今回頂いた質問
抗原提示をするのは、マクロファージや単球だけだと思っていたのですが、ネットで調べていたらB細胞も抗原提示すると書いてありました。私の学校で使っている教科書や参考書には、B細胞の主な役割として抗体産生しか載っていませんでしたが、B細胞の抗原提示については勉強しなくても良いということでしょうか?
ご質問にあるとおり、抗原提示ができるのは樹状細胞、マクロファージ、単球、B細胞です。
B細胞はT細胞と並んで、免疫の要であり、多才な機能をもっているかなり「ハイスペック」な細胞であると考えられます。
スペックその1★抗体を産生し、形質細胞に化ける(分化する)
スペックその2★抗原提示ができる
スペックその3★産生された抗体の情報がメモリーB細胞として記憶される
このように、B細胞には多くの機能があるので、教科書や参考書では、分かりやすくするためにも強調したい機能に絞って掲載し、B細胞に抗原提示の役割があると書かれていなかったのかもしれませんね。看護師国家試験の過去問を見ても、B細胞が分化した形質細胞の機能として「抗体の産生」を正解とする問題が出題されているので(下記の国家試験問題と解説をご参照ください)、上記のスペックで言うと「スペックその1」にポイントを絞っているのではないかと思われます。
抗原提示能についてですが、細胞によって抗原提示ができる、できないの差は表面の蛋白質にあります。
抗原提示能の鍵はタンパク質の「MHCクラス2」!
好中球は、貪食は可能ですが、抗原提示はできません。逆にB細胞は、抗原提示は可能ですが貪食はできません。(【表1】参照)
その理由としては、抗原提示ができる樹状細胞、マクロファージ、単球、B細胞の表面にはMHCクラス2と呼ばれる蛋白質があり、このMHCクラス2を介してT細胞に抗原提示が行われるためです。好中球の表面にはMHCクラス2が存在せず、抗原提示することができません。
【表1】
樹状細胞、単球、マクロファージ | B細胞 | 好中球 | |
---|---|---|---|
貪食能 | ○ | × | ○ |
抗原提示能 | ○ | ○ | × |
(MHCクラス1は全ての細胞にあるが、クラス2は抗原提示ができる細胞にのみある)
ただ、「MHCクラス2」について、看護師国家試験で問われることはまずないと思いますので、「ふーん、そうなんだあ」くらいに覚えておく程度で大丈夫だと思います。
では、国家試験で出題された「抗原提示」「抗体産生」に関する問題を解いてみましょう。
問題
第100回 看護師国家試験 午後問題26
免疫担当細胞とその機能の組合せで正しいのはどれか。
1.好中球 ――――― 抗原の提示
2.肥満細胞 ―――― 補体の活性化
3.形質細胞 ―――― 抗体の産生
4.ヘルパーT細胞 ―― 貪食
2.× 肥満細胞はヒスタミンなどを放出し、Ⅰ型アレルギーに関与する。
3.○ B細胞がヘルパーT細胞の刺激を受けて分化したもので、抗体を産生する。
4.× ヘルパーT細胞には抗原提示はない。抗体産生を誘導したり、他の免疫細胞を活性化させる。
答え…3
編集部より
免疫系の細胞は種類が多く、どの細胞がどんな役割を持っているか混乱しそうになりますが、そんな時は細胞同士の関係を図や絵にして書いてみてはいかがでしょうか。相互作用や役割を矢印で描いて分類、整理するとすっきり理解できると思います。