今回頂いた質問

血液透析を受けている患者さんに、生野菜や果物の摂取量を制限するのはなぜですか?

ご質問ありがとうございます。

生野菜や果物にはカリウムが多く含まれています。カリウムは、そのほとんどが腎臓から尿中へ排泄されます。血液透析を受けている患者は、腎臓の機能が充分ではありません。そのため、血液透析を受けている患者が生野菜や果物を制限なく摂取すると、カリウムが排泄されず血液中に蓄積し、高カリウム血症をきたします。高カリウム血症になると、不整脈や心不全など生命に危険を及ぼす可能性があることから、血液透析を受けている患者は、カリウムの摂取量を制限する必要があります(摂取量の目安は1日1,500mg以下)。
ただし、カリウムは水に溶けやすく、熱に弱い性質があるので、煮る・焼く・炒めるなどの調理によって減らすことができます。

血液透析の合併症を予防するための自己管理として、食事療法は重要な位置を占めていますが、食事制限によるストレスを抱える患者は決して少なくありません。患者への食事指導では、調理方法や代用できる食品例などを提案するなど、患者が少しでも意欲的に取り組めるよう工夫することが大切です。

では、第100回の国家試験問題を実際に解いてみましょう。

問題

第100回 看護師国家試験 午前問題41

血液透析を受けている患者への食事指導で適切なのはどれか。
1. 乳製品の摂取を勧める。
2. レバーの摂取を勧める。
3. 穀物の摂取を制限する。
4. 生野菜の摂取を制限する。

1.× 乳製品にはたんぱく質が含まれている。腎臓における濾過機能の低下により、たんぱく質の代謝産物である尿素窒素(老廃物)が体内に蓄積し、尿毒症のリスクを高める。よって、血液透析を受けている患者は、たんぱく質の摂取量にも注意が必要である。また、たんぱく質に含まれるリンの摂取量にも注意が必要である。
2.× レバーもたんぱく質を多く含む。選択肢1の解説のとおり。
3.× たんぱく質の制限により、摂取エネルギー量が減るため、穀物(でんぷん)を中心にエネルギーを摂ることが大切である。
4.○ 正しい。生野菜にはカリウムが多く含まれているため、摂取を制限する。

答え…4

編集部より

災害時、避難所などでは食材が手に入りにくくなり、塩分を多く含む保存食やカリウムの多いものしかないといった場合があります。腹膜透析であれば、器具さえあればその場で透析することは可能ですが、血液透析中の患者さんが、被災した場合、数日間透析を受けられないことも考えられます。その際は高カリウム血症や心不全を起こさないように、厳重な食材管理が必要となります。避難用食材の準備、また、カリウムを減らす調理法なども普段から学んでおきましょう。