先日、新聞でこんな記事を見かけました。

都内の区立図書館館長でレビー小体型認知症の当事者でもある三橋昭(71歳)さん。自ら見た幻視を書いたイラストを紹介する幻視展「麒麟模様の馬を見た」が開かれた。
----毎日新聞 2020年8月22日(土)


ということで、今回は認知症の幻視について調べてみよう!

 
用意した参考資料は・・・
○毎日新聞 2020年8月22日(土)の記事
○医学書院刊 『系統看護学講座 専門分野Ⅱ 成人看護学(7)脳・神経』P.225~231
○医学書院刊 『系統看護学講座 専門分野Ⅱ 老年看護 病態・疾患論』P.135~150
○国試過去問題集

 

レビー小体型認知症とは

■症状の特徴:記銘力障害、変動性の認知機能障害、幻視、繰り返す転倒、パーキソニズム
■好発年齢、性差:60~80代、男性に多い。全認知症の約20%を占める。
■病識:初期にはあるが、欠如している
■経過:進行性で、症状の重さが日によって変動する
■基礎疾患:とくになし

 

具体的な症状について

アルツハイマー病に似た記銘力障害が発症し、転倒などパーキンソン病症状が加わり、さらに幻視がみられる。
パーキンソン病症状を伴うのが特徴。
幻視ははっきり見え、人間や鳥、動物、昆虫など、色彩豊かな物で繰り返すことが多い。
■1日の中で認知症状の変動が大きく、周囲の状況がわからなくなる時と、わかっている時が交互に出現する。
■その他に、追いかけられる夢や、けんかなどの暴力的な夢を頻繁にみたり、それと共に、突然起き上がって大声で怒鳴るなどのレム睡眠行動異常がみられる。あるいは、夜間に起き上がって不穏状態になることがある。

 

検査方法

頭部CT・MRIで脳の萎縮を認める。しかし、アルツハイマー病と比較すると海馬の萎縮は軽度であることが多い。
■脳血管性認知症、水頭症などとの鑑別が必要。
■脳血流SPECTでは、後頭葉の血流低下をみとめる。
■神経心理検査では、視覚認知障害が目立ち、図形を書くことが困難である。

 

治療方法

■対処療法が中心。
■認知機能低下に対しては、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬が用いられる。
■レム睡眠行動異常に対しては、クロナゼパムなどの抗てんかん薬が用いられる。
幻視症状に対して抗精神病薬を用いると、ADLが悪化することがある。幻視などには、漢方薬の抑肝散(よくかんさん)が効果的なことが多い。

 

看護

幻視や介護への抵抗に対して、安易に抗精神病薬を投与しない。パーキンソン様症状の誘発、易転倒性などがみられる。
■幻視は、少し電灯を明るくする、物の配置を変えるなどが効果的なこともある。
■幻視の対処として、見間違えそうなもの、例えば、点滴のラインが蛇に、カーテンや布団カバーなどの細かい柄が昆虫に見えたりするので、そういったものを避ける、隠すなどの対応を行う。

 

国試ではこう出る!

【第107回 AM 49】
Aさん(66歳、男性)は、Lewy〈レビー〉小体型認知症であるが、日常生活動作〈ADL〉は自立している。介護老人保健施設の短期入所〈ショートステイ〉を初めて利用することとなった。施設の看護師は、同居している家族から「以前、入院したときに、ご飯にかかっているゴマを虫だと言って騒いだことがあったが、自宅ではそのような様子はみられない」と聞いた。  
入所当日の夜間の対応で適切なのはどれか。
1. 虫はいないと説明する。 ×
2. 部屋の照明をつけたままにする。 ×
3. 細かい模様のある物は片付ける。 ○
4. 窓のカーテンは開けたままにする。 ×
【第106回 AM 58】
Lewy〈レビー〉小体型認知症の初期にみられる症状はどれか。
1. 幻視 ○
2. 失語 ×
3. 脱抑制 ×
4. 人格変化 ×
【第105 PM 101】
Aさん(81歳、女性)は、6年前にレビー小体型認知症と診断された。(中略)かかりつけの病院を受診し、細菌性肺炎と診断され入院した。呼吸器疾患の既往はない。
入院当日、抗菌薬の点滴静脈内注射が開始された。投与開始直後からAさんが輸液ラインを指し「虫がいる」と大きな声を上げている。  
このときの看護師の対応で最も適切なのはどれか。
1. 虫がいないことを説明する。 ×
2. 点滴静脈内注射を中止する。 ×
3. Aさんをナースステーションに移動する。 ×
4. 輸液ラインをAさんから見えない状態にする。 ○

冒頭の新聞記事の三橋さんが初めて見た幻視は飼い猫で、触れようとしたら手がすり抜けたそうだよ。その他にも、二本足でジョギングするヤギや、トランプで遊ぶ動物とロボットなどを見たことがあるそう。どういうものが幻視として見えるのか知っておくと、患者さんの看護をするときも役に立つよね。