今回頂いた質問

110回の国試で、ギラン・バレー症候群に関する出題がありました。全然勉強したことがありません。国試出題に備えて、押さえておきたいポイントを教えてください。

ご質問ありがとうございます。

1.ギラン・バレー症候群とは?

「ギラン・バレー症候群」とは、感染をきっかけとして発症する末梢神経の障害です。原因となる感染症はさまざまですが、カンピロバクターという胃腸炎を起こす細菌の頻度が高いといわれています

人体は、細菌などに攻撃されたとき、白血球のひとつであるBリンパ球が抗体(武器のようなもの)を産生します。抗体は細菌を攻撃しますが、誤って自分の末梢神経のガングリオシドという成分を攻撃してしまいます(この抗体を、「抗ガングリオシド抗体」といいます)。自分自身を攻撃してしまうこと自体、あってはならないことで、このような病態を自己免疫性疾患といいます。

 

2.ギラン・バレー症候群の主症状

ギラン・バレー症候群は、感染から1~3週間後に発症し、日~週単位で進行します。障害されるのは、ガングリオシドを含む軸索や髄鞘で、特に運動神経が障害されます

神経細胞(ニューロン)の構造

その結果、典型例では、両側の下肢の筋力低下で始まり、体幹から上肢へと弛緩性麻痺(筋肉の緊張が抜けたような状態になる麻痺)が左右対称に上行します。重症例では呼吸筋麻痺も生じて、人工呼吸器が必要になります。
しかし、予後は良好で、時間がかかりますが修復され、麻痺は改善に向かいます。

 
 
以上が質問の回答です。
では、「ギラン・バレー症候群」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第110回看護師国家試験 午前問題

Guillain-Barre〈ギラン・バレー〉症候群で正しいのはどれか。

1. 若年者に多い。
2. 遺伝性疾患である。
3. 骨格筋に病因がある。
4. 症状に日内変動がある。
5. 抗ガングリオシド抗体が出現する。

1.× 若年者ではなく、壮年期以降に発症する場合が多い。
2.× 感染を契機に起こる自己免疫性疾患である。
3.× 神経細胞の軸索や髄鞘の障害が原因である。
4.× 「日内変動」とは、24時間周期で症状が良くなったり悪くなったりすることである。ギラン・バレー症候群は、日~週単位で症状が進行する(悪くなる)のが特徴である。
5.○ 感染を契機として、自分の神経細胞を誤って攻撃してしまう「抗ガングリオシド抗体」が出現する。この抗体の存在が診断の決め手となる。
正解…5

●疾病の成り立ちと回復の促進について理解を深めるには、科目別強化トレーニング

編集部より

神経細胞の構造や、中枢神経と末梢神経の違い、神経伝達のしくみなど、基本的な事項を確認しておいてください。また、自己免疫性疾患は、アレルギー(白血球の働きが過剰になってしまった状態)のひとつです。アレルギーは4種類あるので確認しておきましょう。有名な自己免疫性疾患には、バセドウ病、突発性血小板減少性紫斑病、1型糖尿病、全身性エリテマトーデスがあります。