今回は、「地域・在宅看護論」についてです。

112回からの出題基準改正に伴い、「地域・在宅看護論」と名称が変更になりました。その112回では、特に状況設定問題において、広く地域で暮らす人への在宅看護のあり方を問う内容が強化され、出題されました。
また、従来から問題文が「Aさん(●●歳、男性)」というような書き出しで始まる、アセスメントやそれを踏まえた援助のあり方を問う長文の問題が、他の科目と比べて多くなっています。

では、具体的にはどのように攻略していけばよいでしょうか?

在宅看護論の攻略ポイントは?

在宅看護論の攻略ポイントは、これだ!

1)介護保険は必ず学習しておくべき!
2)「Aさん」から始まる問題に強くなろう!
3)状況設定問題では、具体的な支援の方策が問われる。

1)介護保険は必ず学習しておくべき! について

介護保険は、必修問題でも出題されますが、それは概要的な内容であり、一般問題ではかなり突っ込んだ出題も見受けられます。

過去問を見てみましょう。

第112回 AM70
介護保険制度における都道府県が指定・監督を行う居宅サービスはどれか。
1.福祉用具貸与
2.小規模多機能型居宅介護
3.定期巡回・随時対応型訪問介護看護
4.認知症対応型共同生活介護〈グループホーム〉
答え:1

「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」までは覚えていても、指定・監督まで覚えていないよ、という声も聞こえてきそうですが、基本的事項でもあるので、おさえておきたい設問です。

介護保険導入当時は、介護保険サービスは居宅サービスと施設サービスの2つで構成されていました。保険者は「市町村」ですが、その市町村を監督するのは「都道府県」の役割です。したがって、介護保険サービスを行う事業主は「都道府県」から指定を受けることが必要でした。その後、地域の実情にあった地域限定のサービスのニーズが高まり、それを受けて市町村が指定できる「地域密着型サービス」が設立されました。
覚えておきたいポイントは、「居宅サービス」「施設サービス」は都道府県が指定・監督する事業主が実施し、「地域密着型サービス」は市町村が指定・監督する事業主が実施する、という部分です。

選択肢を確認しましょう。
1.○ 福祉用具貸与は、居宅サービスに含まれます。したがって、都道府県が指定・監督する事業主が実施するサービスです。
2.3.4.× 小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、認知症対応型共同生活介護〈グループホーム〉は、地域密着型サービスです。したがって市町村が指定・監督する事業主が実施するサービスです。

なお、介護保険の中でもよく出題されるポイントとしては、似たようなものがどれに分類されるのか、という点です
(1)予防給付なのか、介護給付なのか。また、どのサービスに該当するのか。
(2)訪問看護制度については、介護保険の範囲はどれなのか(医療保険との違い)。
(3)施設サービスの各施設の特徴
模擬試験の解答解説書や参考書にわかりやすくまとめてあるかと思いますので、そういったものを活用して、しっかり押さえておきましょう。

また地域・在宅看護論と変更になったことからも、地域包括ケアシステムの確認も合わせて行っておきましょう。

 

2)「Aさん」から始まる問題に強くなろう! について

「Aさん」から始まる問題では、障害者(障害者支援法)や難病患者(難病法)、「厚生労働大臣が定める疾病等」なども対象となります。

過去問を見てみましょう。

第111回 AM68 
Aさん(80歳、女性)は1人暮らし。要介護2の認定を受け、長男(50歳、会社員)、長男の妻(45歳、会社員)、孫(大学生、男性)と同居することになった。長男の家の間取りは、洋室5部屋、リビング、台所である。Aさんは同居後に訪問看護を利用する予定である。訪問看護を利用するにあたりAさんの家族から「在宅介護は初めての経験なのでどうすればよいですか」と訪問看護師に相談があった。
訪問看護師の説明で最も適切なのはどれか。
1. 「Aさんの介護用ベッドはリビングに置きましょう」
2. 「Aさんの介護に家族の生活リズムを合わせましょう」
3. 「活用できる在宅サービスをできる限り多く利用しましょう」
4. 「特定の同居家族に介護負担が集中しないように家族で話し合いましょう」
答え:4

初めての在宅介護には、家族の不安が常に隣り合わせです。Aさんと同居することによって、家族が以前よりも不便になったり、介護が特定の一人に集中することがないようにすることが、在宅介護がうまくいく秘訣のひとつです。
1.× この問題の場合、長男、長男の妻、孫1人に対して洋室は5室あり、Aさんのスペースも十分に確保できますので、リビングにベッドを置く必要はありません。
2.× 家族がAさんのリズムに合わせるのではなく、それぞれの生活リズムを尊重しながら、Aさんの介護に取り組めるような態勢を整えるべきです。
3.× 現在は、在宅介護利用者も増えています。いくらでも利用するのではなく、AさんとAさん家族に合った適切なサービスを利用するように勧めましょう。
4.○ 誰か一人に集中すると、介護疲れなどを理由にAさんとの同居継続が難しくなる可能性もあります。家族による介護では、家族みんなが力を合わせて無理のない範囲で介護をし、社会資源を適宜活用することがポイントになります。

なお、難病法や「厚生労働大臣が定める疾病等」については、先に説明したとおり、医療保険が利用できます。
以下は、過去に出題されたことのある「厚生労働大臣が定める疾病等」の一部です。
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末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。)、後天性免疫不全症候群、頸髄損傷、人工呼吸器を使用している状態 など
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これら以外にもどういった疾患が該当するのか、一度しっかりと調べておくことをお勧めします。

 

3)状況設定問題では、具体的な支援の方策が問われる。 について

状況設定問題においては、高齢者を対象とし、具体的な支援の方策を問う問題が目立ちます。

過去問を見てみましょう。

第108回 AM115
Aさん(75歳、女性)は、夫とは3年前に死別し、1人暮らし。喫煙歴があり、5年前に慢性閉塞性肺疾患と診断された。長女は隣県に住んでおり、時々様子を見に来ている。Aさんは受診を継続しながら、ほぼ自立して生活していた。今回、咳・痰の症状に加え呼吸困難が増強したため入院となった。入院後は酸素療法(鼻カニューレ:2L/分)と薬物療法を受け、症状が改善し、在宅酸素療法を導入し退院することになった。Aさんは初めて要介護認定を受けたところ、要支援2であった。
病棟看護師がAさんに行う在宅酸素療法に関する指導で適切なのはどれか。2つ選べ。
1. 電磁調理器の使用を勧める。
2. 外出時にデマンドバルブの作動を確認する。
3. 在宅酸素療法の機材が介護保険で給付される。
4. 酸素濃縮器は日当たりのよいところに設置する。
5.呼吸困難時にAさんの判断で酸素流量を変更してよい。
答え:1・2

在宅酸素療法(HOT)を継続するうえでの生活の注意点を問う問題です。選択肢1、酸素は燃えているものをさらに燃えやすくする性質があるため、火を使わない電磁調理器を勧めます。選択肢2、外出時は作動を確認し、外出中に酸素不足にならないように留意します。デマンドバルブとは、酸素吸入時だけ酸素が流れる仕組みのことで、ボンベ内の酸素を約3~5倍長く使うことができます。選択肢3、医療保険の給付となります。選択肢4、酸素ボンベが高温になると、内圧上昇によりバルブの破損や酸素漏出をすることがあります。40℃以下で通気性のよいところに置きましょう。選択肢5、酸素流量の変更は、医師の指示によるものでなければなりません。

在宅酸素療法は過去問でも見かけます。これ以外には、移乗時に家族の負担軽減のための福祉用具、腰部脊柱管狭窄症で要介護1、障害高齢者の日常生活自立度判定基準A-1のAさんが貸与を受けられる福祉用具、というように、その対象者の介護度から、具体的な支援用具を選択する実践的な問題も複数出題されています。こういった問題を解くには、介護度の理解、貸与の制度に関する詳細、福祉用具の特徴を理解していなければ、正解にたどり着きません。似たような過去問や模試問題を解いた際に、関連する部分をしっかりとまとめ、ご自身の知識としておくことが、得点につながる勉強法かと思います。

 

今回の3ポイントふまえた過去問を、コチラにまとめています。ぜひご利用ください。
次回最終回は、看護の統合と実践について説明します!