今回頂いた質問
糖尿病の人は感染を起こしやすいと言いますが、なぜ感染を起こしやすいのでしょうか?
ご質問ありがとうございました。
糖尿病は生活習慣病で、合併症が多く、易感染性が特徴ですね。その中でも、感染は全ての糖尿病合併症の症状に付き物といっても過言ではありません。
その感染についてのメカニズムを考えてみましょう。
・インスリン欠乏状態では好中球の解糖系が抑制され、エネルギー不足のために機能障害が生じ、貪食機能低下・殺菌機能低下を起こす。
・糖尿病による末梢血管症があれば、末梢血流が減少し、組織は低酸素状態に陥り、高血糖と相まって嫌気性菌や好気性菌が繁殖すると言われていますが、依然不明な点は多いと言われています。
呼吸器系
上気道感染・気管支炎→重篤になると肺炎に至る
皮膚科系
白癬菌症、カンジダ症→足の虚血があれば難治性潰瘍に進行するおそれもある
尿路感染症
膀胱炎・腎盂腎炎
口腔内感染症
歯周病
このように、感染を起こすと重篤な状態につながっていくことが多いので、感染症に合わせて予防ケアをきっちりしていくことを生活指導として取り組まなければなりませんね。
国家試験では、糖尿病関連の問題も多く出題されています。近年の傾向として、1型糖尿病か2型糖尿病かをきちんと問うてきますので、それぞれの特徴をつかんでおくとよいでしょう。
1型糖尿病:膵臓のβ細胞が壊れてしまい、まったくインスリンが分泌されなくなってしまう1型糖尿病。インスリンを体外から補給しないと生命に関わるため、インスリン注射を欠かしてはなりません。
2型糖尿病:遺伝的に糖尿病になりやすい人が、肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに発病します。インスリンの効果が出にくくなったり、分泌のタイミングが悪くなったりします。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。
問題
第100回 看護師国家試験 午後問題88
2型糖尿病の患者の胃全摘術後における管理で適切なのはどれか。2つ選べ。
1. 血糖値が安定するまでは、2~6時間ごとに血糖を測定する。
2. 1日1回ドレーンの排液の糖濃度を測定する。
3. 創の発赤を認めたら創感染を疑う。
4. 術後2日目に腸蠕動の低下を認めたら腸閉塞を疑う。
5. 排ガスが認められた日から全粥食(1,600kcal)摂取が可能になる。
2.× 術後管理として、ドレーン排液の糖濃度はそれほど重要ではない。
3.○ 創の発赤は感染の疑いがある。糖尿病患者では術後感染に注意する。
4.× 胃全摘術後2日目に腸蠕動が回復しないことも多い。すぐに腸閉塞を疑うということはない。
5.× 排ガス直後に全粥食の摂取は難しい。
正解は… 1・3
編集部より
「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」は三大合併症といわれ、それぞれに看護対応や禁忌が異なっています。この合併症の特徴をおさえておくと、看護の方法が自然と理解できて、国家試験でもスムーズに解答できますよ。