今回頂いた質問

小児実習で、ファロー四徴症の患児を受け持つことになりました。
実習中、どのような症状について観察したらよいでしょうか?

ご質問ありがとうございます。

まずは、疾患や病態についてアセスメントしましょう。
アセスメントを行う上で覚えておきたいキーワードは「そもそも」「どうなる?」の2つです。

「そもそも」ファロー四徴症とは?

ファロー四徴症とは、心臓に4つの奇形をもつ先天性(うまれつき)の病気のことです。
4つの奇形とは、以下のことです。
1)大動脈騎乗:右心室と左心室との間に大動脈がまたがり、両方の心室を流れる血液が全身へと流れる。
2)肺動脈狭窄:右心室から肺へ流れる血液の通路が狭くなるため、肺の血流が途絶える。
3)心室中核欠損:右心室と左心室を隔てる壁に穴が開いているため、両方の心室を流れる血液が行き来する。
4)右心肥大:本来、右心室は左心室に比べて大きさも圧も小さい。
  ところが、心室中核欠損によって両方の心室の圧が一定になるため、結果的に右心室が肥大する形となる。

つまり、肺動脈狭窄と心室中隔欠損によって、肺動脈に流れるはずの静脈血(二酸化炭素が多く含まれる)が、右心室→左心室→全身へと流れてしまうことになります。

ファロー四徴症になると「どうなる?」

ファロー四徴症では、肺動脈に流れるはずの静脈血(二酸化炭素が多く含まれる)が全身へと流れていきます。よって、全身の酸素が不足した状態(低酸素血症)を起こします。最悪の場合は、死に至る危険性もあります。この「死への危険性」こそが、最も優先度の高い看護問題となります。

●観察ポイント●

低酸素血症では、チアノーゼ・無酸素発作(チアノーゼと呼吸困難が強く出現する)・ばち指などの症状がみられます。つまり、実習中はこれらの症状の有無や程度を観察項目とし、急変時の早期発見に努める必要があります。

観察ポイントを考える上で大切なのは「解剖生理」と「病態」の理解です。
国家試験でも問われる内容ですので、しっかりとおさえておきましょう。

回答は以上になります。
では、第100回の国家試験で出題された問題を解いてみましょう。

問題

第100回 看護師国家試験 午前問題14

先天性疾患はどれか。

1. インフルエンザ脳症
2. ファロー四徴症
3. 気管支喘息
4. 腎結石

1.× 2.○ 3.× 4.×

解説
1.インフルエンザ脳症は、インフルエンザウイルスによる感染によって起こるものです。
 先天性ではありません。
2.上記のとおり。
3.気管支喘息は、気道内のアレルギー性炎症です。先天性ではありません。
4.腎結石は、シュウ酸カルシウムをはじめとする成分が尿中に飽和状態となり、結晶化する疾患です。
 先天性ではありません。

答え…2

編集部より

小児外来において、看護師は短時間の間に小児の外観・言動、家族の言動や会話などから、ハイリスクな状況を把握する必要があります。「健康相談・育児相談など」をするチャンスでもありますが、短い時間ですので、「緊急度の判断と感染予防」「虐待や食生活などの潜在的問題の早期発見」などが優先されます。