今回は、「成人看護学」についてです。

成人看護学は、一般問題だけでなく状況設定問題でも出題がありますし、出題範囲自体も幅広い印象がありますよね。苦手科目として挙がることも多い科目です。
とはいえ、ここ数年の成人看護学は、比較的点数を取りやすい問題が多くなっています。過去問を使いながら、傾向をしっかり押さえておくことが、一番の対策につながると言えそうです。

では、具体的にはどのように攻略していけばよいでしょうか?

成人看護学の攻略の攻略ポイントは?

成人看護学の攻略ポイントは、これだ!

1)過去問題を丁寧に学習していこう!
2)代表的な疾患の生活指導は、ガイドラインを参考にしたい。
3)状況設定問題は、検査データの解析が重要!

 

1)過去問題を丁寧に学習していこう! について

出題基準を見るとわかるように、成人看護学の出題範囲は膨大です。それを一つひとつあたっているのは効率が悪いので、やはりここでも過去問を有効活用していきましょう。すでに何度か説明していますが、過去問を使う意義は、
1)数年分の過去問をやることで、頻出テーマを知る。
2)ひとつ1つのテーマに対して、どこまで深堀りすればいいのかを知る。
の2つです。
これは、成人看護学においても同様です。

過去問を見ていきましょう。

第112回 AM44 
ムーア,F. D.が提唱した外科的侵襲を受けた患者の生体反応で正しいのはどれか。
1.傷害期では尿量が増加する。
2.転換期では循環血液量が増加する。
3.筋力回復期では蛋白の分解が進む。
4.脂肪蓄積期では活動性が低下する。
答え:2

1.× 傷害相では、尿量が減少します。
2.○ 転換期には、ADHやアルドステロンによって体内のサードスペースに貯溜していた水分が体循環系へ戻るため、循環血液量が増加します。
3.× 筋力回復期では、タンパク質の合成が進みます。
4.× 筋タンパク質の合成、体脂肪の合成が進み、活動性が増す時期です。

この問題のテーマである「術後の生体反応」に関する問題は、99回で出題されています。ただし、形式が大きく変化しています。

第99回 AM51
Mooreの提唱した手術後の回復過程の第1相(異化期)の生体反応はどれか。
1. 尿量の増加
2. 血糖値の上昇
3. 脂肪組織の修復
4. 腸蠕動運動の再開

ムーア,F. D. の分類は、手術侵襲に対する生体反応の推移として昔から有名です。ムーアは、手術直後から回復までの期間を第Ⅰ~Ⅳ相の4段階に大別しました。
・第Ⅰ相:傷害期
異化期ともよばれ、手術後から数日間(2~4日間)継続します。神経・内分泌系の反応が中心となる時期です。頻脈、発熱、尿量減少、腸管運動の減弱などがみられます。
・第Ⅱ相:転換期 
異化期(第Ⅰ相)から同化期へ転換していく期間で、手術後3日目前後から1~2日間持続します。第Ⅰ相で生じた神経・内分泌反応は鎮静化に向かい、水・電解質平衡が正常化していく時期です。
・第Ⅲ相:同化期 
筋力回復期ともよばれる時期で、タンパク質代謝が同化傾向(合成傾向)となり、筋タンパク質量が回復します。手術後1週間前後から始まり、手術侵襲の程度にもよりますが 2~5週間持続します。食欲が回復し、排便も正常化します。内分泌バランスもほぼ正常状態に戻り、創傷治癒が促進されます。
・第Ⅳ相:脂肪蓄積期 
術後数か月継続します。筋タンパク質の合成が進み、脂肪が蓄積されていく時期になります。

過去問をやった時にただ正解を覚えるのではなく、こうやって過去問を深掘りして、知識を広げていってくださいね。それをすることで、今回のように出題形式が変わっていても対応できるようになるのです。
 

2)代表的な疾患の生活指導は、ガイドラインを参考にしたい。 について

上記1)に沿って、「過去問やりました、×選択肢も吟味しました」までできたら、次の段階です。周辺知識を広げる、と書きましたが、具体的に何をするのかというと、生活指導に関するガイドラインを確認しておきましょう。

過去問を見てみましょう。

第111回 PM45
高尿酸血症で正しいのはどれか。
1.痛風結節は疼痛を伴う。
2.痛風発作は飲酒で誘発される。
3.痛風による関節炎の急性期に尿酸降下薬を投与する。
4.血清尿酸値9.0mg / dL以下を目標にコントロールする。
答え:2

1.× 痛風結節には疼痛がありません。長期間、高尿酸血症だと手足の指先や関節、肘膝関節、アキレス腱や耳などに尿酸塩結晶がたまって腫れた状態のものをさします。関節炎とは別のものです。
2.○ アルコールの種類に関わらず、飲酒後は尿酸値が上昇します。それにより痛風発作が誘発されます。
3.× 痛風発作中に血清尿酸値を変動させると発作が増悪することが多いため、発作中に尿酸降下薬を用いないことが原則とされています。
4.× 日本痛風・核酸代謝学会による『痛風・高尿酸血症ガイドライン第3版』では、「痛風関節炎を繰り返す症例や痛風結節を認める症例では、薬物療法の適応となり、血清尿酸値を6.0mg/dL以下に維持するのが望ましい」とされています。

成人看護学においては、この問題のように、治療のみならず生活指導に関する問題もよく見受けられます。過去問をやっていると、その生活指導が「古い」「イマドキこれは臨床ではやらない」というケースがあります。こういった判断は、まだみなさんでは難しいこともあるかと思いますので、過去問をやりつつ、生活指導については、インターネット上で最新の各ガイドラインを見ておくことをオススメします。近年はガイドラインも数年おきに新しくなっていますので、最新のものを見ておくこと、看護のポイント(日常生活や職場復帰に関することなど)を押さえておくと、点数につながりやすくなります
 

3)状況設定問題は、検査データの解析が重要! について

状況設定問題においては、対象者の検査データが明示されている問題が多く見受けられます。正解を導くためには、その検査データを見ることによって何がわかるのか、そしてその基準値(正常範囲)を覚えておく必要があります。
過去問を見てみましょう。

第109回 AM91
Aさん(60歳、男性、元建設業)は、妻(57歳)と2人暮らし。2年前に悪性胸膜中皮腫と診断され、化学療法を受けたが効果がみられず、外来通院していた。2週前から、胸痛、息苦しさ、倦怠感が増強したため、症状コントロール目的で入院した。
バイタルサイン:体温36.0℃、呼吸数24/分、脈拍92/分、血圧126/88mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉86~90%(room air)。
身体所見:両側下肺野で呼吸音が減弱しており、軽度の副雑音が聴取される。
血液所見:赤血球370万/μL、Hb8.8g/dL、白血球6,700/μL、総蛋白5.2g/dL、アルブミン3.8g/dL
CRP1.5mg/dL。 動脈血液ガス分析(room air):pH7.31、動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉40Torr、動脈血酸素分圧〈PaO2〉63Torr。
胸部エックス線写真:胸膜肥厚と肋骨横隔膜角の鈍化が認められる。肺虚脱なし。

問題 Aさんの呼吸困難の原因で考えられるのはどれか。2つ選べ。
1. 胸 水
2. 気 胸
3. 貧 血
4. CO2ナルコーシス
5. 呼吸性アルカローシス
答え:1・3

状況設定文内にたくさんの検査データがあります。問題文を読みながら、疾患名、疾患名が明示されていない時は特徴的な症状と、異常数値にマーク(○で囲む、アンダーラインを引くなど)をつける習慣をつけてください。その上で、問題を解いていきます。

まず、悪性胸膜中皮腫でみられる症状を知っておきましょう。胸痛、咳嗽、大量の胸水による呼吸困難や胸部圧迫感がみられます。肺癌の症状と似ているため、生検を行って確定診断をします。ただし、悪性胸膜中皮腫は、その昔工事現場などで使われていたアスベスト(詳しくはコチラ)が原因のことが多く、患者さんの生活歴の確認も有効です。
選択肢1、エックス線でみられる「胸膜肥厚」は悪性胸膜中皮腫によるものと考えられますが、「肋骨横隔膜角の鈍化」がみられる場合は胸水の存在を疑います。よって、○。
選択肢2、この状況設定文内では、気胸を疑うべき所見は見当たりません。
選択肢3、ヘモグロビン〈Hb〉が8.8g/dLと基準値を大幅に下回っており、呼吸困難の原因の1つと考えられます。なお、ヘモグロビンの基準値は男性15g/dL前後、女性13g/dL前後です。
選択肢4、「CO2ナルコーシス」の場合、頭痛・意識障害などの症状がみられます。また、PaCO2が上昇しますが、正常値(35~45mmHg)の範囲内です。
選択肢5、「呼吸性アルカローシス」の場合、PaCO2が低下しますが、正常値の範囲内です。

 
1問を解くために、これだけの知識が必要であることに、ビックリした方もいるのではないでしょうか。そもそも状況設定問題では、そのテーマとなっている疾患の主症状などを理解していることは必須です。その上で、状況設定文内のデータが正常かどうかを問題文を読みながら判断し、さらに選択肢の疾患についても理解していなければなりません。それらができないと、得点につながらないのが状況設定問題です。

検査データの暗記は、実習中に担当患者さんにとって重要な検査データを覚えたように、経験を生かして覚えていくほうが効率的でしょう。それでも覚えきれていないものは、過去問や模試などで出てきた時に随時覚えていきましょう。先ほど説明した通り、数値を覚えるだけでなく、「そのデータは何を意味するのか」、「異常の場合は何を疑うのか」まで覚えてくださいね!

今回の3ポイントふまえた過去問を、コチラにまとめています。ぜひご利用ください。
次回は、老年看護学について説明します!