先日、読売新聞に『玩具「磁石球」誤飲 胃腸に穴』という記事が掲載された。
記事によると……マグネットボールという強力な磁石の玩具を幼児が誤飲し、胃や腸に穴が開く事故があったとして、国民生活センターは19日、注意を呼びかけた。マグネットボールは直径3~30mm程度の小さな丸い磁石のおもちゃ。いくつも組み合わせ、様々な形を作って遊ぶ。指先などを挟んでも落ちないほど磁力が強い。
昨年12月、3歳男児がクリスマスプレゼントでもらったマグネットボールを相次いで誤飲。約1週間後に開腹手術をしたところ胃と小腸を貫いてつながっていた。
今年1月には、1歳9か月の女児がマグネットボール37個を誤飲し、開腹手術で摘出した。小腸の3か所に穴が開いていた。
同センターが、マグネットボールを販売していた32のインターネットサイトを調べたところ、30サイトが誤飲に関する注意表示をしていなかった。同センターは「子どもに強力な磁石を玩具として与えないでほしい。誤飲に気付いたらすぐに医療機関で受診を」と呼びかけている。

ということで、今回は「誤飲」に注目して解説!

例えば『誤飲』について、過去に国試ではこのように出題されていた!!

第99回 午後・66
最近10年(※)の乳幼児の誤飲で最も頻度が高いのはどれか。
1.硬 貨
2.玩 具
3.医療品
4.たばこ
正解 4
※2010年の第99回看護師国家試験にて出題された内容であり、2010年から過去10年によるものである。

この問題を新聞記事・ネットニュースから読み解く!!

乳幼児に関わらず、子どもの誤飲についての問題はこれまで国家試験で、何度か形を変えて出題されてきています。それだけ小児の分野では切っても切り離せない程、重要な内容であり、いくら注意していても起こってしまう事故の一つだと言えます。
上記の第99回の過去問では選択肢4の「たばこ」が正解ですが、他の選択肢の「玩具」の誤飲や、「医療品」の誤飲なども非常に多いです。第102回午後問題69(小児看護学)では、乳児の事故防止対策で「直径25mmの玩具で遊ばせる」を×選択肢としていて、玩具の大きさも事故防止の大切な要因であることが分かります(ちなみに、直径39mm以上であれば誤飲は防止できるとされています)。

さて、マグネットの玩具で胃腸に穴が開くというのもショッキングな話しですが、今回はこの過去問の選択肢4の「たばこ」が、ここ3年連続で子どもの誤飲の第1位という新聞記事・ネットニュースを紹介していきながら、たばこの誤飲の新たな問題点なども絡めて解説していきたいと思います。

子どもの誤飲、最も多いのは「たばこ」と「1歳半」!?

冒頭の「磁石の誤飲で胃腸に穴が空く」という恐ろしい記事を見つけてから、子どもの誤飲事故について色々と資料を漁ってみました。新聞やネットの記事、過去の誤飲事例、はたまた誤飲予防の為に取り組んでいる団体などについても調べてみました。
そんな中、冒頭の記事が掲載される2週間程前に、まさしくこの「子どもの誤飲」についてまとめてある記事がありました―――。

厚生労働省が、各地の小児科が診療した子どもの誤飲事故を分析した結果、たばこが原因だったケースが20.2%を占め、三年連続で最多だったことが分かった。同省は「たばこの取り扱いや保管に注意してほしい」と呼び掛けている。
(略)2016年度は、子どもの誤飲事故が728件報告され、うちたばこによるものが147件だった。たばこ以外では、医薬品・医療部外品108件(14.8%)や、プラスチック製品72件(9.9%)が多かった。
年齢別では、6~11か月の213例(29.3%)が最も多く、12~17か月の130例(17.9%)、3~5歳の117例(16.1%)が続いた。机の上に置いていたたばこを9か月の男児が口にして吐いたり、吸い殻が入ったジュースを飲んだ6歳8か月の女児が点滴治療を受けたりしたケースが報告された。
—東京新聞  2018年4月7日(土)

この新聞記事に掲載されていた記事やグラフを見てみると、やはり近年最も多い子どもの誤飲は「たばこ」ということになります。しかし、医薬品・医薬部外品なども決して少なくない数字であることが分かります。(医薬品・医薬部外品は2013年度に一度だけ、たばこを抜いて誤飲事故1位になっている)
また、誤飲事故を年齢別で見てみると、1歳未満の乳幼児による事故が最も多く、全体の3割近くを占めており、6~11か月・12~17か月の報告数を合わせると全体の5割近くを占めていることになります。

密かに増えている!? 新しい問題点!

さらにいろいろな記事を見ていくと、これまでになかったタイプの事故というのも密かに増えてきていることが分かりました。
最近少しずつ増えてきた「加熱式たばこ」による、誤飲事故です。
このタイプの誤飲事故について掲載していた記事がありましたので、そちらも見てみましょう。

タバコ葉を電気で熱して蒸気を吸う「加熱式たばこ」について、国民生活センターは、葉の部分を乳幼児が誤飲する事故に注意を呼び掛けた。通常のたばこに比べて小さく、利用者の増加に伴い事故が増える恐れがあるとしている。
(略)国民生活センターが市販の全3タイプ12銘柄を調べたところ、葉の部分はいずれも44ミリ以下で、乳幼児が誤飲しやすい形状だった。
(略)生後7か月~1歳5か月の乳幼児が、室内やごみ箱にあった葉を口に入れ、ぐったりしたり吐いたりして病院を受診した。火を使わないため、そのままごみ箱に捨てるなど通常のたばこと比べて扱い方が無防備になりやすいことも、事故のリスクを高めるとみられる。
—毎日新聞ネットニュース  2017年11月16日(木)

これまでの紙たばことは違う形状、そして火を使わないことによる捨てやすさがかえって、こういった新しい問題点を生んでしまっているということが、今回調べていくことで分かりました。そしてもしかしたら、今後この問題点はもっと報告数が増えたり、もしくはまた違った角度の新しい問題点を生んでしまったりするかもしれません。
そういった意味でも今後、無視できない項目の一つになってくるのではないでしょうか。

実はたばこの誤飲が多いのは日本だけ!? 畳文化と関係が!

子どもの「たばこ」による誤飲事故というのは、日本特有の傾向があり、それは畳の上での生活が中心である日本の生活様式からくるものであるという調査報告もありました。確かに日本の生活文化として“畳”の上ではなくても、リビングやお茶の間では、椅子に座るというよりも、床に座る方が、我々日本人には馴染みが深いかもしれません。そういった背景が、たばこや吸い殻などが乳幼児の手の届く所に存在してしまっているのかもしれません。

そこで、そういった「たばこ」に関わらず、子どもが誤飲事故を起こしてしまった時の対処法などを調べていたら、いろいろな団体が、対処法だけではなく、予防として取り組んでいるということが分かりました。

その内の一つに『公益社団法人 日本中毒情報センターHP)』という団体があり、ここのサイトには、たばこだけでなく、他のいろいろな物を誤飲してしまった時の対処法について記載されており、中でも事故が発生してしまい、どうしたらよいか分からない時の相談窓口として『日本中毒情報センター 中毒110番』というのも設けており、その場で応急手当の指示等を出してくれるそうです。

また、さらに興味深かったのは、子どもの誤飲防止を目的とした『誤飲チェッカーHP)』というものがあり、子どもが誤飲や窒息を起こさないために、誤飲してしまいそうな物・口にしてしまいそうな物をチェックすることができ、このチェッカーで該当してしまった物は必ず乳幼児の手の届かない場所に置く、などの判断ができる代物です。

子どもの誤飲事故は、やはりなかなかなくせる問題ではないのかもしれません。だからこそ、報告件数が多いからこそ、予防策や、対応策というのが充実していて、今よりもっともっと発展していかなくてはならないのかもしれません。

▲子どもの口腔と誤飲チェッカーの側面図 
一般社団法人 日本家族計画協会より

 

誤飲事故、今後は増える? それとも減る?

今回、誤飲について、事故件数の多い「たばこ」を中心に見てきました。
その「たばこ」だけでも今後新しく誤飲事故につながってしまいそうな問題点が見つかりました。また、冒頭の記事にあった、マグネットの玩具もそうですが、いろいろなジャンルでどんどん新しいアイテムが生まれて、その度に新しい問題が浮上してしまうかもしれません。

でも、個人的には、どんなアイテムが増えたとしても、この問題の本質は親や保護者が、しっかりと管理していれば、手の届かない場所に置いていれば、自然と事故の報告数は減るのではないのかな、と思っています。それと同時に、やっぱり子どもは大人の想像つかない、突拍子もないことをしでかしちゃうんだよなぁとも思っています。自分もそうでした。昔、自分で耳に鉛筆突っ込んで血が止まらなくて大泣きしたことありました……(笑)

誤飲事故なんて、起きないことが一番で、そのためにしっかり予防する、目を離さないで面倒をしっかりみる、手の届く所に怪しい物は置かない、こういった基本的ことを徹底することが大切なのでしょう。

そして、万が一、誤飲事故が起きてしまった時の対処法というのを、しっかりと頭の中に入れて把握しておくということも、また大切なことなのでしょう。

なるべくなら、子どものこのようなニュースは、なくなって欲しいと思います。

イラスト:Aokimac
 

おまけ!今回のテーマに関連するワードの過去問題も見てみよう!

誤飲:
第96回 午前問題128

事故:
第100回 午前問題6

事故防止:
第100回 午後問題70
第102回 午後問題69