今回頂いた質問

胃がんで余命3か月と宣告された患者様を、実習で受け持っています。余命宣告の後、奥様が取り乱してしまい、「私はこれからどうしたらいいの?」と泣き崩れてしまいました。どう接したらよいのでしょうか? どのように声をかけるべきか、とても悩んでいます。

終末期の看護は、死にゆく療養者だけでなく、その家族の支援も重要です。

なぜなら、予期悲嘆(愛する人の死期を知り悲しむこと)のほか、経済的問題、心理的葛藤など家族の感情も大きく揺れ動きやすいからです。

予期悲嘆の基本としては、
・家族が耐えられる範囲での情報を、家族と共に共有する。
・家族の感情表出を傾聴し、共感する。
ことが大切だといわれています。

療養者やその家族が、死期を知ったことで取り乱したり、泣き崩れたりすることは、ごく自然なことです。湧き起こる様々な感情を受け止めつつ、療養者やその家族が少しずつ死を受け止めていけるよう、見守り続けることも、看護師の重要な役割です。

回答は以上になります。
では、国家試験問題を実際に解いてみましょう。

問題

第97回 看護師国家試験 午前問題87

ターミナル期にある療養者の家族に対する予期的悲嘆への援助で適切なのはどれか。
1.混乱している時は積極的に励ます。
2.予想される身体的変化は説明しない。
3.感情を表出することがよいと伝える。
4.最後の別れには触れないようにする。

1.× 積極的な励ましは、かえって家族の感情を否定する要因になることがある。
2.× 今後予想される身体的変化をあらかじめ知っておくことで、何らかの変化が起きた時にも落ち着いて受け止められることがある。
3. 感情表出を許すことは、患者の死を受け止めるために最も重要であり、必要なことである。
4.× 家族にとって最も重要なのは、「患者の死」という現実を受け止めること。最後の別れについても、様子を伺いながら少しずつ触れていくことが大切です。また、家族から「患者の死」に触れるような話題があった場合も、傾聴し共感していくとよいでしょう。

正解は… 3

編集部より

余命宣告を受けた患者さんやその家族は、次々に湧き起こる感情の波に襲われることがありますが、現実では看護師の前で感情を表出する人というのは意外と少なく、むしろ普段と変わらない平然さを装う人の方が多いものです。看護師は、患者さんやその家族の感情表出を促し、ともに悲しんだり、考えたりしながら、患者さんの死後は、家族が現実を受け止められるような関わりをもつことが大切です。