先日、東京新聞に『働く母親 初の7割超』という記事が掲載された。
記事によると……18歳未満の子どもがいる母親のうち、仕事をしている人が809万8000人で70.8%となったことが20日、厚生労働省の2017年国民生活基礎調査で分かった。04年に母親の仕事の有無が調査項目に加わってから初めて70%を超え、人数、割合ともに過去最高。
厚労省は「育児休業や時短勤務などが普及し、女性が子どもを産んでも働き続けられる環境が整ってきたのではないか」と分析している。雇用状況の改善も背景にあるとみられる。

ということで、今回は「子育て」に注目して解説!

例えば『子育て』について、10年前の国試ではこのように出題されていた!!

第97回 午前・129
平成16年(2004年)に策定された「子ども子育て応援プラン」の重点課題はどれか。
1.仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し
2.妊娠出産に関する安全性と快適さの確保
3.思春期の保健対策の強化と健康教育の推進
4.小児医療水準を維持向上させるための環境整備

正解 1

この問題を新聞記事・ネットニュースから読み解く!!

これまで紆余曲折が色々とあったとしても、外に出て仕事をする女性の数はとても多くなり、最早女性が働くことは当たり前となりました。とてもエネルギッシュに日本の経済・社会を動かしていると思います。
しかし、そこにはまだまだ問題が残っていて、女性が社会進出していく上で生じる子育てについての問題は、今に始まったことではなく、ジワジワと広がり、日本全体を巻き込む大変な事態となってしまいました。確かにこれまでも色々な対応がされてきたとは思いますが、本当はこれまで以上にもっともっと具体的に対処しなければならない、早急な解決が望まれる大きな社会問題なのではないかと僕は思うのです。
そしてそれは日本だけではなく、世界中で起こっているということを少しでも知ってほしいと思い、今回も様々な記事を紹介していきます。

まずは、子育てをしていく中で、多くの人が一度は頭を悩ませる問題についての記事がありましたので、その記事からみていきましょう。

 

圧倒的な受け皿不足!?

冒頭にあった、「働く母親が7割」というのはとても凄いことで、例えば平成16(2004)年でいうと働く母親の数は56.7%、半分よりちょっと多い数字でした。それがこの13年間でこれだけ多くの数字が変化してきたのです。その理由として記事にもあった通り、「育休や時短が普及」したというのはとても重要なことだと思います。もしかしたらまだまだその理解が及んでいない企業等もあるかとは思いますが、それでも少しずつ着実に社会に浸透しているのではないでしょうか。
しかし、働きたくても働けない、働いて欲しくても働いてもらえない事情がある、という現実が大きな数字で表されている記事を見つけました。

保護者が保育施設の利用を希望していたのにかなわなかった子どもが、入所申込みをしなかった場合も含め、今年4月に全国で約35万人に上るとの推計結果を野村総合研究所が発表した。政府は保育の受け皿拡大を進めているが、野村総研は「以前の調査と傾向に大きな変化は見られず、希望がかなわない子どもがまだ多数いる」と指摘している。
(略)また、野村総研は25~44歳の女性の就業率を80%に上げる政府目標の達成には、2022年度末までに59万9000人分の受け皿拡大が求められると推計。20年度末までに32万人分との政府計画に、追加で27万9000人分が必要だとした。

——毎日新聞  2018年7月16日(月)
 
 

こちらの記事を読んで分かる通り、就業していた女性が子どもの出産で休業をした後に、仕事に復帰しようとしても、子どもを預けておける保育施設がなく、仕事をすることが出来ないという問題を分かりやすく数字で教えてくれています。こうした問題は単純に保育施設が足りていないということが大きな悩みですが、これは施設の数だけではなく、土地やそこで勤務する保育士の数も問題点となってきています。「少子化」と呼ばれる今の時代なのに、その少ない子どもを守る大人の数と場所が、昔よりもなくなってしまっているというのは、不思議な話のような気もします……。
それにしても、保育施設が足りないなどの理由で保育利用を断念している子どもがいるというのは知っていましたが、まさか全国に35万人もいるというのは、個人的にかなり衝撃的な数字です。

日本だけじゃない! 世界的にも大問題!

保育施設の利用を断念している子どもが全国に約35万人いるというのも驚きでしたが、世界的にみてみるともっともっと大変な事態に陥っていることが分かる記事を見つけました。こちらの内容では理由が「子育て」だけではないのですが、是非知っておいてほしい、今世界で起きている社会問題のひとつとして紹介していきたいと思います。では、早速みてみましょう。


【ジュネーブ共同】国際労働機関(ILO)は28日、子育てや介護の負担増大により、全世界で約6億人の女性が就業の機会を奪われているとの報告書を発表した。女性の社会進出を促進するためにも子育てや介護を補助する教育や福祉、保健などの産業への投資が必要だとしている。
高齢化の伸展などで介護が必要な人が増える中で、対策を取らないと人手不足に陥り「子育てや介護が危機的な状況になる恐れがある」とも警告している。
報告書によると、2015年に世話や介護が必要な子どもや高齢者は世界に21億人いるが、30年には23億人に達すると予想。一方、核家族化が進み、伝統的な家族の役割が失われる中で、子育てや介護が女性に押しつけられていると指摘。家庭での介護など無給で行われる仕事の約76%を女性が担っている結果、約6億6000万人の女性が就業できない状態だと申告しているとした。
報告書は「子育てなどの無給の仕事が女性の労働市場への主要な障害になっている」
と指摘。各国が子育てや介護に関する政策を見直し、教育や福祉などの産業への公共支出や投資を倍増させるよう求めた。
適切に投資すれば、低賃金に甘んじている介護などの労働者の待遇改善につながるほか、雇用創出につながると指摘している。

—毎日新聞  2018年6月29日(金)

子育ての問題や介護の問題は日本だけの問題だと思っていましたが、実はそうではなく、世界的に起きている大問題だということがこの記事から読み取ることが出来ます。ILOが発表した内容では「子育て」だけではなく「介護」という問題も含んでいましたが、これは日本も一緒ですね。新聞を読んでいると、介護を理由に就業が思うようにいかないという記事も最近ではよく見かけます。他の記事では『30代の2割直面 「育児前に介護」 ダブルケア経験者』という文言もありました。そしてその記事に登場するのは決まって女性がほとんどです。まさしくILOが危惧している「子育てなどの無給の仕事が女性の労働市場への主要な障害になっている」というが如実にあらわされているのではないでしょうか。

※ダブルケア:晩婚化・晩産化などの理由から、育児期にある者が親の介護も同時期に行うこと
 

いつかみんなも通る道、今のうちから考えよう……


会社側による女性の子育てへの理解というのは、冒頭の記事の通り世の中に浸透してきているのではないかと感じます。しかし、今度は別の問題として子どもを預けられる場所、子どもの行き場所が足りないということが大きくなってきています。
少し個人的な話ではありますが、実際に僕は友人から、「保育施設の都合で引っ越しをせざるを得なかった」というのを聞いたことがあります。その友人はそれまで住んでいた所では待機している子どもの人数が多すぎて預けることが出来ないからということで、他区に引っ越してしまいました。本当に身近にある問題なのです。
そんなにすぐに劇的に変わるような簡単な問題ではないのかもしれません。それでも今を生きている、未来を生きていく子どもたちが少しでも健やかにのびのびと育って欲しいと願いを込めて、この「子育て」に関する問題を日本だけでなく世界全体で解決していってほしいと思います。

イラスト:Aokimac
 

おまけ!今回のテーマに関連するワードの過去問題も見てみよう!

第94回 午前問題39
第94回 午前問題129
第98回 午前問題90
第101回 午前問題69
第104回 午前問題35
第105回 午前問題34