今回頂いた質問

110回の国試で、漸進的筋弛緩法についての出題がありました。
お恥ずかしながら、「漸進的筋弛緩法ってなに? 授業で習った?」って感じなんですが、具体的に教えてください。

ご質問ありがとうございます。

1.言葉の意味

まず、言葉の意味から説明します。「漸進的」とは「ぜんしんてき」と読み、「少しずつ」という意味です。そのため「漸進的筋弛緩法」とは、「少しずつ力を抜いていく方法」という意味になります。

2.漸進的筋弛緩法とは

「漸進的筋弛緩法」は、リラクセーション技術として、1920年代にエドモンド ジェイコブソンによって考案されました。対象は、不安や恐怖、焦燥感が強い精神疾患患者です。
その方法は、体の一部に力をしっかりこめて、その後に力を抜き、力が抜けた状態を味わうというものです。この技術を体得することで、患者はいつでも力を抜くことができるようになり、リラクセーション状態を意識的につくりだせるようになります

例えば、特定の物や状況に恐怖感を覚えやすい人が、その物や状況に接する前に、漸進的筋弛緩法を用いることで、恐怖を感じにくくすることができるようになります。1920年頃は、不安や恐怖、焦燥感が強い患者に使用できる薬物が少なかったため、このような「精神療法」が積極的に活用していました。現在の精神医学では、治療の中心は薬物療法となり、精神療法は、薬物療法を補完する治療法として用いられるようになりました。

3.その他の精神療法

精神療法には様々な種類があり、参考までに以下に一部を紹介しておきます。

余談ではありますが、筆者はかつて、術前の患者さんのリラクセーションの方法として、漸進的筋弛緩法を活用し、その効果を調べたことがあります。
実際に、脈拍数が落ち着き、手足の温度が上昇し、はっきりとしたリラクセーション効果が得られました。みなさんも、試験の前の緊張をとりたいときなどにぜひ活用してみてください。

 
以上が質問の回答です。
では、「漸進的筋弛緩法」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第110回看護師国家試験 午前問題33

漸進的筋弛緩法の目的はどれか。

1. 気道の確保
2. 緊張の緩和
3. 麻痺の改善
4. 全身麻酔の導入 

1.× 気道確保のためには頭部後屈顎先挙上法、下顎挙上法などを用いる。
2.○ 漸進的筋弛緩法とは、少しずつ筋肉の緊張をとってリラクセーション効果を得る技法であり、その目的は緊張の緩和である。
3.× 緊張や不安、恐怖を緩和させるのが目的である。
4.× 全身麻酔の導入において筋緊張をとる必要があるが、その場合は漸進的筋弛緩法ではなく薬剤を用いる。
正解…2

●基礎看護学/精神看護について理解を深めるには、科目別強化トレーニング

編集部より

精神医学の学習をする場合、薬物療法の知識は必須ですが、薬物療法だけでは限界があるため、精神療法を併用することが多いです。併せて学習を深めていきましょう。また、リラクセーション技法は、自律神経のうち副交感神経を刺激し、優位にする治療法です。自律神経についても同時に学習しておくといいですね。