以前、東京新聞に『認知症の恐れ 5万7000人』という記事が掲載されていた。
記事によると……免許更新時などの認知機能検査で認知症の恐れがある「第一分類」と判定された75歳以上の免許保有者に、医師の診断を受けるよう義務付けた改正道交法について、警察庁は7日、昨年3月末まで約1年間の運用状況(暫定値)をまとめた。全国で210万5477人が受験し、そのうち5万7099人が第一分類と判定された。
自主返納した人などを除き、医師の診断を受けたのは1万6470人。診断後、免許の取り消しや停止の行政処分を受けたのは1,892人で、2016年の597人と比べて約3倍に増えた。他にも1,515人が行政処分に向けた手続き中などの状態で、処分はさらに増える見通しだ。
交通事故による死者数は減少傾向が続き、17年中は3,694人で過去最少を記録。(略)
医師の診断で1万3063人が免許の継続を認められたが、この中で9,563人は認知機能が低下しているとして、原則6か月後の診断書再提出が求められている。
第一分類と判定されて免許を自主返納したのは1万6115人で、4,517人は更新手続きをせずに免許を失効した。残りは、再受験して第二、三分類の判定のほか、医師の診断待ちなどの状態となっている(略)。

ということで、今回は「認知症」に注目して解説!

例えば『認知症』について、過去の国試ではこのように出題されていた!!

第101回 午前・14
認知症を説明しているのはどれか。
1.知的発達の遅延
2.意識障害の出現
3.全身の筋肉の進行性萎縮
4.一度獲得した知的機能の衰退

正解 4

 

この問題を新聞記事・ネットニュースから読み解く!!

認知症という病気は新聞やテレビ等でもよく目にします。それは様々な形で取り上げられており、このコラムで紹介したいとずっと思っていた題材のひとつです。「認知症の人の働き方」「認知症患者と暮らす家族」「認知症患者との接し方」「認知症の予防」などなど、新聞見出しを見ただけでも気になる記事がチラホラと見つかります。
そもそも認知症とは、「後天的な脳障害により一度獲得した知的機能が自立した日常生活が困難になるほどに衰退した状態」をさします。ここでいう知的機能とは「記憶機能」「言語機能」「見当識」「視空間機能」「実行機能」のことをいい、これらの障害を認知症の中核症状といいます。この中核症状がベースとなって、本人の性格や本人を取り巻く環境などに影響して現れる二次的な症状を周辺症状といい、妄想・抑うつ・興奮・徘徊・不眠・幻覚・意欲低下などがあります。
そこで、今回は認知症が及ぼす実態の一部を数字で見ることが出来る記事と、その対策に新しいサービスの始まりについての記事があったので、紹介していきたいと思います。

 

知っていましたか? こんなに多い行方不明者!

認知症の周辺症状のひとつに「徘徊」があります。徘徊とは家の中や家の外を絶えず歩き回るなど、客観的には目的不明な行動に見えますが、本人にとっては、はっきりした目的がある場合が多いそうです。家の中で探し物をしていたり、「ここは家じゃない」と思い、本当の家を探しに出かけてしまうというケースなどがあり、家の外に出て帰れなくなってしまうことがあります。そういった家の外に出て、帰れなくなり行方不明になってしまう認知症の方が少しずつ増えているという記事がありました。


昨年1年間に認知症かその疑いが原因で行方不明になり、警察に届けられたのは1万5863人(前年比431人増)で、統計を取り始めた2012年以降、最多だったことが14日、警察庁のまとめで分かった。12年の9,607人から毎年増え、5年連続で1万人を超えた。
警察庁によると、行方不明者全体(8万4850人)の18.7%(前年比0.5ポイント増)を占めた。12年の12.3%から5年連続で割合も増えている。(略)
16年以前に届け出があった人も含め、17年中に所在確認されたのは1万5761人。大半が警察による発見で1万129人。家族による発見は5,037人だった。
所在が確認できた人のうち、7割は届け出当日に発見。99.3%は1週間以内に見つかった。一方、発見まで半年~1年かかった人が5人、1~2年かかった人が3人、2年以上も3人いた。17年に届け出のあった人のうち、227人の所在が確認出来ていない。年に数十回も繰り返し行方不明になった人もいるといい、速やかな身元確認や再発防止が課題となっている。
警察庁は、認知症の人には詰問しないよう気を付けるなど、円滑なコミュニケーション方法を学ぶ、厚生労働省の「認知症サポーター養成講座」を、全国の警察署員に受講させるなどの取り組みを進めている。

——東京新聞  2018年6月14日(木)

認知症かその疑いが原因で行方不明となった人が1万人もいるということも驚きですが、そのまま所在が確認出来ていない人が227人もいるという事が個人的に驚きです。自分の周りにも「こないだおじいちゃんがどこかに行っちゃって、探すのが大変だった」などの実体験を耳にすることがあります。その場合はすぐに見つかったようなので安心しましたが、所在が確認出来ない、または発見までに半年以上、1~2年も時間を要すると家族の方は心配でなりません。探すのに体力もいり、時間が経てば経つ程、精神は擦り減っていってしまいます。かといって認知症の本人を家からでていかないように拘束しておく訳にはいきませんので、とてもデリケートで難しい問題であることが分かります。

 

始まります! 少しでも不安を軽減、新サービス!

もし、自分の周りの人が認知症となり徘徊に出てしまった場合、自分で探したり、警察に捜索願を出したりするでしょう。その際にかかる費用というのも恐らくですが、馬鹿にならないのではないでしょうか。そこで、ある保険会社が新しい試みを始めるようです。知っておくと自分ではなくても、周りの人に教えてあげることが出来る耳よりな情報がありましたので、紹介したいと思います。


認知症患者の増加に伴い、患者や家族を支援する保険の発売が相次いでいる。東京海上日動火災保険は24日、認知症の家族を対象に、徘徊して行方不明となった場合の捜索費用を補償する商品を今年10月から販売すると発表。SOMPOホールディングス(HD)も軽度認知障害(MCI)の段階で保険金を支払う保険の発売を明らかにしており、各社がニーズの掘り起こしに力を入れている。
東京海上日動は、公益社団法人「認知症の人と家族の会」(本部・京都市)と連携し、当事者が抱える悩みを聞き取って商品を開発した。(略)
新商品の保険料は月額1,300円程度で、対象は40歳以上の認知症の人と家族。医師から認知症の判断を受けていなくても契約できる。行方不明になってから24時間後も見つからず、家族が介護事業者に捜索依頼を出したり、送迎にタクシーを利用したりした場合は、1回につき最大30万円を支払う。また、他人にけがをさせたり、他人の物を壊したりしたときの個人賠償責任補償(最大1億円)や、認知症患者自身がけがで死亡した場合の補償(50万円)なども付けた。東京海上日動によると、既に認知症の障害がある人を対象とする保険は業界で初めて。(略)
認知症保険を巡っては、2016年3月に発売した太陽生命保険が約38万件(23日現在)、同年4月に発売した朝日生命保険が約8万件(6月末現在)と販売件数を伸ばしており、今後は損保大手の参入でさらに普及が進みそうだ。

——毎日新聞  2018年7月25日(水)

前述した、認知症またはその疑いによる行方不明者の増加に伴い、今回新たに始まる「認知症の家族を対象に、徘徊して行方不明となった場合の捜索費用を補償」というサービスは今後注目を浴び、より多くのサービスが世に浸透していくのではないでしょうか。実際に1万人という人が行方不明となっているだけに、いつ我が身に起こるか分からない、非常に身近な出来ごとであり、高齢社会になっている日本にとっては今後ますます重要になってくるサービスのひとつだと思います。

 

進んでいるのは医療の世界だけではない……


これまでは看護師や医療の世界にスポットを当ててこのコラムを書いてきましたが、今回は病院から離れた場所で起きている出来事やサービスについて取り上げてみました。
医療の技術など進歩している部分もたくさんありますが、一緒に保険のサービスや補償も進歩しています。今後ますます深刻化する高齢社会なだけに、医療の世界だけではなく、こういった保険サービスなど世の中が一体となって助け合える環境を整備していくことも非常に重要なのではないでしょうか。今後も医療情報とあわせて、こういったサービスにもアンテナを張り、みなさんに情報発信していければと思います。

 

イラスト:Aokimac

 

おまけ! 今回のテーマに関連するワードの過去問題も見てみよう!

第95回 午前問題103
第95回 午前問題105
第96回 午前問題112
第100回 午前問題87
第101回 午後問題101
第102回 午後問題61
第103回追加試験 午後問題58
第105回 午前問題16
第105回 午後問題102
第106回 午前問題58