先日、朝日新聞に『O-157食中毒6件 同一の遺伝子型』という記事が掲載された。
記事によると……厚生労働省は15日、先月下旬に埼玉や東京など4都県で腸管出血性大腸菌O157による食中毒が6件発生し、いずれも同一の遺伝子型だったと発表した。千葉県内の生産業者が出荷した葉野菜サンチュが原因の可能性があるとして、厚労省は同日、業者に自主回収を要請した。 厚労省によると、埼玉県の高齢者施設で5月25日に集団食中毒が発生。その後東京都、茨城県、福島県の高齢者施設や飲食店で、症状がない人も含めて計19人の感染が確認された。重症者はいないという。厚労省は、野菜を生で食べるときにはよく洗うことなどを注意喚起している。

ということで、今回は「食中毒」に注目して解説!

例えば『食中毒』について、過去に国試ではこのように出題されていた!!

第99回 午後・3
食中毒の原因となるのはどれか。
1.セラチア
2.レジオネラ
3.ヘリコバクター
4.カンピロバクター

正解 4

この問題を新聞記事・ネットニュースから読み解く!!

ジメジメとした梅雨はあっさりと過ぎ去って、今年は早くも夏がきました。暑い日が続いて体がダレてきてしまうと、どうしても冷たいものを口にしたくなってしまいますね。アイス・ジュース・ビール……。普段の食事もそう、冷たいものを選んで食べがちになってしまいます。そうなると、野菜なんかは特に火や熱を通さない「生」で食べられるものが多くなってきてしまいます。今回、冒頭で紹介した記事では「サンチュ」でした。焼肉屋さんに行くとよく目にします。そんな生で食べられる、生で食べがちなお野菜から、食中毒が発生してしまいました。
そして、思い出して欲しいのが昨年の夏です。昨年の夏も食中毒が大いに取り上げられていました。確か「ポテトサラダ」から同じくO-157が検出されたのでしたね。
冬のノロウイルスと同様に、この暑い時期にも増えてきてしまう食中毒。実はもう着実に、その脅威は全国で始まっていました。
まずは、冒頭の記事の4都県から遠く離れた兵庫で起きた食中毒の記事からです。

 

若くてもやはり勝てない! 食中毒の強さと怖さ!

前述した国試の過去問では、食中毒の原因菌は『カンピロバクター』が正解でした。今回起きた事件は、まさしくこの『カンピロバクター』が原因菌だったそうです。
早速みてみましょう。

姫路市は26日、同市駅前町の居酒屋「げんか酒場」で15日に飲食した大学生の男性客6人(21~23歳)が下痢などの症状を訴え、検査した4人全員から食中毒の原因菌のカンピロバクターが検出されたと発表した。市保健所は食中毒と断定し、同店に26~28日の営業停止を命じた。6人はいずれも快方に向かっているという。

——毎日新聞ネットニュース  2018年6月27日(火)

こちらの記事は、地方版の小さな記事でしたが、やはりこうして食中毒というのは現実に現れているのですね。居酒屋でお酒を飲んで、楽しくなっている所にそのような危険性があると考えると、美味しいお酒もおつまみも、どこか恐怖を感じながら口にしなくてはなりません。全然楽しめないし、美味しくも感じられなくなってしまいますね。というのは個人的な酒飲みの意見ですが、こういった飲食店から1人でも食中毒患者が出てしまうというのは本当に怖いことです。店での飲食では、食べる側の注意にはどうしてもお限界があります。それにはやはり、お店側・業者側の絶対的な衛生管理が必要です。その衛生管理という信頼があるからこそ、お店に足を運ぶ訳ですから、これまでより一層厳しく衛生管理に気をつけて欲しいものです。

 

すぐに広がる! 油断大敵!

ひとつ前の記事は姫路の駅前にある居酒屋で食中毒が検出されたという記事でしたが、さらにもうひとつ記事が見つかりました。それがなんと、同じ兵庫県の姫路市でした。どうやら同じお店という訳ではないようですが、やはりこちらも居酒屋からの検出だったようです。
詳しくみてみましょう。

姫路の居酒屋で食中毒続く
姫路市は4日、同市飾磨区中島の居酒屋「串かつ かえで」で6月25日に飲食した男女4人(21~38歳)が普通などの症状を訴え、全員から食中毒の原因菌のカンピロバクターが検出されたと発表した。この日に同店で提供された「ささみユッケ」が原因とみられ、市保健所衛生課は食中毒と断定して4~6日の営業停止を命じた。4人のうち男性(38)が3日間入院したが現在は退院、いずれも快方に向かっているという。姫路では6月15日にも食中毒が発生しており、同課は「鶏肉の生食はカンピロバクター菌に感染する恐れがある」と注意を呼び掛けている。

——毎日新聞ネットニュース  2018年7月5日(木)

こちらは約1週間後の記事です。これだけ短い期間で立て続けに食中毒が起きてしまうのは本当に怖いことです。最初に起きた食中毒から距離もそんなに遠い所という訳でもないようです。それだけにこのお店にも勿論情報が入っていたであろうし、より一層の注意を払っていたはずです。それでもやっぱり食中毒は現れてしまうのですね。
原因と思われるのが「ささみユッケ」、やはり生で口にする食べものです。僕も個人的に非常に好物です。好物なだけに、こういった形で取り上げなくてはならないのが残念です。心のどこかで「今年の夏はちょっとやめておこう」と思っています。でも、こうやって注意して、気にして、食べる物を選ばなければ危険な季節です。それは外食に限らずです。家で作るご飯、その残ったおかずの保存方法等も注意をしなければなりません。「大丈夫でしょ」というのが油断であり、引き金になっていることをお忘れなく!

※厚生労働省のホームページに食中毒にならないための注意点をまとめたページと、鶏肉を扱う上での衛生対策をまとめたページ(pdf)がありましたので、是非一度見てみて下さい。

 

ちゃんと注意すれば問題ない、安心した食事をもっと……


冒頭にも述べましたが、暑いからこそ冷たいものが食べたくなります。生ものを食べたくなります。サッパリしたいのです。
ただやはり、ダラけてしまうからこそ、しっかりと気を引き締めて、ちゃんとした食事を心がけなければなりません。そのためには調理方法・保存方法等のしっかりした安心な食品というのが最低条件になってきますね。「分かってるよそんなこと」、じゃなく、「確かに、そうだ、気を付けよう」という心構えになるだけで恐らく危険性はグっと下がるはずです。そして、飲食店の方々はそれをもっともっと徹底的に気を付けなければなりませんね。
今年は暑い夏、長い夏です。きっとどこかで中だるみしてしまう瞬間があるでしょう。そんな瞬間にこそ、気を付けて欲しいと思います。
安心で安全な楽しい夏にするために、しっかりと注意しながらおいしく食事をいただきたいと思います。

 

イラスト:Aokimac
 

おまけ!今回のテーマに関連するワードの過去問題も見てみよう!

第96回 午前問題109
第100回 午後問題29
第101回 午前問題82
第104回 午後問題3