今回頂いた質問
112回の国試で、HPV検査についての出題がありました。
ワクチン接種も再開されましたし、今後も国家試験に出るのかなぁ、と思います。どんなことを覚えておけばいいでしょうか。
ご質問ありがとうございます。
質問者さんのご指摘の通り、厚生労働省は、平成25年(2013年)以降中止していたHPVワクチン接種の積極的勧奨を、令和4年(2022年)4月に再開しました。
今回は、HPVがどのようなウイルスなのか、そして子宮頸癌を予防するワクチンや早期発見のための検査に関する知識を紹介します。
1.ヒトパピローマウイルス〈HPV〉について
HPV感染症は性行為を通じて感染する性感染症のひとつで、HPVは性的接触経験のある女性であれば、50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。
HPVは皮膚や粘膜に感染し、尖圭コンジローマ(性器の皮膚病変を起こす感染症)や子宮頸部の異形成(異常細胞の変化)などを引き起こす可能性があります。
また、HPVにはさまざまな種類があり、一部はがんの原因となる可能性があります。特に、子宮頸癌や陰茎癌、肛門癌、口腔癌などに関連があります。このウイルスは、子宮頸癌との関連が有名ですが、女性だけでなく、男性にも感染する可能性があります。
2.HPVワクチンについて
HPVワクチンを接種することで、HPVの中でも子宮頸癌をおこしやすい種類のものの一部の感染を防ぐことができます。
現在、日本国内で使用できるワクチンは、防ぐことができるHPVの種類によって、2価ワクチン、4価ワクチン、9価ワクチンがあり、すべて不活化ワクチンです。ワクチンは1度だけではなく、一定の間隔をあけて2回または3回、筋肉注射にて接種します。接種するワクチンや年齢によって、接種のタイミングや回数が異なります。現在、小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、定期接種が行われています。
3.子宮頸癌検査について
HPVの多くは一過性の感染で、2~3年以内に感染が自然消失します。感染が持続した場合には、数年~数10年かけて、異形成を経て、子宮頸癌へと進行します。軽度の異形成の80%はがんに進展せず、一部は自然に消えてなくなります。癌になる前の異形成の時点て治療が行えるように、子宮頸部の定期的な検査が行われます。20歳以上の女性は、2年に1度検査を受けることが奨励されています。
検査では、子宮頸部の細胞を取り出し、HPV感染しているかどうかを調べるHPV検査と、癌や異形成がないか調べる細胞診があります。これらのスクリーニング検査で異常が発見された場合、精密検査としてコルポスコープ〈腟拡大鏡〉検査を行います。子宮頸部を詳しく見て、異常な部位が見つかれば、組織を一部採取して悪性かどうかを診断する検査です。
以上が質問の回答です。
では、「HPV検査」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。
問題
第112回看護師国家試験 午後問題51
ヒトパピローマウイルス
1. 「子宮頸部の細胞をこすり取って検査します」
2. 「HPVワクチンを接種した人が対象です」
3. 「陽性であれば子宮頸癌と診断されます」
4. 「HPV抗体検査も同時に行います」
2.× HPVワクチンを接種しているかどうかにかかわらず、20歳以上の女性が対象となります。
3.× HPV検査はスクリーニング検査なので、診断するには精密検査を行います。
4.× HPV検査では抗体検査は行いません。
正解…1
●「母性看護学」について理解を深めるには、科目別強化トレーニング
編集部より
定期予防接種については、幼児を対象としたワクチンも含め、国家試験で何度も出題されています。種類と接種時期、生ワクチンか不活化ワクチンかを把握しておきましょう。