今回頂いた質問
105回の看護師国家試験に出題された「タイムアウト」という言葉の意味がわかりませんでした。医療安全に関する言葉らしいのですが、どのようなときに使うのか解説をお願いします。
医療現場におけるタイムアウトという言葉は、手術の際に使われます。執刀する直前に、医師や看護師などその場にいるスタッフが一斉に手を止めて、患者、手術法と手術部位の最終確認を行うといった意味になります。
WHOが発行した『安全な手術のためのガイドライン2009』【PDF】に掲載されている「手術安全チェックリスト」には、麻酔導入前のサインイン、皮膚切開前のタイムアウト、患者の手術室退室前のサインアウトという3項目のひとつとして出てきます。
『皮膚切開を行う直前の短い期間(1分以内)に、手術チームの全メンバー(執刀医、麻酔科医、看護師とその他全ての関係者)が、患者が正しい患者であること、予定手術部位と予定手術内容を口頭で確認するものである。チームメンバー同士の明確なコミュニケーションを図り、「部位間違い」や「患者間違い」を防ぐ方法である。』
タイムアウトの具体的な手順は以下のとおりです。
皮膚切開の前にチームメンバー全員(看護師、外科医、麻酔科医、その他の医療スタッフ)が以下について口頭で確認する
● チームメンバー全員の氏名と役割の紹介
● 患者の本人確認、手術部位と術式
● 予想される重大な事象を検討する
・外科医は、重大な術式変更の可能性、手術時間と予想出血量について確認する
・麻酔科医は、患者特有の問題点を確認する
・看護師は、滅菌、器具の準備、その他の問題について確認する
● 予防的抗菌薬投与が皮膚切開前の60分以内に行われているか、または投与が適応でないか確認する
● 患者本人の必要な画像が手術室に提示されているか確認する
日本でも多くの病院で、このタイムアウトは採り入れられています。
医療者間で情報共有と再確認を行うことによって、手術室でのインシデント(ヒヤリ・ハット)の減少につながっています。またWHOの報告では、手術患者の安全改善により、術後合併症発生率、周術期死亡率にも役立っているそうです。
回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。
問題
第105回看護師国家試験 午前問題64
医療安全と関連する方法の組合せで誤っているのはどれか。
1. 院内感染対策―――――プライマリーナーシング
2. 事故防止対策―――――インシデントレポート
3. 医療の質の保証――――クリニカルパス
4. 手術時の安全対策―――タイムアウト
2. ○ インシデントレポートは、患者に障害を及ぼすことはなかったが、診療の現場でのヒヤリ・ハットの事例に関する報告書をさす。目的は当事者 の責任追及ではなく、事故の再発予防である。
3. ○ クリニカルパスは、患者の入院中と退院後の臨床経過、そこで提供される検査、治療、看護をまとめた総合的なケア計画である。クリニカルパス の導入により、患者は見通しをもって入院し、スムーズな退院指導を受けることができる。
4. ○ タイムアウトは、執刀する直前に、その場にいるスタッフ間で情報共有と最終確認を行うことである。
正解…1
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編集部より
医療の世界では日々、新しい言葉が生まれています。国家試験でも、現場の動向に合わせて新しい言葉が出題される傾向があります。わからない言葉が出てきたら、すぐに調べるクセをつけておくと点数アップにつながります。