今回は、「看護の統合と実践」についてです。

「看護の統合と実践」では、看護管理、安全管理、災害看護学、国際看護学の範囲から出題をされています。さらに状況設定問題では、複合的な事象における統合的な問題という出題基準の内容を踏まえ、一人の患者さんが様々な場で行われる看護に関する設問構成となっています。
では、具体的にはどのように攻略していけばよいでしょうか?

看護の統合と実践の攻略の攻略ポイントは?

看護の統合と実践の攻略の攻略ポイントは、これだ!

1)災害看護のポイントを押さえよう!
2)国際看護では、外国人患者への対応についてチェックしておこう。
3)状況設定問題の1症例は「継続看護」から出題される。

1)災害看護のポイントを押さえよう! について

災害看護については、今回の出題基準の改定で「看護の統合と実践」にすっきりと集約された印象を受けます。災害各期の看護、トリアージ、要支援者への対応など出題傾向も絞られてきていますので、ポイントを押さえて得点源にしていきたい部分です

過去問を見てみましょう。

第111回 AM75
災害発生時に行うSTART法によるトリアージで最初に判定を行う項目はどれか。
1.意 識
2.呼 吸
3.循 環
4.歩 行
答え:4

災害時のトリアージとは、限られた医療資源を最大限に活用し治療を行うために、治療・搬送前に行なわれる優先順位の決定のことをさします。多数の傷病者をトリアージする手法として、4つのステップからなるSTART法があり、歩行→呼吸→循環→意識の順にYES/NO形式かつ30秒程度で迅速に評価します。よって正解は選択肢4です。

もう1問見てみましょう。

第110回 AM71 
大規模災害発生後2か月が経過し、応急仮設住宅で生活を始めた被災地の住民に出現する可能性が高い健康問題はどれか。
1. 慢性疾患の悪化
2. 消化器感染症の発症
3. 深部静脈血栓症の発症
4. 急性ストレス障害の発症
答え:1

災害発生時からの経過時間を表すのが「災害サイクル」であり、急性期、亜急性期、慢性期、静穏期などにわけられます。各期において避難住民の健康課題が異なり、看護師は何に注意すべきかが変わってきます。
この問題の場合、大規模災害発生2か月が経過しているので慢性期に該当します。慢性期では、避難生活の長期化による疲労の蓄積・体力の低下、PTSDなどが発生しやすいです。また、仮設住宅はプライバシーが守られる反面、生活状況が把握しにくいため、慢性疾患が悪化する可能性が高くなります。よって、選択肢1が正解です。
急性期では、避難所での集団生活による感染症、身近な人の死や大規模災害のショックによる急性ストレス障害、避難所の中であまり活動しないことによる深部静脈血栓症や廃用症候群などがおこりやすいです。よって、選択肢2~4は急性期におこりやすい健康問題といえます。
災害各期の健康問題については、教科書などで確認しておいてください。

災害看護は出題範囲・数が広く多いわけではなく、かつ特段難しいわけでもありません。教科書などを読んでから問題に取り組むのではなく、過去問をやりながらその都度学び、出題傾向をつかむやり方が、一番効率的だと思います。
 

2)国際看護では、外国人患者への対応についてチェックしておこう。 について

国際看護の問題は例年出題されていますが、学校で科目として習わない、または選択科目であるという方がほとんどだと思います。こういった場合も、やはり過去問で傾向をつかみ、その都度、学習を深めておくことで対処するのが最適でしょう。

問題としては、大きく分けて2パターンあり、出題傾向としては以下の通りです。
●外国人患者への対応:言葉が通じないなどのコミュニケーションの問題、宗教上や文化的背景からの生活習慣の違いへの対処法、健康保険証の所持など
●国際機関や世界共通の健康目標に関する問題:国連、WHO、JICA、SDGs

外国人患者への対応については、過去問や模試問題をやって、それらの解説をよく読んでおいてください。ポイントを押さえれば、加点につなげていけるでしょう。

過去問を見てみましょう。

第112回 PM72 
Aさん(58歳、男性)は外国籍の妻(40歳)と10年前に結婚し、2人で暮らしている。虚血性心疾患と診断され、外来看護師による生活指導を妻と一緒に受けることになった。初回の面談で、Aさんは「10年間で体重が10kg増えました。妻の母国の習慣で味が濃いおかずや揚げ物とご飯を1日に何度も食べています。最近、2人とも運動をしなくなりました」と話した。
このときの外来看護師のAさんと妻への最初の対応で適切なのはどれか。
1. 生活習慣の改善についてAさんと妻に考えを聞く。
2. 食事は1日3回までにするよう指導する。
3. 毎日1時間のウォーキングを提案する。
4. 料理教室に通うことを勧める。
答え:1

対象は、日本人であるAさんと外国籍の妻です。Aさんは虚血性心疾患と診断され、生活指導を妻と一緒に受けるという設定です。結婚してから10年が経過、そしてその10年で体重が10kg増加していること、食事が妻の母国の習慣によって変化したこと、二人とも運動をしなくなったことなどが書かれています。
また、設問に「最初の対応」という聞き方をしていることもチェックしましょう。
なので、どのような状況であれ、最初にすることといえば、現状確認です。選択肢1が正解となります。

医療機関にはさまざまな背景を持つ人が来ます。その人の表情や状況から、その場で何を優先すべきかを判断することが重要になります。言葉が通じない場合もありますが、正確なコミュニケーションをとることよりも、まずは、その人の苦痛を取り除くことの方が優先される場合もあり得るでしょう。看護職には臨機応変な対応が求められていることを忘れずに

 

3)状況設定問題の1症例は「継続看護」から出題される。 について

複合事象の状況設定問題は、まだ出題数が少ないので、ピンとこない方もいるかもしれません。
さっそく過去問を見てみましょう。

第110回 PM118~120
Aさん(88歳、男性)は、10年前に脳梗塞を発症し左半身麻痺の後遺症がある。杖歩行はでき、要介護2で介護保険サービスを利用中である。Aさんが最近食欲がなく、水分もあまり摂らず、いつもと様子が違うことを心配した妻がAさんに付き添って受診した。
身体所見:呼びかけに対して返答はあるが反応はやや遅い。麻痺の症状に変化はない。
バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数20/分、脈拍100/分、血圧140/60mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(room air)。
検査所見:赤血球410万/μL、白血球6,800/μL、Ht50%、総蛋白6.5g/dL、尿素窒素25mg/dL、Na150mEq/L、K3.8mEq/L、血糖値110mg/dL、CRP0.01mg/dL。胸部エックス線写真に異常なし。

問題118 Aさんの状態をアセスメントするために、外来看護師が収集すべき情報で優先度が高いのはどれか。
1. 口渇感
2. 呼吸音
3. 尿比重
4. 腹部膨満感
答え:3

問題119  Aさんは入院となり、点滴静脈内注射が開始された。入院当日の夜間、Aさんは「ここはどこか、家に帰る」などと言い、点滴ラインを触ったり杖を使わずにトイレに1人で行こうとしたりして落ち着かず、ほとんど眠っていなかったと夜勤の看護師から日勤の看護師に申し送りがあった。
日勤でAさんを受け持つ看護師の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
1. 時計をAさんから見える場所に置く。
2. 主治医にAさんの退院について相談する。
3. 日中はAさんにスタッフステーションで過ごしてもらう。
4. 点滴ラインがAさんの視界に入らないようにする。
5.日中はAさんの病室の窓のカーテンを閉めておく。
答え:1・4

問題120  入院から1週が経過し、Aさんのバイタルサインなどは正常となり、食事も摂取できるようになった。Aさんの妻は「先生からそろそろ退院できるといわれましたが、夫はほとんどベッド上で過ごしており、トイレまで歩けそうにありません。これで退院できるか不安です」と看護師に話した。現在のAさんの日常生活動作〈ADL〉は、起立時にふらつきがみられ、歩行は不安定である。ポータブルトイレを使用して排泄している。
現在のAさんの状況から、退院に向けて看護師が連携する者で適切なのはどれか。2つ選べ。
1. 薬剤師
2. 民生委員
3. 管理栄養士
4. 理学療法士
5.介護支援専門員
答え:4・5

設問ごとにAさんに対応する看護師、看護場面が異なることが読み取れます。設問118は外来、設問119は夜勤から日勤への申し送りの後の対応、設問120は回復期にあるAさんへの退院に向けての援助となっています。Aさんは、88歳という高齢であること、基礎疾患、合併症があることなど複合的な事象を抱えている患者さんです。老年看護学、在宅看護論、精神看護学、成人看護学、基礎看護学などの知識を統合して回答をしていく必要があります。

それぞれ設問を見ていきましょう。
118 Aさんへの適切な情報収集事項を問う設問です。データから読み取れることを元に判断していきます。もっとも気になるのが、血液検査データのHtです。Ht〈ヘマトクリット〉は、血液に占める血球の割合です。一般的に40〜45%程度です。高齢者であるAさんは、下限に近い値になるはずですが、50%と高値です。これと合わせて確認しておきたいのが、血清Na値です。こちらもおよそ140±5mEq/Lが目安です。Aさんは150を呈しています。そのほか、微熱であること、水分の摂取が不足していることなどから、高張性脱水である可能性が高いです。
選択肢を見ていきましょう。脱水に関連した事項が2つあります。選択肢1の口渇感と選択肢3の尿比重です。Aさんの年齢を確認しましょう。Aさんは88歳という高齢であり、「呼びかけに対して返答はあるが、反応はやや遅い」とあります。高齢者は口渇感を感じにくく、さらに自覚症状を訴えることは難しい状態であると判断します。よって、客観的指標となる選択肢3の尿比重が正解となります。

119は、夜間にせん妄を呈している状態が書かれています。ただし、聞かれているのは「日勤の看護師の対応」です。昼夜逆転とならない環境を作ることや、せん妄への対応の基本的原則を踏まえて回答しましょう。よって、1・4が正解です。選択肢3を選ぶ人も多くみられましたが、必要がないにもかかわらず、ナースステーションで過ごすのは、Aさんの行動を過度に制限していることにつながるため、適切な対応とはなりません。

120は、1週間が経過して状態が改善した状況が書かれています。Aさんの妻が在宅で療養することへの不安を話しています。Aさんは歩行に不安があることから転倒のリスクが高い状態です。冒頭の設定で、要介護2であること、介護保険サービスを利用していることが書かれています。
入院前とは状態が異なり、介護の度合いが変化しています。Aさんの退院に向けて、選択肢4の理学療法士と連携し、残る入院期間で退院に向けた援助を検討し、介護支援専門員〈ケアマネジャー〉へ介護度の見直し、またはケアプランの見直しを依頼する必要性があります。

 

なお、出題基準の改定により、前回の出題基準で「看護の統合と実践」に含まれていた【医療法】、【保健師助産師看護師法】、【看護師等の人材確保に関する法律】は「健康支援と社会保障制度」に集約されました。これらの法律についてはかなり細かい内容についても出題されますので、過去問から出題傾向をしっかり押さえ、必要な知識を身につけておいてほしいと思います。

今回の3ポイントふまえた過去問を、コチラにまとめています。ぜひご利用ください。

以上で、今年度の国試対策勉強法は終了です。
途中からご覧いただいた方もいらっしゃるかもしれません。コチラに一覧になっておりますので、国試までの残りの期間に、ぜひご活用ください。
みなさんが実力を発揮され、合格されますことを心より祈念しております!