今回頂いた質問
114回の国試で、ダイバーシティについての問題がありました。
最近耳にすることも増えましたが、何となくの意味しか捉えられていません。どういうことなのでしょうか。教えてください!
ご質問ありがとうございます。
最近、医療現場でもよく耳にするようになった「ダイバーシティ」ですが、言葉だけが独り歩きしており、実際にどのような意味を持つのか分かりづらいと感じている方も多いかもしれませんね。
今回は、ダイバーシティの基本的な意味から、医療・看護の現場でなぜ重要視されているのかまで、わかりやすく解説していきます。
国家試験でも出題されているテーマですので、この機会に一緒に理解を深めていきましょう!
1.ダイバーシティとは
ダイバーシティ(diversity)とは、英語で『多様性』を意味する言葉です。
人はそれぞれ、年齢、性別、国籍、文化、宗教、価値観、障害の有無など、さまざまな違いを持っています。
ダイバーシティとは、こうした違いを認め合い、互いを尊重し、それぞれの能力や特性を最大限に活かそうとする考え方を指します。
2.なぜ医療現場でダイバーシティが求められているのか
― ケアを受ける側だけでなく、ケアを担う側にも“多様性”がある ー
(1)医療を受ける患者の多様性
医療を受ける患者は、それぞれ異なる生活背景や価値観を持っています。
たとえば、宗教上の理由から輸血を拒否する患者や、食事制限(ベジタリアン、ハラール食など)を必要とする患者がいます。
また、LGBTなどの性的マイノリティに該当する患者に対しては、性別の記載や呼称への配慮、本人が希望するパートナーへの情報提供や面会対応など、性自認や家族観を尊重した医療の提供が求められます。
こうした違いを理解せず画一的なケアを行うと、無意識の差別や偏見によって患者を傷つけたり、必要なケアの提供が困難になったりすることがあります。
そのため、一人ひとりの背景を尊重し、患者の個別性に応じた柔軟な対応を行うことが重要です。
(2)医療を提供する看護師スタッフがもつ多様性
医療現場で働く看護師スタッフも、さまざまな背景を持っています。
経歴や職務経験は人それぞれ異なり、新卒で入職した看護師、同じ職場で長く働き続けている看護師、他施設で経験を積んできた看護師などがいます。
また、ライフスタイルや勤務形態も多様化しており、フルタイム勤務に加え、子育てや介護と両立しながらパート勤務や時短勤務を選択するスタッフも見られます。
さらに、看護師は女性が多い職業とされてきましたが、近年では男性看護師の活躍も広がり、性別にかかわらず、それぞれの特性や能力を発揮できる環境づくりが求められています。
こうした背景の違いを尊重し、互いの強みを活かすことが、質の高いチーム医療を実現するうえで重要です。
以上が質問の回答です。
では、「ダイバーシティ」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。
問題
第114回看護師国家試験 午前問題34
患者の個別性を理解するために必要な概念はどれか。
1. ダイバーシティ
2. パターナリズム
3. プライマリヘルスケア
4. ソーシャルインクルージョン
1.○ 正しい。
2.× パターナリズムとは、強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益を守るために、本人の意思に反して行動を制限したり介入したりすることである。
3.× プライマリヘルスケアとは、すべての人が健康に生きる権利を持つという考えのもと、住民が自分たちの健康づくりに主体的に関わることを大切にする理念である。
4.× ソーシャルインクルージョンとは、社会的に弱い立場にある人を含め、すべての人が排除されることなく地域社会に参加し、共に生きることを目指す理念である。
●「健康支援と社会保障制度」について理解を深めるには、科目別強化トレーニング
編集部より
近年の国家試験では、「患者の個別性を尊重する姿勢」や「多様性への理解」を問う問題が出題されています。聞き慣れないカタカナ用語も多く、覚えにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。
学習の進め方としては、単にキーワードやその意味を丸暗記するのではなく、患者さんの事例を具体的にイメージしながら学習を進めていくことがコツです。そうすることで、キーワードの本質的な意味や、似た用語との違いが明確になり、より記憶に定着しやすくなるでしょう。
これらの学びは、看護倫理や権利擁護をはじめとする、看護師としての基本姿勢を支える大切な土台となります。この機会に、しっかりと理解を深めておきましょう。