今回頂いた質問
110回の国試で、膝関節鏡検査の看護についての出題がありました。筋骨系の検査や手術はあまり習っていないのですが、押さえておいた方がいいポイントを教えて頂けますか。
ご質問ありがとうございます。
1.関節鏡検査とは?
関節鏡検査とは、内視鏡(細い管の先端にライトとレンズがついている)を関節腔内に挿入し、生理食塩水を流しながら関節内を詳細に観察する方法です。観察と同時に切除や縫合など手術もできる利点があります。関節腔内の軟部組織の損傷や病変は、MRIを使用して検査することが多いのですが、MRIでも明瞭な画像が得られないときなどに、この検査が用いられます。
2.関節鏡検査の特徴
骨・関節は無菌状態が保たれており、感染に非常に弱い部位です。そのため、関節鏡検査では、空気が常に浄化がされている手術室で、患者に局所麻酔をかけた状態で行います。また、検査は関節腔に滅菌生理食塩水を還流させながら内視鏡で観察します。滅菌生理食塩水を還流させる目的は、関節内に入り込んだ雑菌を洗い流すためです。
3.関節鏡検査における看護
内視鏡などを挿入するために数か所に5mm程度の皮膚切開を行いますが、身体への侵襲は少ないです。検査後に強い痛みや腫脹などがなければ、歩行の許可が出ます。入浴は、感染予防の観点から、24時間以降とし、創部を密閉した状態でのシャワー浴が許可されます。
●関節の構造
●関節鏡検査
以上が質問の回答です。
では、「膝関節鏡検査」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。
問題
第110回看護師国家試験 午前問題45
膝関節鏡検査の説明として適切なのはどれか。
1. 「外来の処置室で行います」
2. 「関節内に空気を入れます」
3. 「検査後は1日入浴できません」
4. 「検査後に下肢の麻痺がおこることはありません」
2.× 関節腔内に滅菌生理食塩水を還流させた状態で検査を行います。
3.○ 検査後24時間が経過すれば、シャワーを使うことができます。
4.× この検査による頻度が高い合併症は、疼痛や出血による腫脹などです。下肢の麻痺は神経損傷などで生じ、頻度は少ないですが、「ない」とは断言できません。
正解…3
●成人看護学について理解を深めるには、科目別強化トレーニング
編集部より
国家試験で出題頻度が高い内視鏡検査は、上部・下部消化管内視鏡検査や気管支鏡検査でした。手術する部位の解剖生理学的特徴がわかれば、検査前の準備や、検査中の看護は理解しやすいと思います。関節鏡検査は、関節が無菌状態であり、感染すると治療が困難であることを踏まえれば、理解しやすいと思います。