今回頂いた質問

国試の過去問に挑戦していたら、不妊治療に関する公的医療保険の扱いが現在と異なっていました。現在の不妊症の実態や不妊治療について教えてください。

ご質問ありがとうございます。

晩婚化が進む中、不妊症の患者は増加しています。不妊症の男女は10組に1組といわれていますが、最近では7組に1組、将来的には3.5組に1組になるという統計もあります。
今回は、不妊の原因や不妊症治療、その保険適応などについて説明していきます。

1.不妊の原因

不妊症とは、具体的に「妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年間妊娠しないもの」(公益財団法人 日本産科婦人科学会HPより)をいいます。
以前は「2年間」だったものが、平成27年(2015年)に変更になりました。
その背景には、女性の妊娠年齢が上昇するなかで、より早期に適切な不妊治療の受診につなげるためといわれています。

 

2.不妊の原因

1)排卵因子(無排卵・卵子の未成熟・ホルモン異常など)
2)卵管因子(卵管通過障害など)、
3)男性因子(無精子症・乏精子症・精子無力症・精子奇形症・精管通過障害など)

があります。他にも、性交障害や特に異常はみられないのに妊娠しないものなど、複数の因子が重なり合うなど多岐にわたっているのが現状です。

ここで、不妊症の主な検査と治療についてまとめておきましょう。

不妊症の主な検査と治療

不妊因子検査治療
排卵因子基礎体温表
ホルモン測定
超音波検査
性交日指導
排卵誘発薬(クロミフェン)
排卵誘発薬(ゴナドトロピン)
男性因子精液検査
ヒューナーテスト
人工授精
体外受精(顕微授精)
卵管因子子宮卵管造影
通気通水検査
子宮鏡
卵管鏡・腹腔鏡下手術
子宮鏡手術
体外受精

 

3.保険適用の条件と注意点

元々、不妊治療は高額なため、妊娠を望むカップルでもなかなか治療を受けることができないースもありました。
そこで、令和4年(2022年)より公的医療保険の対象となり、人工授精や体外受精などの「一般不妊治療」と「生殖補助医療」の窓口負担は、原則3割になりました。

また、保険適用には条件があります。
・年齢制限:
女性の年齢が治療開始時点で40歳未満、または40歳以上43歳未満の場合に保険適用されます。
・回数制限:
40歳未満の場合:通算6回まで(1子ごと)。
40歳以上43歳未満の場合:通算3回まで(1子ごと)。

一方で、保険適用になったことによる制限もあります。
・混合診療の禁止:
保険診療の範囲に含まれない治療を、保険適用中の治療と同時に行うことは原則できません。
・医療の標準化:
保険適用により標準的な治療が提供されるため、これまでは受けられた個々の状況に応じた高度な治療が制限される可能性があります。

 
 
不妊症は、長期にわたる治療を必要とすることも少なくありません。カップルのニーズに合わせた検査や治療を選択できるよう、看護者は根拠に基づく正確な情報を提供して、その選択を支援していく必要があります。
また、検査・治療に伴う悲嘆反応やストレスを受けとめ、自尊心の低下を予防することや、カップル間の考えの調整をはかっていくことも大切になります。
関連参考:プレコンセプションケアとは

回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第112回 看護師国家試験 午前問題62

不妊症について正しいのはどれか。

1. 約6割は原因不明である。
2. 検査に基礎体温測定がある。
3. 治療の1つに不妊手術がある。
4. 女性の年齢は治療効果に影響しない。

正解…2
1. × 原因不明の割合は、10~20%程度とされている。
2. ○ 女性の性周期の評価に用いられる基礎体温測定は、侵襲性が低く、不妊症において早期に用いられる検査方法のひとつである。
3. × 不妊手術とは、生殖機能を永続的に絶つ手術のことである。
4. × 加齢による卵子の質の低下で妊娠率は下がるといわれている。30代前半の着床率は30~40%であるが、40代では10~20%以下になる。男性も年齢が高くなるにつれ、不妊割合が増加することがわかっている。

●「不妊症」の理解を深めるには、科目別強化トレーニング「母性看護学」

編集部より

不妊治療が保険適用になったことにより、妊活や不妊が広く知られるようになりました。一方で、SNSなどには医学的根拠に基づいていない情報もあふれています。妊活や不妊に限ったことではありませんが、根拠に基づきた知識を習得し、患者様に適切な情報・看護が提供できる看護師を目指しましょう。