先日、東京新聞に『介護人材 ベトナムから 1万人受け入れへ』という記事が掲載された。
記事によると……慢性的な人手不足に陥っている介護人材に関し、政府が2020年夏までにベトナムから1万人を受け入れる数値目標を設定したことが25日、分かった。「外国人技能実習制度」を活用する方針で、1年以内に3千人を目指す。ベトナム側も人材の送り出しに協力する意向で、今後両政府で覚書を結ぶ見通しだ。政府は昨年11月、外国人が日本で技術や知識を習得し自国で生かす技能実習制度の対象業種に「介護」を追加した。しかし、入国時にゆっくりと日常会話ができる程度の日本語能力など、他の分野にはない要件を実習に課しているため低調で、介護実習生は7月時点で中国から2人にとどまっている。日本、ベトナムの両政府担当者は対応を協議、今年6月、受け入れ促進の方針で一致した。これまで本人の自己負担だった入国前の日本語の学習費用を、日本の受け入れ業者が支援し、来日しやすくする。既に日本国内の十二業者を選定しており、3千人の受け入れが可能だ。受け入れ業者の数も今後増やしていく方針。

ということで、今回は「介護」に注目して解説!

例えば『介護』について、過去の国試ではこのように出題されていた!!

第103回追加試験 午後・60
介護老人福祉施設で正しいのはどれか。
1.介護保険施設の1つである。
2.入所は市町村の措置による。
3.施設の定員規模は10人以下である。
4.在宅復帰に向けたリハビリテーションを行うことを目的とする。

正解 1

 

この問題を新聞記事・ネットニュースから読み解く!!

恐らく多くの人が耳にしたことがあるであろう、「介護職の人手不足問題」について、みなさんは一体どれだけ深く、そして多くの知識を持っているのでしょうか。という自分自身も凄く詳しいという訳ではないのですが、やはりここ最近新聞で目にすることが多くなってきたので、自然と頭の中には入ってきているのではないかなぁと思います。この介護人材の問題については、単純に「人が足りていない」というだけではなく、その人が足りていない状況をあらゆる角度から覗いてみると、これは思っている以上に問題が山積みで、対処すべき点がたくさんあるのだなということが分かってきます。今回はその第一歩となるような内容です。

2025年まであと7年! 始まっているカウントダウン!

2025年という数字が介護の世界でどういった意味を持つか、みなさんご存知でしょうか。実はこの数字、非常に重要な意味を持っているのです。みんな、2025年までにこの問題をどうにかしなくてはいけないと焦っているのです。その対策のひとつが冒頭にあった記事の「ベトナムから人材を受け入れよう」ということに繋がっているのです。
まずはその「2025年」というタイムリミットの意味と、シンプルに一体どれだけ人が足りていなくて、どれだけ必要なのかが分かる記事がありましたので、そちらから見ていきましょう。


団塊の世代が全員75歳以上になる2025年度に、必要とされる介護職員数に対し確保できる見込み数の割合(充足率)は、都道府県による地域差が大きいことが厚生労働省の推計に基づく分析で判明した。
最も低いのは福島、千葉の74.1%で、必要な職員数の4分の3に届かない見通し。充足率が最も高い山梨の96.6%と20ポイント以上の差があった。全国平均は86.2%。100%確保できるとした都道府県はなかった。
(略)介護職員は低賃金や重労働といったイメージから敬遠されがちで、このままでは将来も深刻な人手不足が避けられない。(略)
16年度時点の介護職員は全国で約190万人。厚労省の推計では、25年度には約245万人が必要で、対策を急がないと全国で約33万7千人が不足する。
ホームヘルパーや介護施設職員の平均給与(賞与込み)は月26万7千円で、全産業平均より10万円以上低い。厚労省は処遇改善のほか、人手不足に備えて介護ロボットや情報通信技術(ICT)の活用、外国人材の受け入れ環境整備にも取り込むが、実効性は未知数だ。

—毎日新聞  2018年7月15日(日)

2025年度まであと7年。その7年で、介護職員を日本全国に約245万人増やさなくてならないという、この問題。
記事にも少しありましたが、やはり介護職に対するイメージというのは必ずしも明るいものだけというわけではなく、思うように人数は増えていないようなのです。それではこの問題をそのまま放置しているとどうなるか。今度は「介護難民」という言葉が出てきます。介護をする人がいなかったり、足りなければそれは当然です。じゃあ一体どうすれば良いかというところで、冒頭の記事にあった、海外の力を借りたり、または介護ロボットの開発などに繋がっていくのです。

 

そんなに多いの!? ど、どうして!?

介護職にはどうしても「いろいろと大変そう」などのイメージが強くあります。そこもまた大きな問題点ですね。しかし、この問題点はなかなか根っこが深いといいますか、難しい要素がいくつもいくつも重なって、今の状況を作ってしまっているのだと思います。
そんな問題点のひとつを分かりやすく数字であらわしてくれた記事がありましたので、見ていきましょう。


介護現場で働くスタッフの7割が利用者やその家族から嫌がらせや暴力の被害を受けた経験があるとの調査結果を、介護職員の労働組合「日本介護クラフトユニオン」がまとめた。怒鳴られたりサービスを強要されたりするケースが多かった。利用者からのセクハラも横行しており、今後、厚生労働省に対策を要請する。
ユニオンが4~5月、訪問介護や有料老人ホームで働く組合員2411人から回答を得た。(略)それによると回答者の70%に被害経験があった。具体的な被害(複数回答)で最多は「攻撃的に大声を出す」の61.4%。他に、「契約していないサービスの強要」(34.3%)や「身体的な暴力」(21.7%)、「『バカ』などの暴言」21.6%が多かった。土下座を強要したり、書類をやぶったりするなどのケースもあった。
被害を受けた人の90%が精神的なストレスを感じ、75%は上司や同僚らに相談したが、多くは状況が変わらなかった。必要だと感じている対策(複数回答)は、利用者・家族への啓発(58.4%)、事業所内での情報共有(57.9%)――――などだった。
セクハラについては4月の中間発表とほぼ同じで、回答者の3割に被害経験があった。

—毎日新聞  2018年6月23日(土)

介護職員に対して、暴言や暴力、しかも介護の利用者本人だけではなく、その家族からも嫌がらせがある、しかもそれを経験している介護職員の人が7割もいるというのですから、個人的には驚きです。どうしてそういったことになってしまうのでしょうか? というのが正直な感想です。
そして、逆のパターンが、起こってしまっているのも事実です。今年3月の厚生労働省の発表によると、2016年度の介護職員による高齢者への虐待件数が06年(統計開始)以来最多を更新したというのです。この件数は年々増加しており、その背景には人手不足があるのではないかという声もあります。

介護をする人、介護を利用する人、またはそのご家族も、もしかしたらストレスが溜まりに溜まって出てしまった暴言や嫌がらせなのではないか、そしてやはりその背景には同様に「人手不足」というのがとても大きく関わっているのではないでしょうか。
「人手不足」が「人手不足」を呼び、それが今の状況を作り出してしまったのではないかと、僕は考えます。

 

全員で取り組まなければならない、大きな問題だから……


介護職の人材不足という問題は触れれば触れるほど、とても深刻で簡単な問題ではない、そして何より早急に対処しなくてはならないのだという事に気付かされます。
その大きな一手が冒頭の記事にあったベトナムから人材を1万人受け入れるということだと思います。他の記事には「ベトナム以外にもインドネシア・カンボジアなどからの受け入れ促進も検討」という一文がありました。これで全てが良くなる、万事解決という訳ではないと思います。ただ、それでも何かひとつ良いキッカケとなって、ひとつ、またひとつ、そうしてこの介護人材の問題が段々と良い方向へと向かって、2025年を迎えられたらと僕は思います。

 

イラスト:Aokimac

 

おまけ!今回のテーマに関連するワードの過去問題も見てみよう!

第104回 午前問題8
第104回 午後問題4
第106回 午前問題59
第107回 午前問題4
第107回 午後問題81