今回頂いた質問

温罨法と冷罨法、それぞれ適した症状、適していない症状について教えてください。

罨法は昔から洋の東西を問わず行われてきた治療の方法であり、看護の方法です。

★治療方法としては、温めたり冷やしたりすることで、血管・筋肉・神経系に働きかけ、病変の治癒過程を促進したり、疼痛の緩和を図ったりします。

★看護の方法としては、神経を刺激して随伴症状を軽減し、患者が心地よく感じることで心身の安楽・安定を図ります。

そのため、医師の指示によって行われるだけではなく、看護師の判断によって行われることもあります。適不適は看護師自身がしっかり覚えておきたいですね。

温罨法
湿罨法温湿布、温パップ、ホットパック
罨法湯たんぽ、かいろ、電気あんか、電気毛布、CMC製品、熱気浴
<温罨法が適した病変>
■局所の慢性炎症
■低体温・悪寒戦慄
■疼痛
■腸蠕動が著しく亢進もしくは低下
■鼓腸(消化管もしくは腹腔内のガス貯留による腹部膨隆)
■腹部や背部・腰部への温罨法は、腸蠕動を促し自然な排ガス・排便を得る効果が期待できる。腰部・背部への温罨法は、自然排尿を促す効果もある
<温罨法が適さない病変>
■末梢の血流障害(酸素需要が増大し、虚血を起こす)
■悪性腫瘍(血流が増加し腫瘍が増大する)
■活動性の炎症(感染症、痛風発作など)
■糖尿病などによる知覚障害(低温熱傷を起こすことがある)
冷罨法
湿罨法冷湿布、冷パップ
罨法氷枕、氷嚢、CMC製品
<冷罨法が適した病変>
■局所の急性炎症
■発熱
<冷罨法が適さない病変>
■レイノー(虚血を起こす)
■神経痛(悪化することがある)
※寒冷刺激によっておこる身体反応として、血管収縮と血流減少、組織代謝の低下がみられる。

では、国家試験で出題された罨法に関する問題を解いてみましょう。

問題

第102回 看護師国家試験 午後問題19

温罨法の作用で正しいのはどれか。

1.平滑筋が緊張する。
2.局所の血管が収縮する。
3.知覚神経の興奮を鎮静する。
4.細胞の新陳代謝を抑制する。

1.× 温熱刺激により平滑筋は弛緩する。
2.× 温熱刺激により皮膚温が上昇し、血管が拡張することで、血液量が増える。
3.○ 温熱刺激により、疼痛刺激の伝達の抑制が期待でき、また、心地よい感覚が副交感神経を優位にし、鎮静の効果を図れる。
4.× 温熱刺激による血流量の増大により、代謝産物の運搬が促進される。

答え…3

編集部より

日常生活でも身体が痛んだり腫れたりしたときには、冷やすべきか温めるべきか判断に迷うことがあります。罨法は、医師の指示ではなく、看護師の判断で行うこともあり、方法を間違えると症状を悪化させることがあるので、禁忌はしっかり覚えておきたいものです。また、心身の安寧を求めて患者自身の希望で行うことも少なくありません。どうすれば不快な気分を緩和し、リラックスしてもらえるかを考え、きめ細かな配慮をすることが求められます。