今回頂いた質問

110回の国試で、フォローアップミルクに関する出題がありました。今の育児って、母乳推奨ですよね。だから、フォローアップミルクについて出題されるなんて、ちょっとびっくりしました。フォローアップミルクの特徴などを教えて頂けますか。

ご質問ありがとうございます。

1.フォローアップミルクとは?

フォローアップミルクは、生後9カ月以降(離乳完了後)の鉄欠乏予防のために作られたミルク(牛乳の代替品)のことであり、母乳の代替品となる育児用ミルクとは別のものです。
牛乳には良質なたんぱく質やカルシウムが含まれていますが、鉄分の含有量は少なめです。その欠点を補うため、フォローアップミルクには、鉄分やビタミンC(鉄分の吸収を高める)がより多く添加されています。

2.なぜ生後9カ月以降になると鉄欠乏を起こしやすいのか?

産まれたばかりの赤ちゃんは、妊娠中に母親からもらった鉄分(貯蔵鉄)を蓄えていますが、生後6カ月以降になると、体内の貯蔵鉄は少しずつ減少し、生後9カ月頃にはほとんどなくなります。
また、産まれたばかりの赤ちゃんは、母乳や育児用ミルクからも鉄分を摂ることができますが、生後9カ月頃になると、離乳食は1日3食となり、母乳や育児用ミルクを飲む量が減ります。また、離乳期は食事量が少なく、離乳食だけでは十分な鉄分を摂ることができません。特に、母乳育児の場合では、母乳中に含まれる鉄分の含有量が少ないため、より鉄欠乏を起こしやすいといわれています。
さらに、生後9カ月頃になると、赤ちゃんの身体は著しく成長するため、より多くの鉄分を必要とします。
これらの理由から、生後9カ月以降の赤ちゃんは鉄欠乏を起こしやすいといわれています。

3.フォローアップミルクはいつから与える?

フォローアップミルクを与える時期としては、生後9カ月以降(離乳完了後)が望ましいといわれています。なぜなら、フォローアップミルクには、育児用ミルクに添加されている微量元素(銅や亜鉛など)が添加されておらず、離乳が進まないうちにフォローアップミルクを与え続けることで、必要な栄養素が不足したり、栄養バランスが崩れたりするなど、赤ちゃんの発育に影響を与える可能性があるためです。離乳が進まない時期は、フォローアップミルクではなく、母乳や育児用ミルクで補うのが望ましいです。

4.フォローアップミルクはどのタイミングで与える?

フォローアップミルクは、離乳食を食べ終わった後に与えるのが理想的です。離乳食を食べる直前や、食事と食事のあいだに与えると、フォローアップミルクで空腹が満たされてしまい、離乳食が進まなくなる場合があるためです。

5.フォローアップミルクは必ず飲ませなくてはいけないのか?

離乳食が順調に進んでおり、赤ちゃんの発育が成長曲線に沿っているようであれば、フォローアップミルクを飲ませる必要はありません。鉄分が不足しないように、赤身の肉や魚、レバー、大豆製品、緑黄色野菜などを離乳食として積極的に取り入れるよう工夫できるのが望ましいです。

6.フォローアップミルクではなく、牛乳を与えてもよい?

赤ちゃんが1歳に満たない場合は、牛乳を与えないほうが良いとされています。なぜなら、牛乳に含まれるカルシウムとリンが鉄分の吸収を妨げる可能性があるためです。また、1歳未満の赤ちゃんは、消化吸収の機能が未熟であり、牛乳に含まれるたんぱく質を十分に消化することができず、腸管や腎臓に負担がかかってしまったり、アレルギー反応を誘発するリスクが高まったりするためです。

 
以上が質問の回答です。
では、「フォローアップミルク」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第110回看護師国家試験 午後問題56

フォローアップミルクで正しいのはどれか。

1. 母乳の代替品である。
2. 鉄分が添加されている。
3. 離乳食を食べる直前に与える。
4. 離乳食開始の時期から与え始める。

1.× 母乳の代替品である。
2.○ 正しい。
3.× 離乳食を食べ終わった後に与える。
4.× 離乳食完了の時期(生後9カ月以降)から与え始める。
正解…2

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編集部より

新生児期や乳児期は、母子の健康にとって極めて重要な時期ですが、多くの親にとって、初めての子育てには何かと不安や心配事が募るものです。特に、授乳や離乳については、育児雑誌やインターネットなどを通してたくさんの情報が得られる一方で、どれが正しい情報なのか判断に迷うことも珍しくありません。実際に、乳幼児健診をはじめ、小児科の外来や病棟などでは、(おもに母親から)子育てに関するさまざまな相談が寄せられます。そのような場面にあたっては、医療者として、母親の気持ちに寄り添いつつ、根拠のある正しい情報を提供することで、子育てへの安心感や自信につながるような関わりをもつことが望ましいでしょう。