今回頂いた質問

今度受け持つ患者さんの病名が出血性脳梗塞と言われました。脳梗塞なのに出血ってどういうことですか?

ご質問ありがとうございます。梗塞なのに出血ってわかりにくい病名ですよね。出血性梗塞は、その起こり方から表現すると梗塞後の出血ということになります。

脳梗塞の数日後にCTを撮影すると、脳梗塞内に出血が現れていることがあります。これを出血性梗塞と呼びます。脳梗塞を起こした後に詰まっていた血栓が溶けて血流が再開した際に、血管の弱った部分から血液が漏れることなどによって起こります。水道管に何かが詰まって水が流れなくなった場合を想像してみましょう。詰まっていた物が取れると水の流れは再開しますよね。そのとき、もし水道管の壁に痛んで弱くなっている部分があった場合どうなるでしょうか。そこから水が漏れたり、場合によっては破裂したりしてしまいます。このように、梗塞を起こしていた血管が再開通した場合や、側副血行路が新しく作られる時期に出血性梗塞は起こります。脳梗塞発症後、数日から数週間以内に起こることが多いので、特に抗凝固療法が始まったら注意してみていくことが大切です。

脳梗塞は発生機序により、大きく3つに分類されます。
(1)動脈内に血栓が形成され血管を閉塞する脳血栓(症)
(2)脳以外の場所(主に心臓)でできた血栓が脳に流れてきて血管を詰まらせる脳塞栓(症)
(3)主幹動脈の分水嶺域に起きる血流不全による血行力学性
ご質問の出血性梗塞は、(2)の脳塞栓で多く見られるといわれています。梗塞の範囲が広いほど出血しやすく、また出血の範囲が広いほど予後は不良です。

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回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第104回 看護師国家試験 午後問題95

Aさん(65歳、男性、会社員)は、午後2時、会議の最中に急に発語しづらくなり、右上下肢に力が入らなくなったため、同僚に連れられて救急外来を受診した。既往歴に特記すべきことはない。来院時、ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅰ-3、瞳孔径は両側2.0mm。呼吸数18/分、脈拍60~80/分、不整で、血圧176/100mmHg。右上下肢に麻痺がある。午後4時、Aさんの頭部CTの所見で特に異常は認められなかったが、MRIの所見では左側頭葉に虚血性の病変が認められた。
Aさんは心原性の脳梗塞と診断され、入院後に治療が開始された。入院後5日、意識レベルがジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-30まで低下した。頭部CTで出血性梗塞と脳浮腫とが認められ、気管内挿管・人工呼吸器管理を行い、マンニトールを投与してしばらく経過をみることになった。
この時点の看護で適切なのはどれか。2つ選べ。

1. 電気毛布で保温する。
2. 瞳孔不同の有無を観察する。
3. 水分出納を正のバランスに管理する。
4. Cushing〈クッシング〉現象に注意する。
5. ベッドを水平位にして安静を維持する。

1.× 体温が上昇すると、脳梗塞の進行の危険がある。
2.○ 病態が悪化していないか確認するために、瞳孔の大きさ・左右差を観察する必要がある。脳ヘルニアの早期には患側に大きな瞳孔不同が出現することがある。
3.× 脱水や水分過剰、電解質異常に注意する必要がある。水分出納が正のバランスに偏りすぎるのは、脳浮腫を助長させる要因となる。
4.○ 頭蓋内圧亢進時の血圧上昇と徐脈をクッシング現象という。頭蓋内圧亢進が続くと脳浮腫が増強するので注意を要する。
5.× 起立性低血圧がないことを確認しながら、セミファウラー位にする。

正解…2・4

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編集部より

上記の国家試験の問題文でも、まず心原性の脳梗塞が起こり、その5日後に「梗塞後の出血」として出血性脳梗塞が起こっていますよね。
頭蓋内で出血が起こったり、脳浮腫などによって頭蓋内圧が亢進したりすることは、最悪の場合、脳へルニアを引き起こします。脳ヘルニアはいったん起きてしまうと致死的なので、たいへん危険です。皆さんも正しく知識を身に着けて、臨床での対応力を磨いておきましょう。