今回頂いた質問
114回の国試で、プレコンセプションケアについての問題がありました。
出題基準に載ってるんですね……知りませんでした。
どんな点を理解しておけばいいでしょうか。
ご質問ありがとうございます。
プレコンセプションケアは、ここ10年ほどで注目されるようになった、比較的新しいケアの考え方です。医療現場の人も含めて、まだ耳馴染みがない、という方も多いのではないのでしょうか。
看護師国家試験の出題基準では、女性や母子へのケアに関する概念の一つとして挙げられています。
1.プレコンセプションケアとは
プレコンセプションとは、プレ(~の前に)+コンセプション(受胎)の組み合わせで、赤ちゃんを妊娠する前の段階を指します。
プレコンセプションケア(Preconception care)とは、将来の妊娠を見据えて女性やカップルのセルフケアや健康を支援することです。妊娠をするのは女性自身だとしても、妊娠に向けて生活や身体を整えるのはパートナーにとっても重要なケアとなります。
また、今は妊娠を希望してないという人に関しても、将来妊娠を希望したときに備えて知識の提供や健康維持の支援を行うこともプレコンセプションケアの範疇となります。
「妊娠前の短期間だけ何かする」のではなく、幼少期・思春期・青年期からの継続的な健康支援の一環としてプレコンセプションケアを行うことが大切です。
2.プレコンセプションケアの内容
プレコンセプションケアには、具体的にこのような内容が含まれます。
〇 生活習慣の改善(栄養管理、禁煙、適正体重の維持)
〇 慢性疾患の管理(糖尿病、てんかんなど)
〇 精神的サポートやライフプランニング
〇 性教育(本人の望むタイミングで、妊娠・出産を実現するための知識)
3.その他の定義との関連性
性教育では、ただ妊娠や避妊に関する生物学的・医学的な知識を提供するだけでなく、パートナーシップやコミュニケーション、自己決定の支援も含まれます。このように、広い意味で性に関する教育を行うことを「包括的性教育」といいます。
プレコンセプションケアは、女性自身やカップルが、自分たちの望むタイミングで、希望する形での妊娠・出産を迎えるためのセルフケアや健康を支援することであり、決して「子どもを産まないと一人前じゃない」などと子どもを産み育てることについて強く推し進めるようなかかわりを持つことではありません。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(個人が自分の身体や性に関わることを、自己決定権に基づいて自由に選択し、決められる権利のこと)を前提に、ジェンダーや性の多様性、人生の選択の多様性を尊重しながら支援することが大切です。
以上が質問の回答です。
では、「プレコンセプションケア」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。
問題
第114回看護師国家試験 午前問題66
プレコンセプションケアについて正しいのはどれか。
1. ケアの対象は女性に限定されている。
2. 母体保護法によって規定されている。
3. 国際連合〈UN〉によって提唱されている。
4. 将来の妊娠に向けた健康の保持増進を目的としている。
1.× ケアの対象には、妊娠前の女性自身だけでなく、そのパートナーも含まれます。
2.× 法律によって規定されたケアではありません。
3.× 国際連合による提唱は行われていません。
4.○ 正しい。
●「母性看護学」について理解を深めるには、科目別強化トレーニング
編集部より
プレコンセプションケアは、産婦人科以外の診療科で働く場合でも、慢性疾患と共に生きている患者さん、遺伝疾患を持つ患者さんなど、妊娠可能年齢の患者さんに関わるうえで大切なケアの視点です。また、自分自身のライフプランニングをする上でも、必要な知識となります。
ぜひ、妊娠に向けた女性やそのパートナーにとって、どのようなケアが、どのようなかかわりが必要になるか、改めて理解を深めてみてくださいね。