3~4か月63.014.4
4~5か月93.852.70.50.9
5~6か月98.786.67.75.50.5
6~7か月99.595.833.622.69.0
7~8か月99.268.151.133.6
8~9か月98.086.375.457.41.0
9~10か月96.190.380.54.9
10~11か月97.593.589.611.2
11~12か月98.195.891.635.8
1年0~1月か月未満99.696.997.349.3
1年1~2か月97.296.771.4
1年2~3か月98.999.581.1
1年3~4か月99.492.6
1年4~5か月99.5100.0

(2010年度)

また「首のすわり」は、英語でhead controlというように、首がぐらつかないだけでなく、自分で首を動かせる状態を指します。上記調査でも「乳幼児を仰向けに寝かせ、両手を持って引き起こした時、首が遅れないでついてくる」ことをもって「首のすわりができる」としています。こうした定義づけや調査基準も「できる・できない」の判断が分かれる要因になってきますので、確認してみてください。

乳幼児の成長の指標としては、身体の発育、運動機能の発達のほか、言語機能の発達もよく使われます。これも個人差がたいへん大きく、経験値が参考にならないことも多いかと思われます。

一般調査による乳幼児の言語機能通過率(%)

年月齢単語を言う
7月~8か月未満2.2
8~9か月6.5
9~10か月9.0
10~11か月21.3
11~12か月40.9
1年0~1月か月未満57.6
1年1~2か月69.9
1年2~3か月79.1
1年3~4か月86.1
1年4~5か月88.8
1年5~6か月89.1
1年6~7か月94.7

(2010年度)

意味のある言葉を話せるようになる言語機能通過率が90%を超えるのは1歳半以降です。「周りの子に比べてうちの子は言葉が遅くて…」といった話を耳にすることがありますが、こうした調査結果を知っていると、子どもの発達の遅れを心配している親を安心させてあげられるかもしれませんね。

回答は以上になります。では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

参考サイト 厚生労働省 乳幼児身体発育調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/73-22.html
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001024533

問題

第100回 看護師国家試験 午後問題7

生後6か月児で発達の遅れを疑うのはどれか。

1. 指と人さし指を使って、物をつまむことができない。
2. 意味のある言葉を話すことができない。
3. つかまり立ちができない。
4. 首がすわらない。

1.× 生後3か月を過ぎると手掌把握反射がなくなり、次第に手のひらで随意的に物を握ることができるようになるが、親指と人さし指で物をつまめるようになるのは生後9か月から10か月ころである。
2.× 生後6か月では喃語を発することはできるが、意味のある言葉(有意語)を話すことができるようになるのは1歳前後からで、通過率が90%を超えるのは1歳6か月以降である。
3.× つかまり立ちの通過率が90%を超えるのは生後11か月以降である。
4.○ 首のすわりは生後4か月~5か月で通過率が90%を超える。生後6か月で首がすわっていない場合は発達が遅れている可能性がある。

答え…4

編集部より

自分の子どもや兄弟など周囲の乳幼児の成長は、目の当りにしている分、リアルに記憶に残ります。編集部にも「うちの子は誕生日前にはひとり歩きしてたけど、教科書はずいぶん違うなぁ」と言っているスタッフがいました。乳幼児の成長は個人差が大きいので、それだけに統計情報が重要になってきます。政府機関や官公庁が行った近年の調査結果などは、目を通しておくとよいでしょう。