今回頂いた質問
腹痛の患者さんのアセスメントが難しいです。関連痛について教えてください。
腹痛は発生のメカニズムから、平滑筋の収縮や被膜の伸展による消化管や実質臓器への刺激で起こる内臓痛、壁側腹膜に対する刺激で起こる体性痛(壁側痛)、そして関連痛の3つに分けられます。まず、違いを表で確認してみましょう。
●腹痛の分類
内臓痛 | 体性痛(壁側痛) | 関連痛(放散痛) | |
---|---|---|---|
発生機 | 管腔臓器の伸展・れん縮、虚血、化学的刺激 | 壁側腹膜・腸間膜・横隔膜の炎症 | 体性知覚神経への刺激 |
発生時期 | 病初期 | 進行期 | 内臓痛の増悪期 |
部位 | 腹部正中、局在は不定 | 炎症臓器の近傍、局在は明瞭 | 刺激を受けた体性知覚神経の支配領域の皮膚・筋肉 |
性状 | 鈍痛、間欠性 | 強い痛み、持続性 | 鋭い痛み |
求心性線維 | 自律神経 | 脳脊髄神経 | |
受容体 | 平滑筋受容体・化学受容体 | 漿膜受容体 | |
有効薬物 | 鎮けい薬、酸分泌抑制薬 | 鎮痛剤(非ステロイド系・非オピオイド系) |
ご質問の関連痛は、内臓痛が皮膚に投射して、皮膚の痛みとして感じられることをさします。内臓からの痛みを伝える求心線維が脊髄で線維を変えるときに、その一部が皮膚からの求心線維と共通の神経線維に接続することで起こると推測されています。
心筋梗塞のような心臓の痛みは左肩~左腕内側に関連痛を、虫垂炎の初期には上腹部に痛みが放散するなどが代表的な例です。臓器によって関連痛を生じる部位が決まっているので、関連痛の有無と場所を知るのは臨床的に重要になります。
腹痛の看護としては、
・部位・性質・程度・持続時間、食事や排泄など、腹痛との関連事項の観察
・嘔気・嘔吐・下痢・便秘・発熱などの随伴症状、バイタルサインの観察
・苦痛緩和のため、安楽な体位・腹壁の緊張緩和・腹部圧迫の除去
・一般的には温罨法、急性炎症には冷罨法
などを行います。疼痛が増強して正確な疼痛部位の査定ができなくなるため、フィジカルアセスメントでは痛みのある部位を最後に触診するようにしましょう。
回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。
問題
第96回看護師国家試験 午後問題7
心筋梗塞で左上腕内側と左肩とに痛みを感じた。
この痛みはどれか。
1. 表在痛
2. 深部痛
3. 内臓痛
4. 関連痛
正解…4
「人体の構造と機能」の理解を深めるには
科目別強化トレーニング「人体の構造と機能」
編集部より
「アイスクリーム頭痛」という言葉を聞いたことはありますか?その言葉の通り、アイスクリームやかき氷を食べるとキーンと頭痛がするあの症状です。これもじつは正式な医学用語で、神経が引き起こす関連痛の1つと考えられています。詳しくは「アイスクリーム頭痛」のページをどうぞ。