今回頂いた質問

第105回看護師国家試験で「キャッチアップ現象」という選択肢が出てきました。初めて聞く言葉だったのですがどういう意味ですか?

国家試験の本番で初めての言葉が出てさぞ驚いたことと思います。ここで復習をして覚えてしまいましょう。
まず、キャッチアップ現象の説明の前に、子どもの成長発達の過程の原則をまとめておきます。

子どもの成長発達の原則

1)一定の順序がある。
2)頭部から下部の方向、または身体の中心部から末梢方向へと発達がすすむ。
3)発達の時期や速度は各器官によってさまざまである。
4)個人差がある。
5)臨界期(特定の器官・機能の発達に重要な時期)がある。
6)遺伝的因子に基づく成熟と、経験の結果である学習が、密接に影響しあいながら成長発達していく。

今回のご質問は、上記の3)と5)に関連します。
最初に、各器官によって発達の時期や速さがさまざまであることをおさえておきます。全身の器官を、リンパ型、神経系型、一般型、生殖系型の4つに分類したスキャモンの臓器別発育曲線が有名ですね。

スキャモンの臓器別発育曲線

そして各器官には、特定の器官・機能の発達に重要な臨界期があります。臨界期に起きた環境の変化や刺激は、その後の発達に重要な影響を及ぼします。神経系の発達がすすむ妊娠初期に母親が風疹ウイルスに罹患すると、子どもに障害が生じる可能性が高まるなどが一例です。

しかし、子どもの成長発達の段階では、なんらかの障害が起こっても回復が可能です。臨界期以外の時期に、疾病などの障害があって一時的に成長が妨げられても、その状況が改善されると、体重や身長が急速に追いつきます。これをキャッチアップ現象と呼んでいるのです。

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Q 小児期の成長の評価で使う「パーセンタイル値」について教えてください。

回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第105回看護師国家試験午前問題53

Aちゃん(生後10か月、男児)は、先天性心疾患のため手術を受けた。Aちゃんの体重の変化を図に示す。
手術後から現在までの体重の変化に対する評価で適切なのはどれか。

Aちゃんの体重の変化

1. 体重増加の不良
2. 過度な体重増加
3. 標準的な体重増加
4. キャッチアップ現象

1.× 手術後、50パーセンタイルまで体重が追いついているため不良ではない。
2.× 50パーセンタイルは中央値である。そのため過度な体重増加ではない。
3.× 手術後、急速に体重が増加しているため標準的ではない。
4.○ 正しい。急速に成長が追いつくことをキャッチアップ現象という。

正解…4

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編集部より

看護師国家試験では、小児看護学の成長発達分野は頻出です。カウプ指数やローレル指数など身体発育の評価方法、デンバー式発達スクリーニング検査なども一緒に復習しておきましょう。